憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

ー銀狼ー 9  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:44:38 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話

「わからぬか?」

澄明たちの反目をおもしろそうに眺めるとぽそりとたずねる。

「雷を食らうというのだから、いづなは、誰の傍におりたがるや?」

「それは・・当然、雷神でしょう」

答えた白銅があっと、声を上げた。

「もしかすると?波陀羅の一件の雷神?」

榛の木に雷を落とし、榛の木の精霊を真っ二つに裂いてしまった雷神は

落雷の衝撃で精霊に融合してしまったのである。

そして、澄明たちの活躍で榛の木の精霊が元ひとつの身体に戻れたとき、

雷神も自分の姿をとりかえしたのであるが・・・。

「その雷神が、いづなのしでかしたことに、腹をたて、呪詛をかけおった」

すると、20年以上前、雷神が榛の木の精霊のなかに分裂して、同化して閉じ込められていたわけだから、いづなへの呪詛はそれ以上前のことに成るのか?

いづながいつ呪詛をうけたのか、判らないが、雷神が榛の木と喧騒をおこしたのも、ひとつには、いづなへの腹立ちが引き金に成ったのかもしれない。

「白銅、その通りじゃな」

言葉に成るのを待つがまだろこしく、繕嬉はその飛びぬけた能力のせいで、つい、白銅を読みすしていた。

「いや、でも、雷神が榛の木に落雷を落とし、榛の木の精霊に身体を明け渡すことになったのは、20年以上前のこと・・いづなが、転生して、銀狼になったにしては・・」

年月があわないのではないか?

白銅の疑問に答えたのはほかならぬ銀狼自身だった。

「いや、山犬は人間と違い、3年もせぬうちにいっぱしの大人になる」

たつ子をみそめるだけの色気も十分にもちえる。

と、白銅が口に出さなかった疑問に暗にこたえると、銀狼は繕嬉に尋ね返した。

「私がいづなだったころに、雷神をおこらせたのですね?

いったい、何をしたのでしょうか?

そして、前世でも呪詛をうけたというが、これが、因縁が繰り返されるということですか?」

繕嬉はふむと顎をしゃくると、澄明を見た。

澄明をまっすぐ見つめる繕嬉のまなざしをおって、銀狼も澄明を見つめた。

「繰り返される因縁は、いつか、どこかで、終息させなければならないものだ。

そして、その因縁を終息させることができるものは、

また、自らがもつ、深い因縁を終息させたものでなければできないことなのだ。

だから、おまえは、そこの女子、澄明を呼び寄せてしまったのだろう。

いいかえれば、お前の因縁は終息できるものだという事に成る。

そのためにも、元々、因縁の発祥であるいづなのしでかしたことを話きかせよう」

「では・・」

と、繕嬉は銀狼のまじかに、膝をおとした。



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