事実はいやおう無く現実をつきつけてくる。
笑子の妊娠・・・。
これは・・・、
逃れようもない現実として
俺を押しつぶす事になるはずだった。
ところが・・・・。
俺は・・・
あの当時のことを
今、思い返しても・・信じられない。
信じられないが
所長の措置によって、
俺は今も、名実ともの
ヴォランティアとして、
介護の仕事を続けている。
あの時・・・・。
笑子の妊娠を医師から告げられた所長が
断行した措置。
それは、笑子の堕胎と同時に
笑子の妊娠機能を閉鎖することだった。
笑子の保護者から笑子への手術の許可を得るために
所長は笑子の病名を工作した。
間違っても、妊娠の挙句の堕胎措置などといえるわけがない。
事実を告げれば、
それを種に、慰謝料だって請求できる今のご時世だから、
どれだけの負債をおわされるか。
上に、園の名誉も地に落ち、
他の入園者も懐疑の目を向け
些細な事でも、見逃せなくなる。
不安を背負い込むために
入園させたんじゃないと、
別所へ移るものも、出てくるだろう。
所長自体から、役職の総入れ替えが断行され
所長は路頭に迷う。
園の存続が危ぶまれる。
これを回避するに、
笑子の事実をわずかに改ざんするは、
やむをえない心情と事情として、
俺も理解でき
納得できる。
だが、
偽装工作の病名。
子宮筋腫・・・。
腫瘍は悪性。
笑子の子宮摘出は、断をやむなきとして
保護者から
手術の許可を得ていた。
そして、
手術は堕胎を含めた
子宮摘出が行われた。
書類上の不備は無く
所長は医師への、裏工作にどれだけの出費をおったのか、
俺にはわからない。
ただ、わかるのは
「笑子君を、女性としての人間性に一歩でも近づかせたい」
と、言った所長と全く正反対の決断を選んだという事だ。
それは、
笑子の身体のために
人としての、最低限の身体機能の保護をするために
必要な措置だったといえるかもしれない。
この先、笑子を介護する人間は
笑子の強請りに気がつき
性交渉を与えるだろう。
挙句、また、いつ妊娠するかわからない。
そのたびに、医師への謝礼と口封じ。
保護者へ・・どういう理由で手術の許可を作るか。
そして、なによりも、
笑子の身体。
堕胎を繰り返していって
はたして、笑子は健康で居られるだろうか?
所長の選んだ措置は
行き過ぎた部分があるにせよ、
まちがっちゃいないと俺は思った。
ただ、
所長の理念が崩れ
笑子は性玩具のように扱われる女さながらに、
妊娠の危険性を取り払うことだけを
優先され
その身体は
名実共に
性玩具という商標に登録された事になる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます