「根の国をおさめよ」
そういわれたスサノオを思う。
根の国・・・。
この世に存在しない黄泉の国をおさめよとは、ひいては、死ねという事でしかない。
憤怒がそのまま、声になる。
「いかほどに・・。
ならば、根の国にどういけばよろしいですかな」
スサノオはたっぷりの皮肉で応戦したはずだった。
炒った豆から芽が出ぬように
ひねった鶏が朝を告げないように
スサノオがいきながらえたまま、どうやって、黄泉の国へいけようか?
スサノオの問いに用意される答えがまさか愛馬の死姿とは思いもしなかった。
話し合いがものわかれのまま、
スサノオは席をたった。
扉の向こうに馬をつないである。
それにまたがり、
球磨をめざすか、
出雲をめざすか、
いずれ、どちらをさきにとて・・・。
軽い失笑の笑みが瞬時、こわばる無残が目の前に広がっていた。
丸裸に皮をはがれた馬がもがきくるしみながら、命をたたもうとしていた。
「おのれ・・、これが・・答えか」
黄泉の国にいくに、どうすればよいか?
スサノオの憤怒をいかほどおさえたことばであったか、
しるよしがある、はずであろう?
で、あるのに、
戯言をみよがしに兆着する大人気ないあざとさで、愛馬の命は立たれた。
「ねの国には・・いかぬというたであろうに」
太子のめの中に
愛馬の死骸をもちあげたスサノオの
姿がうかぶ。
「このくらいのものではない・・」
スサノオの悲しみと悔しさ。
今の太子におよびつかないものがあろう・・。
それでも・・・、
スサノオはなにもかもを赦す。
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