昨夜は、ピーターの亡骸を、リビングの前のテラスに安置して
家族みんなの顔が見えるように計らった
いつもだと、レースのカーテン越しに見える庭も、今日は
ピーターの為だけの、葬送の背景として充てがわれた
木々を照らす緑色のライトが、悲しさをより一層深くしているようだ
それでもみんなは、いつものように笑って振舞っていた
それがピーターにとって、最良の送り方だと思っていたし
涙はもう充分に流したから、悔いることなど何も無かった
夕刻、相棒が帰って来たけれど、すぐにはピーターには会わず
山の道具の片付けに追われていた
ようやくテラスに向かう相棒~~~ 箱を開けてご対面
「ピーちゃん 死んでしまったのね」それだけひと言...
いつもだと、カメラを取り出し、山の写真の現像を始めるのに
昨夜は、カメラをそこに置いたまま、ビールを飲んでいた
言葉に出さないまでも、相棒の言わんとする胸の内が
家族のみんなにも、存分に分かっていた 辛いのだ
“今夜は一緒にいてあげよう”
私は、リビング脇の座敷に、自分の為の布団を敷いた
淋しがり屋のピーターのことだから、きっと喜ぶはずだ
初めて我が家に来た日も、一晩中ずっと一緒だったものね
まだ赤ちゃんだったあなたは、「クンクン」言いながら
一睡もさせてはくれなかった~今は、いい想い出だけどね
ふ~っと、何気ない音に気が付く
ピーターが餌を食べる時に、容器と鎖が合わさり鳴らす金属音だ
妙に調子よく、私の耳を撫でていく・・・ 不思議な感覚だった

暗がりの中、東の空が明るくなった 朝が来たのだ
いよいよ、ピーターとの別れの時間が迫っている
テラスにも、朝の陽射しが照らす頃、いよいよ旅立ちです
箱の中には花と餌、大好きだった散歩用のリードも入れた
「さようなら~ピーちゃん」テラスから、手を合わせて見送る
その時、車の運転席から、相棒が長めのクラクションを鳴らした
これが本当のお別れなのだ やっぱり悲しいよなぁ~
青い空を見上げて、フ~ッとため息をついた

「お母さん~玄関前の庭って、あんなに広かったっけ?」
何気に言う姫の言葉に、胸がキュンと泣いた
ピーターの存在が、我が家にとってどれほど大きかったのか
今もって、改めて感じた次第であります
荼毘に付される頃~郡元の方角を見ながら手を合わせた
その時、一陣のつむじ風が、庭に立つ私を包んで巻き上げた
風はそのまま、開け放たれた事務所の中へと舞って行く
「ピーターね」私はクスッと笑い、事務所に入りドアを閉めた
彼は、事務所の隣の休憩室が大好きだった
いつもの散歩の行き帰り、入り口のドアを見上げては
クンクンとやっていたものね
煙になったピーターが、ここにちゃんと帰って来たのだ
そんなことを考えながら、別れの朝を過ごしていた




















=コメントを頂いた皆様へ=
ピーターへの こころ温まるお言葉 本当にありがとうございました
すぐにでも お返事をと思っていますが 今しばらくお待ち下さいませ
この17年間のピーターとの思い出が あまりに大きかったものですから
いまは 心静かに ピーターを偲びたいと思っております