ーすでに、銀狼が、出現しており
それは、雌ということになるのだろうか?ー
黙りこくる白銅とひのえの胸中をはかるすべもなく、
法祥も、また、黙る。
このまま、立ち去った方が良いのか
どうにかならぬかと、陰陽師頼りのふがいなさに
いたたまれぬ思いがわいてくる。
「あ、私は・・つい、あの男をどうにかしてやれぬかと・・」
白銅・ひのえの都合も聞かず、勝手にしゃべり
かつ、
おまえら、どうにかしてやってくれ は
身勝手すぎる。
しょせん、いいわけにすぎないと法祥は、立ち上がろうとした。
「いえ、私たちも、銀狼が憑いた相手を
さがそうと思っていた所ですから、たすかりました」
法祥は、言葉を探した。
法祥は、犬神、銀狼に憑かれている男を見た。
だが、
この二人の陰陽師は、逆に 銀狼が、憑いている相手を探していた。
その裏に、どういう委細があるのか?
何を知っているのだろうか?
だが、それを尋ねるのも、何も出来ない自分では
興味本位でしかなく、
聞いたところで、何も出来ない自分が、さらに、情けなくなる。
「銀狼が、出現することを、伝えに来た者がいたのです」
澄明自身が銀狼の出現を見越したということではなく
なにものかに、知らされた。
そして、法祥が、銀狼の現れた所と相手を告げに来た。
「すると?私は、そのなにものかに、動かされて、ここにきてしまった、ということですか」
おそらく、そうなのだろう。
ならば、なにものか が、だれなのか、聞いてみても良いかもしれない。
「伝え来たのは、竈の神です」
法祥の心の内を気取って(けどって)澄明が竈の神と明かした。
「竈の神と?」
およそどこの土地の、どこの所帯でも竃はある。
その竈をとおして、竈の神はどこにでも行ける。
竈の神が、法祥に伝えさせなくても
自ら、銀狼の様子ごと、澄明たちに伝えることが出来る。
「なぜ、私を・・伝手にするのだろう」
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