ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『恐るべき子供たち』を再度観て

2017年09月06日 | 1950年代映画(外国)
前回に関連して、ジャン・コクトー絡みの『恐るべき子供たち』(ジャン=ピエール・メルヴィル監督、1950年)を観た。

ある晩、中学生たちは学校での広場で雪合戦を始める。
ポールは、 慕っているリーダー格のダルジュロスを探す。
ダルジュロスはポールに気付き、石入りの雪玉を投げる。
みごと、雪玉はポールの胸に当たり、持病を持っていた彼は血を流して気絶する。

ポールの友人、ジェラールがポールをアパートへ送っていく。
病弱な母を抱えている姉エリザベートは、それを見てジェラールに怒りをぶつける。

ポールが学校を休んで療養している間に、ダルジュロスの方は、校長に反抗し放校処分を受けている。
それを知ったポールは、失意の感情を味わい・・・

ちょうど40年前、仕事研修の合間の日曜日に、池袋の名画座で「新学期 操行ゼロ」(ジャン・ヴィゴ監督、1933年)と二本立てで観たのがこの作品である。
今でも印象に残っているのが、内容よりも、主人公や友達が、中学生なのに大人そのものであることに対する違和感。
それと、白い女性彫像の顔にある黒い大きなカイゼル髭。

ジャン・コクトーの小説をジャン=ピエール・メルヴィル監督が映画化し、
脚色はメルヴィルとコクトー。ナレーションはコクトー自身が担当している。
だから、コクトーの色合いが濃厚。

ひとつ部屋で、ポールを看病するエリザベート。
二人にとってここは、もともと、自由に夢想に浸れる世界であった。

それが、母の死後、エリザベートがモデルとして働き始め、女友達のアガートを部屋へ連れてくるようになってから様子が変わる。
ポールにとって、アガートがダルジュロスと瓜二つだったからだ。

この辺りから、作品の内容がグングンと盛り上がっていく。
城のような屋敷。
そこの広間の隅っこで寛ぐ、エリザベート、ポール、アガート、ジェラールの4人。

悲劇のラストに向かって進んでいく話術の凄さが堪らない。
エリザベートの弟ポールへの想い。
ポールのアガートに対する恋。
しかし、この恋の本当のところは、ダルジュロスへの幻想としての恋ではなかっただろうか。
つまるところ、大人になることに対する無意識な拒否。

ここには、後世に残る作品としての価値・要素が十分に含まれている。
現に、時代がそれを証明している。
それに加え、次の世代“ヌーヴェル・ヴァーグ”の若手監督へと影響していったことを思えば、やはり重要な映画の一つである。

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