憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

―鬼の子(おんのこ)― 10 白蛇抄第14話

2022-09-06 07:06:57 | ―おんの子(鬼の子)―  白蛇抄第14話

「伽羅。そうは言うが・・わしは誰に妖術をおしえてもらわばよいに?」

「あんずるな。伽羅がしっておる」

「そうか」

伽羅との離別がやってくる。

悪童丸は少し寂しげな顔になった。

「と、いうてもな。お前が十二になってからじゃに」

「まだ、いけぬのかや?」

妖術師は年に拘るものらしい。と、悪童丸は思った。

「いんやあ。鬼のおのこは親の元で一巡りを暮らして守護を得るに」

「ひとめぐり?とはなんぞや」

「子、牛、寅、卯、辰・・の十二とせで一巡りじゃに」

「ああ・・そういうことかや?」

「十二でひとり立ちしようという鬼の意気地に、

親の守護に、よせてやろうというかむはからいじゃと伝え聞いておる。ひととせでもはよう、親元を離れると

その年の守護はのうなるときくに・・」

「ずっとということか?」

「そうじゃに。たとえば、お前が子の歳を抜かしてしもうたら

十二とせごとの子の歳には守護がのうなって、

いらぬ厄災がふりかかるというに」

「ふううん。それで、十二年は親の元におるというのか」

伽羅は悪童丸を覗き込んだ。

もう少し伽羅と一緒におれる方が良いと言う、

心もとない子供心がうかんでいる。

「伽羅は親ではないが、まあ似たような者じゃで、守護はえられよう?」

「うん」

伽羅の思いはありがたい。

伽羅がおらねば悪童丸はとうに死んでおったろう。

其れを救われただけでもありがたいのに、

伽羅は自分をようおもうてくれおる。

「伽羅。わしを拾うてくれたのが、伽羅でよかったとおもうておるに」

「我も、おまえがおってくれて、よかったとおもうておる。

親でもないに、よう、しとうてくれて、伽羅は・・」

伽羅の声が涙につぶれそうになった。

「ああ。腹がすいたろう?今。何ぞつくってやるに。

囲炉裏に粗朶をくべや。伽羅が作るのをようみておきや」

伽羅はもうしばしの悪童丸との暮らしの間に教えられる事は、教えておいてやらねば成らないと思い直していた。



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