澄明は澄明で、考えている。
既に、銀狼が現れ、元の一族の誰かを差配し始めている。
影は、そういう事だと言っている。
だが、もっと、恐ろしい事が後ろにある。
影が、竈の神であるなら
澄明の行いを、閻魔に伝えにいく。
澄明により、銀狼が誰かを差配したという「悪行」
この澄明の悪行を、伝えにいくということは、
銀狼が、誰かを差配すること を 変えられない
だから、「悪行」として、閻魔帳に記される。
銀狼が、一族に憑りつくのは、犬神の習俗でしかない。
それは、「悪行」ではない。
影は、それを言う。
わざわざ、人間に憑りつかさせてしまった澄明こそが「悪行」を行った。
ー銀狼の差配を、変えられないというかー
それが、一番、恐ろしいことだった。
そして、
おそらく、影は 竈の神に間違いない。
で、あるのに、
閻魔、つまり、八代神に、伝えにいったか、行かなかったか
いずれにしろ、澄明本人に伝えに来た。
それは、八代神の采配か?
だとすると、
ー銀狼の差配を、変えられるということかー
どうやって、変えられるのか?
いや、そうではなく、
竈の神をつかわしたのは
ー変えられぬ定めだと、伝えるためかー
そして、
澄明の悪行は、書き記さぬ、と、いう意味か?
書き記しを逃してやるから、銀狼の差配をあきらめよというか?
死んだ後の裁きなど、死んでから受ける。
今は、知った以上、知ったことを
変えて見せねば、
陰陽師の生きざまではない。
澄明の心を読んだか
竈の前に、白く
影がわきたつと低い声が響いた。
ーやはり、八代神のいうたとおりの女子じゃなー
ー竈の神、であるな?ー
ーおうさ。お前の思うたとおり。
犬神の差配は、解けぬ。
解けぬながら、どうにか、その人間を
救うてやってくれぬかー
深々と頭を下げるかのように、白い影が地にうずくまっていった。
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