ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『ビリギャル』を観て

2017年01月13日 | 日本映画
暮れのNHK紅白歌合戦。
何となく見ていて、紅組の司会者・有村架純って可愛くて感じのいい子だなと思った。
という訳で、興味が湧いて正月に早速、レンタル店で『ビリギャル』(土井裕泰監督、2015年)を借りてきて観た。

名古屋の女子高に通うさやかは、偏差値30の学年ビリという成績。
見かねた母に塾へ通うことを提案され、入塾面接で教師の坪田と運命的な出会いを果たす。
金髪パーマに厚化粧、耳にはピアス、極端に短いミニスカートというギャル全開なさやかに面を食らう坪田だったが、
さやかの素直な性格に気付き、ふたりは慶應大学への受験合格を約束することに・・・
(映画.comより一部抜粋)

もとは、投稿サイトに掲載された実話を書籍化した「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」なので、
あらすじはいたって単純。
それに、題名によって結末までがわかってしまっている。
と、言ってしまえば身も蓋もないことになる。
でも、この作品はとってもいいのである。
まず何といっても、“さやか”役の有村架純が最高にいい。
雰囲気がよく出ていて、演技が自然体で上手い。
関係する人々、例えば、両親・弟妹、塾教師、塾の男友達、“さやか”の学校友達、学校の先生など、
出演者すべてが、それぞれの役柄にマッチしていて、観ていて違和感がなく没頭できる。
だからラストに至っては、ギクシャクしていた父親との和解も手伝って、この映画はとってもいいなと手放しで感動してしまうのである。

しかし見終わって、学年ビリで小学4年生ほどの知識レベルの子がなぜここまで頑張れたのか、と考えずにはいられない。
塾の坪田教師との出会い。
このきっかけがなければ、“さやか”は勉強に背を向けた、いわゆる落ちこぼれと一般的に言われる子のまま大人になり、
世をすねた態度が当然と考える人となって行ったのではないか。
教える者が、芯からその子を信じきって、その子の可能性を引き出すこと。
教えられる方もそれに応える形で、自分だって出来るのではないかと、目標に向かって希望を繋いでいくこと。
当然そこには、途中で挫折感も絡んだりする。
それでも、その一歩一歩が勉学の知識ということだけではなく、人間としても成長していくということ。
皮肉なことに、では学校教育とは何か、という問題も自然と透けて見えてきたりする。
教育は教えられる者が学力を身につけ、考える力を養うということが目的として大事だけれども、
指導する者にとっても、その対象から学ばされるという本来の理想の姿を、この映画は示唆する。

そのようなことを、諸々と考えさせてくれた優れた作品であった。

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