毎日が山のこと

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会津駒ヶ岳登山(2018年10月2日・3日)

2023-09-27 09:54:26 | 東北・新潟の山

(これはブログを始めたころに投稿した2018年の記事に写真や文章を追加して改定したものです。)

朝に埼玉を出発した車は予定通りの時刻に桧枝岐に着いた。登山口の少し手前に登山者用駐車場の看板を見つけてそこに車をとめた。

十月に入っているが、山麓は紅葉にはまだ早いようだ。

支度を終えた私たち三人は、国道を少しだけ桧枝岐集落のほうに歩いて駒ケ岳登山口の看板を見つけ、舗装された林道を登りはじめた。

同じ道を戻るのなら、この林道を詰めたところにも駐車場はある。しかし、今回は駒の小屋に泊まり、稜線を縦走して大津岐峠からキリンテに下るので国道脇に留めてそこから歩き始めたのだ。林道脇を流れる滝沢の豊富な水が岩を洗って気持ちのいい音をたてている。

舗装の林道をずっとたどっていくのだと思っていたら、すぐに山道があって「近道」の表示があった。その道をつかってふたたび林道にでたところに十台近くの車が留めてあった。車止めの脇をぬけて進むとすぐに本物の登山口があった。ネットで見たとおりに急角度の階段になっていた。

九月の長雨にうんざりしながら三人の日程をようやく調整して決めた計画だったのに、直前に大型台風が上陸し、各地に被害をもたらした。しかし、幸いなことに台風はスピードを早めて通過してくれ、出発の朝は好天となっていた。

会津駒ケ岳に登る計画を立てたのは私だが、7月に同じメンバーで尾瀬の至仏山に登ったとき、両足が同時につってしまって苦労させられていた。おまけににわか雨に降られ、つるつる滑る蛇紋岩に足をとられて転倒してしまい、足の脛に怪我をしている。このときの反省から、今回は最初からダブルストックで登った。週に数度、ウェイトをかけてのスクワットでトレーニングもしてきていた。

よく手入れされている登山道は歩きやすく順調に高度を稼いでいった。歩き始めてから1時間ごとに休憩をとり、2時間が経過したころブナやダケカンバが姿をあらわし始めて傾斜も次第にゆるくなってきた。

下ってきた人に適当な休憩スポットがないか聞いてみると、もうちょっと登ると水場の入り口があってベンチもあるという。そこをめざして登っていったが、「ちょっと」がなかなかつかない。結局さらに十五分ほど歩いてようやくベンチにたどりついた。ちょうど十二時になったので昼食休憩にした。

そこは尾根の上なのだが、広いので森の中にいるようだ。休んでいると水場から二人の女性があがってきて、水を飲みながらパンをかじり始めた。

これから駒の小屋に向かうという二人と雑談をかわした。ちょっと歳の差のある二人は、山で知り合っていっしょに山に行くようになったのだという。しかも一人は鹿児島、もう一人は岩手の花巻からだというので驚いた。

そこからは、道はさらにゆるやかになり、右手に稜線の連なりも展望できるようになった。草紅葉の薄茶色とところどころにナナカマドであろうか、赤い塊が見える。道の先のほうには駒の小屋の三角屋根も見えてきた。もうひとふんばりだ。

駒の小屋は昔からある小屋だが、建て替えられているらしく材木もまだしっかりした感じだった。

小屋の前、一段下がったところには小さな池があり、駒ヶ岳の山頂を水面に映していた。

私たちは、小屋の入り口にザックを置かせてもらい。ポーチに水だけをいれて山頂をめざした。

会津駒ケ岳のハイライトは、山頂からその先にある中門岳までのあいだに横たわる尾根の景観だ。広々としたその尾根は草紅葉におおわれている。その中をくねくねと一本の木道が伸びている。

私たちはゆるやかな斜面をたどってまず山頂へとむかった。ほどなく山頂に到着したが、そこは背の低い針葉樹と潅木があって展望はない。そこには立派な山頂標識が立っていた。

交代で写真を撮りあったが、74歳になるOさんは疲れた様子を冗談でまぎらせていた。

女性メンバーのTさんは疲れた様子もみせず、さらに中門岳にむかって歩き始めた。

そのころから雲が流れて残念ながら遠望を隠してしまった。日が当たればきらきら輝くはずの草紅葉も茶色にしずんでいる。

Oさんは疲れが足に出てしまったのか、だんだん遅れてきた。歩き方も少しぎこちない。でも同じ道を戻るのだから心配はいらないので、Tさんと私は先に歩いた。

 

尾根の途中が二個所ゆるやかに盛り上がっている。雲が流れるとその盛り上がりの先にも広い尾根が続いていた。中門岳の一つ手前の盛り上がりのところでOさんの到着を待って引き返すことにした。

中門岳は、駒ケ岳から伸びた尾根の先端部であって、目立ったピークになっているわけではない。それに小屋も混雑しているようなので早めに夕食の支度を始めようという考えであった。

 

色づいたネバリノギラン

小屋は、入ってすぐ左に自炊部屋がある。その奥の階段をあがると二部屋があって、片方は団体が借り切っていた。私たちは、上がって右手のもう一つの部屋に入り、指定された場所を確認した。この日も定員一杯だそうで、小さい部屋は十二人の布団で一杯になる。だから荷物の整理が終わったらリュックは階段の踊り場に置くようにいわれた。

私は、預けていた食料を受け取り、ガスコンロやアルミ鍋をそろへて自炊部屋へと降りた。すでにそこには低い木のテーブルを囲んでほかの人たちが食事をしていて、三人の場所だけがあけてあった。途中で出会った二人の女性もいた。ほかは、男性二人と女性4人のグループ。そして男性の二人連れらしかった。

私はは、ふだんは一人で山に行くことが多かったのだが、地元の年金者組合に加入したことがきっかけでハイキングの会をつくり世話人を引き受けたのだ。だからあまり人の食事までつくったことはなかった。でも今回は、はりきってイタリアンに挑戦してみようと、早茹でのパスタとカルボナーラソースをもってきていた。そこにウィンナソーセージとシメジを加えるのだ。

家でもつくってみていた。でも本番ではおおぜいがいる目の前ということもあってあせって手順を間違えてしまった。お湯をわかし、ソーセージときのこを茹で、最後にパスタを入れるべきところを、水のなかにパスタを入れてしまったのだ。結果はもちろん大失敗。介護食のようになってしまったのだ。それでも私たちはそれを「年寄りにはちょうどいい」「結構おいしい」などと負け惜しみをいいながら食べてまわりの笑いを誘ったのだった。

夜中、小屋はガスに包まれていたが、朝には晴れ間が見え出し、食事をするころには雲ひとつない晴天となっていた。冷え込みもなく、どちらかというと暖かいほうだ。

Oさんも昨日の疲れが取れたのか、足の調子も戻った様子だった。食事をすませると外に出て、小屋の前で記念写真を撮った。朝の光をあびて、会津駒ケ岳は、針葉樹の濃い緑と笹の明るい緑、そして草もみじの黄色に彩られていた。

二日目のコースは、小屋の脇を抜けて南西にのびる富士見林道と呼ばれる尾根をたどり、大津岐峠に出てからキリンテに下る。小屋の裏側は針葉樹の森で、道はすぐに下り始めた。

やがて木々の間から長い尾根とその先に燧ケ岳の双耳峰が見えてきた。さらに下ると歩きやすい尾根道になった。所々に針葉樹があるものの大部分は笹に覆われた尾根はすばらしい展望にめぐまれていた。

左手奥の方に、みなれないコブの盛り上がりがある。位置からすると日光白根山らしい。その左には日光連山らしい連なりが見えるが、関東からの見慣れた姿とは異なるので、一番右の山が男体山だろうと見当をつけた。

遠くに尾瀬の燧ケ岳を望む

会津駒ケ岳を振り返る。駒の小屋は手前のピークにある。

予定より早めに出発しているので先を急ぐ必要はない。風もなく光をたっぷりと浴びながら、暑くもなく寒くもない快適な道を歩いて行った。

やがて左から長い尾根が近づいてきた。これがキリンテに下る道がある尾根らしい。その尾根が合流する地点が大津岐峠である。

峠には大きな標識と木のベンチがあった。のどを潤し、お菓子を口に入れた。ここまで一定の高度を保ってきた富士見林道尾根は、峠からは大杉林道と名を変え、一旦1750メートルまで下ってふたたび盛り返し、1900メートルをこえる大杉岳の先で尾瀬の入口、御池へと続いている。

休憩中の鹿児島と岩手のコンビが追いついてきて少し休憩してから先に下っていった。

私たちも少し遅れてキリンテへの道を下り始めた。その道は、古くから使われてきた道らしく、尾根をたどりながらも少し急になるところではジグザグになり、一定の斜度を保っているのでとても歩きやすい。すぐに樹林帯に入ったが、ブナやダケカンバが紅葉し始めていて、とても明るい。足元に気を使う必要がないので歩きながら話がはずんだ。

下るに従って紅葉は少なくなり、ジグザグを繰り返しはじめると沢音が聞こえてきた。キリンテ沢らしい。このころから所々にトチの大木があらわれ、足元には踏み場もないほどのトチの実が落ちている。三人は記念にその実を拾って帰った。

ちょうど台風による倒木の調査に登ってきた土地の人が、トチの実はクマの好物だけど、今年は山中大豊作なので、クマは危ない登山道には現れないといった。

予定よりも早く十二時前にキリンテに下ることができた。何もないところでバスを待つのも能がないので、歩いて桧枝岐に戻り、蕎麦を食べることにして国道を歩き始めた。

天気にもめぐまれ、道も歩きやすくて快適だった今回のコースに三人は、いい山だった、いいコースだったと、こもごも繰り返しながら歩いて行った。

 

コメント
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