切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

七月歌舞伎座(昼の部)「五重塔」「海神別荘」

2009-07-22 19:30:00 | かぶき讃(劇評)
忘れないうちに書きます。感想っ。

①五重塔

幸田露伴の有名な小説だけど、読んだことがなかったので今読んでる途中です。(『幻談』は読んだことがあったんだけどね~。)

で、芝居の感想!

勘太郎演じる「のっそり」という渾名の大工。獅童演じる源太という大工。

二人の職人の意地と五重塔建立…みたいな話なんですが、脚本に問題あるんじゃないのかな?

要するに、「のっそり」とあだ名され、蔑まされてきた職人が「五重塔建立」という一世一代の仕事に執念を燃やすわけだけど、なんだか「ラストチャンス」感がないというか、切迫感が足りないんですよね。つまり、勘太郎は「のっそり」ぶりをうまく演じこそすれ、狂気が足りない。

一方、獅童の方は元気一杯…なのはいいんだけど、終始機嫌が悪い男みたいな感じで、もうひとつ「怖さ」がない!たとえば、怖い上司ってしょっちゅう怒鳴り散らしているタイプじゃなくて、普段怒らないんだけど、怒ると凄みがある人だったりするでしょ?だから、獅童は切れ味や凄みを生かすための緩急を考えた方がいいのでは?(といっても力演してたとは思います。)

因みに、読んでる最中の原作ですが、女性の描写がいいんですよね~。でも、芝居では女性は印象に残らなかったなあ~。(「のっそり」の妻役の春猿はまあまあだったんだけど…。)


PS:やっぱり、幸田露伴とか樋口一葉は国語の教科書に載せてみんなで朗読すべきだな~。おっと、次の泉鏡花も!!


②海神別荘

泉鏡花原作。

この芝居に関しては、以前詳しく感想を書いていて、今回もほとんど感想は変わりません。

・七月大歌舞伎「夜叉ヶ池」「海神別荘」 昼の部(歌舞伎座)(以前書いたこの芝居の感想)

ただし、「写メ日記」でも書いたように、最後の海老蔵の台詞の感じが少し変わったかな~。

>「此処は極楽でございますか」
「ははは、そんな処と一所にされて堪るものか。おい、女の行く極楽に男はおらんぞ。男の行く極楽に女はいない」

この件り、以前は海老蔵が朗々と言っていたのですが、今回は玉三郎演じる美女に語り聞かせる感じ。

ここは前回よりよかったんじゃないですかね!

ただし、こういう芝居のときにいつも感じるんだけど、玉三郎演出の原典尊重主義は芝居のリズムを壊しているんじゃないかってこと。

つまり、原作のことばを大切にするあまり、かえって、言葉の響きも意味も客席に伝わっていない…。

少し、省略するとか説明を加えるなどして客席にやさしい内容にしたらどうかと思っていうのはわたしだけでしょうか?

今回の芝居も、内容より海老・玉の衣装に感動してる団体客がたくさんいましたよ。

五重塔 (岩波文庫)
幸田 露伴
岩波書店

このアイテムの詳細を見る


海神別荘―他二篇 (岩波文庫)
泉 鏡花
岩波書店

このアイテムの詳細を見る
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ブログ開設5周年記念 御礼... | トップ | 最近観たDVDなど…。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

かぶき讃(劇評)」カテゴリの最新記事