夏山の過去の思い出を記録しておきたい。
16年前の夏、北八ヶ岳の稲子湯から入って、「にゅう」から中山峠を歩いた。
「にゅう」という名前についてあらためて確認してみたら、稲の束をつみあげた「にお」からきているという説と女性の「乳」という意味と二つの説があるようだ。
車を稲子湯の駐車場に留めさせてもらった。
早立ちしてきたのでまだ朝の6時20分だ。
帰りにここで一風呂あびる予定。
林道を奥へと進むとみどり池へのコースの入口があった。
林道はここからカーブして北へと進んでいく。
私は、もう一つの登山道でにゅうをめざす。
周囲は静まり返った深い原生林だ。
写真を見るとシャクナゲの葉が写っている。
6月頃なら花も見られるのだろう。
ところどころ大木が見られる。
足元の岩にはコケがびっしりとついて北八ヶ岳らしい雰囲気。
みどり池のコースとちがってこちらは入る人が少ない。
それだけ原生林の雰囲気が味わえるというものだ。
倒木が多いあたりでは日差しが漏れて明るくなる。
その日差しをあびて若い木々が森を回復しようと成長し始めていた。
南に大きな硫黄岳が見えた。なかなかのスケールだ。
森の中の十字路。まっすぐ行けば白駒池。私は左に折れてにゅうにむかう。
このあたりは原生林におおわれた大きな斜面。
そこを少しずつ高度をあげていく。
大きな丸太がころがっていた。
たぶん伐採したのではなく、倒木を処理したものだろう。
静かな森の中を黙々と歩く。
しだいに傾斜が増してきたが、休まずひたすら登る。
こういう歩き方をするからあとで足がつったりするんだよね。
でも原生林の中ではなかなか休憩しようと思うようなポイントがないんだもの。
そうするうちに9時30分、にゅうの岩場の一角にとびだした。
ようやく休憩ポイントに到達。
岩に腰を下ろししばらく休んでから写真を撮ろうと動くととたんに足がつってしまった。
ちょうどその時一人の男性が登ってきたので、いかにも景色を楽しんでいるかのようにふるまって足をなだめたのを思い出す。
自分の体力を自覚してペース配分に気を付ける必要があるね。
奥に見えているのは天狗岳。
そこからほんの少し岩場を東に進んだところがにゅうの頂上だった。
北側には原生林の中に白駒池。
その向こうには茶臼岳や縞枯山など北八ヶ岳の山々。
天狗岳をバックに記念撮影。一人なので岩にカメラを固定して撮った。
岩峰を手前に浅間山。
佐久平は霞の中。きっと下界は猛暑だろう。
岩をフレームにして硫黄岳。
こうやってなんだかだ30分以上ここですごした。
にゅうを離れて、尾根沿いに中山峠をめざす。
途中、硫黄岳の全容が見えるポイントで撮影。
道はふたたび原生林の中へ。
天狗岳と麦草峠のあいだにある中山2496mからにゅうへと伸びる尾根をゆるやかに登っていく。
おおよそ40分で、中山を越えて麦草峠にむかうコーストの分岐点に。
こんどは中山峠にむかってゆるやかに下っていく。
ところどころで前方に天狗岳と硫黄岳が見渡せた。
このまま天狗岳まで行ってみたいとは思うのだが、からだが賛成してくれない。
中山峠付近の断崖が見えてきた。
ここをくだってみどり池へとむかう予定。
振り返ると稲子岳の絶壁の向こうに関東山地の御座山が見えた。
11時15分、ようやく中山峠に到着。
時間的にまだ余裕があるのだが、もう体力的に限界なのでこのままここから下ることに。
急斜面をくだっていく途中から、みどり池やしらびそ小屋がある広い原生林の台地が見渡せた。
これはコメツガだろうか、今年伸びてきた部分が明るい色でくっきりとわかる。
こちらは稲子岳の南壁。
稲子岳は丸山の一角が地滑りによって落ちてできあがったと説明されている。
ネットをみるとこの南壁の登攀記録がたくさんみつかる。クライミングのゲレンデだ。
ようやく急斜面が終わった。
12時23分、しらびそ小屋と本沢温泉との分岐点に。
しらびそ小屋から本沢温泉にむかう道には昔は材木積み出しのための森林軌道が走っていた。
その残骸のレールが今でもみられる。
原生林を水面に映して静まり返るみどり池。
そのほとりにたつしらびそ小屋。ここは人気のある山小屋だそうだ。
利用者には原生林が大好き、コケが大好きという方々が多いらしい。
私もしばらくあたりを散策して休憩。
たしかにいいところだ。また来たくなった。
みどり池から稲子湯までは歩きやすい道をどんどんくだる。
そして稲子湯に1時45分ころ到着。さっそくお風呂を使わせてもらった。
古びた石の浴槽。ここは冷泉を沸かしているので、源泉は冷たい。
どんなお湯だったかよく思い出せないが、さっぱりして帰ることができた。
こんなことを書いていたらまた行ってみたくなってしまったなぁ。