翌日になって・・
あたしは迷った。
「慎吾・・ああ、あの一緒に出社するのは・・」
ちょっと、やばくない?
「いいさ。きにしなくて」
慎吾は気にならないらしい。
そうだな。途中で顔あわせたってことにしておけばいいか・・と
たかをくくると二人で会社に向かった。
編集長は帰社したあたしにご満悦って、呈ででむかえてくれて
編集長室にあたしをよびつけた。
「納得しただろ?」
って、突然言う。
つまり、それは慎吾が昨日、あたしに写真をみせていることを知っているということになる。
慎吾のやつ、編集長にどういって、来たのか知らないけど
変にかんぐられるのも嫌だなとおもいつつ
しょうがないから
「ええ、納得しました」
って、答えたら
「おまえは、納得したか?」
って、聞いてくる。ん?なんだ?このニュアンス?
「はあ?」
納得したってさっきいったじゃないか?
なのに、わざわざ、お前は・・って
それ?編集長はなにか、納得できない部分があるっていうことになる?
「編集長はどこか疑問を感じるということですか?」
被写体があたしだったのが、まずかったか?
もっと、べっぴんかかわいい人だったら
文句なしってとこだろうか?
「いや、なに、俺はおまえらが納得したんならいいんだけどな」
ん?またまた、むつかしい言い方じゃないか。
「あ、あの写真みたら、慎吾のだしぬきだとか、そんな気持ちふっとびますよ」
「写真が語るってか?」
ふむと腕をくんで、思い切って言葉をはきだすようにみえた。
「じゃあ、おまえら、ふたりも写真が語るとおりってことだな?」
それ?どういう意味だろう。
「俺はまちがいなく、慎吾はおまえに惚れてると思ったよ」
はあ?
「まあ、あの写真みて、おまえが慎吾の気持ちにきがつかないとは思えないし」
むむ?何を言い出すつもりだ?編集長?
「普通、女だったら、なんだ、その、ほら、その気持ちにほだされちまうっていうか」
うむむ?これはなにかききだしたいってことだ、と、あたしはやっときがついた。
「なんだ、ほれ・それ、そこだ」
なに、その、わけのわからない、指示言葉の羅列。
「わけわかんないです。編集長、はっきりいってくださいよ」
まさか、しっかり、編集長の術にはまってるなんておもいもしなかった。
「つまり、おまえら、うまいこと、ねんごろになったのかと」
はい?ねんごろ?
「ねんごろってなんですか?」
言葉が通じないってのはやっかいなものだけど
編集長はもっと困ったようだった。
「つまり~~~、おまえらHしちゃう仲になったのかって、きいたんだよ。
だけど、今までの会話から考えるとそうじゃないな。
まったく、女の「お」の字もでてこない。
たく、あの写真みて、慎吾の気持ちにほだされねえなんて、
おまえ、やっぱ、「女」じゃねえな」
最後の言葉が余分だった。
かちんときて、思わず、いいかえしてしまった。
「昨日、しっかり、「女」になりましたけど!!」
し・・しまった・・・
プライベートじゃないかあ・・。
編集長はわざとだ。
ぽかんと口をあけてたけど、やがて
「そうか。だったら、慎吾のこと、頼むな。あいつは、本当にお前に惚れてるよ。
そんな男めったにでてくるもんじゃない。大事にしろ」
異論はある。
めったになんて、まるっきりあたしには魅力がないってことにもなるじゃないかとおもったけど
やっぱ、編集長のいうとおりだ。
「はい」
すなおにこたえたら、
編集長がぽつり、と、もらした。
「良かった」
うん。確かに、あたしもそう思う。
終
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