憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

-時には乙女のようにー3

2022-12-09 08:37:12 | ボーマン・ボーマン・6-時には乙女のようにー

コーヒーを立てに行くニーネにボーマンはかすかに首をふった。

察しのよいニーネというべきか、

ボーマンの問題解決の手腕をしんじているというべきか、

ニーネはその意味を悟る。


「まあ、お店かたづけてないで、しめちゃったの?」

とってつけた言い訳をいってみせる。

もちろん、ボーマンもニーネの意図する事がわかっている。


「あ・・ん?すまねえな。ちょっと、かたづけちまってくれよ」

いいながら、ボーマンはキャシーの前に座り込んだ。


やがてコーヒーが目の前に置かれると

ニーネはキャシーにお店をかたづけてくるとつげ、

キャシーもどこか、ほっとした顔をみせていた。


ー見ろ。やっぱ俺じゃなきゃだめだって顔にかいてあらあー


ニーネが店に入っていくのを見届けると

ボーマンが口火をきった。


泣いちまったあとってのは、けっこう、冷静になるもんだし、

醜態を見せた以上、本人ももう、話しませんというわけにはいかない。

ボーマンがいきなり、尋ねても、キャシーはちゃんとこたえることができるだろう。


という、ボーマンの計算ができあがっている。


「で、なんだよ。その上司との仲をなんとかしたいってことかよ?

それとも、きっちり、清算したいってことかよ?」

男と女。

ある一線をこえたら、この先の道はふたつしかない。

別れるか、続けるか。

このどっちを選んでも、それ相当な覚悟が要る。


だけど、別れたら、今度は本当にまともな恋の道をあるけるかもしれない。


ボーマンの言葉にキャシーは少し戸惑った顔をした。

もちろん、ボーマンはその顔をみのがしはしない。


「なんだよ?」

だいたい、不倫をする男なんてものは、実生活では、女房にわがまま勝手をぶつけてるもんだから、恋人には必要以上に優しくできるもんだ。

いわば、女房がいるからこそ、極上の恋人を演じられるんだけど

ここを不倫相手の女は気がつかない。

理想的な優しさと、経験を経た性技とムード。

こんなものに、とりこになってるのが、実は虚像でしかないと気がついたか?

結局、女房の手のひらの中にいる男でしかないし、キャシーも然りってことに気がついたか?

それとも、やっぱり、虜の道をえらぶか・・・?


とことが、キャッシーの口から出た言葉はボーマンの予想を見事に裏切った。


「あの、不倫って、わけじゃないのよ」


不倫じゃなけりゃ、なんで、さっさと一緒になっちまわねんだよ?

まあ、ぎゃくでもいいや。

なんで、さっさと、別れちまわねんだよ?

 


「だけど・・やっぱり、不倫だわ」


な?なんだよ?それ?


「わけがわかんねえな。ちゃんときかせてくれよ」


うん、とうなづいた後キャッシーは大きく息を吸い込んで

吐く息をためいきにかえた。


「彼、奥さまがいたのはいたのよ。

でも、ず~~と、病気で病院にいたの。

私と知り合った時も、もう、5年以上入院されていて・・」


はあ~~ん、で、寂しい男に同情して、深みにおちちまったってとこか・・。


「私は一緒になりたいとか、そんなつもりでなくて、

彼を尊敬していて、こんな私でも支える事が出来ないかと思って・・」


で、一番、彼がささえてほしい部分を提供しちまった・・と。

まじ、転落の縮図じゃねえかよ。

ましてや、尊敬だと?尊敬するにたりる人間がひとりの女性をそんな風に

自分の寂しさを紛らわす道具にするかよ?


「それで、ずううと、もう、7年たつかなあ。

そんな状態で、彼とつきあってきていたわけだけど、

昨年、奥さまが亡くなったの・・」


はあ?

で?

それで、涙つ~ことは、相変わらず、影の女ってことに

嘆いてるってことかい?


「彼は喪が明けたら、私と一緒になろうって、プロポーズしてくれたのよ」


は?

前言撤回かな。

ちゃんと、責任とるというか、まあ、誠意ある人間ではあるらしいな。

で、あるのに、涙?

結婚したって、結局、寂しさ紛らわす道具の延長線でしかないって、

キャッシーが気がついたってことだろうか?

で、結局、道具みたいな自分になけてくる?

結婚してもいいんだろうか?

やめたほうがいい?

でも、気持ちの整理がつかない?


ぐちゃぐちゃとキャッシーの気持ちを推し量ってるボーマンでしかない。

肝心な事がみえない。

問題はキャッシーの気持ちってことだろう。

そこを話してくれなきゃ・・・

って、思ってるボーマンをキャッシーが覗き込んだ。



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