切られお富!

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大木正夫の交響曲ヒロシマ

2015-08-07 23:59:59 | カメレオンのための音楽
「佐村河内以前にも交響曲ヒロシマはあった!」って話は、ナクソスのファン以外には知られていないかもしれません。というわけで、簡単にご紹介。

大木正夫は戦前から戦後にかけて活躍した作曲家で、ナクソスの素晴らしいシリーズ「日本作曲家選輯」に収められているCDでは、戦前の作品である「日本狂詩曲」と戦後の「交響曲5番ヒロシマ」の二曲が収められています。

で、明るくパワフルな「日本狂詩曲」に比べると、「ヒロシマ」のあまりの暗さは…。1953年作曲という創作時期と、先日NHKの日曜美術館でも取り上げられていた、原爆の悲惨さを伝える絵画「原爆の図」が曲に与えた影響に関係あるのでしょう。

ちなみに、このひと、脱サラして教師をしたののち、一念発起して作曲家の弟子になるという、波乱万丈の生涯の人でもあるんですよね。

また、映画史的にいえば、今井正の代表作『また逢う日まで』、『キクとイサム』の映画音楽作曲家であり、歌舞伎ファンには、山本薩夫監督、十七代目中村勘三郎主演の映画『赤い陣羽織』の音楽担当者だというのが注目ポイント。

というわけで、安いCDだし、片山杜秀氏のこちらが申し訳なってしまうほどに詳しいライナーノーツが貴重です。ただ、あまりに重いので、元気のない日に聞くのはちょっと微妙ですが…。

ところで、いい機会なので、佐村河内の交響曲「ヒロシマ」についても一言。

わたしはこの曲、ライブで大友直人指揮、東響の演奏も聞いていますが、ライブ映えするなかなかの曲で、埋もれてしまうのはもったいないと個人的に思っています。しかも、気になったのは、のちのち本当の作曲家の新垣隆氏が「この曲はサブカルのつもりで作曲した」と発言したこと。サブカルのつもりで書いて、あのクオリティというのも凄いけど、逆いえば、新垣氏ひとりではもっと難解な曲になった可能性大なわけで、あの曲自体は合作だと考えてよいんだと思います。

ただ、わたしが観たコンサートでも、芝居がかった感じで、最後に登場した佐村河内氏には、ちょっと驚きましたが…。

でも、わたしも身障者のグループと仕事をしたことがありますが、人の障害について、外野の人間がなかなか突っ込んで聞いたりなんかできませんよ。なので、NHKの下請けで番組を制作したであろうスタッフを責めるのはさすがに酷というものなのでは。

というわけで、ちょっと脱線しました。日本の作曲家の作品、もっと演奏されるべきだし、聞かれるべきでしょうね。

大木正夫:交響曲 第5番「ヒロシマ」/日本狂詩曲
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Naxos
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