ポケットの中で映画を温めて

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イエジー・カヴァレロヴィチ監督の『影』を観て

2022年04月11日 | 1950年代映画(外国)
『影』(イエジー・カヴァレロヴィチ監督、1956年)を観た。

ドライブする男女の目の前で、並行する列車から男が飛び降りた。
驚いた二人がその場に行ってみると、男の顔は潰れ、身許の手がかりになるものはなかった。
この男を検死した医師クニシンはこれがキッカケで、戦時中に起こった地下抵抗組織に関するある事件を語った。

当時、地下抵抗組織に属していたクニシンは、ワルシャワ郊外の修理店を連絡所として活動を続けていた。
ある日、武器調達資金を得るために、クニシンの班はドイツ軍と関係があるポーランド人の店を襲った。
しかし、金を手にしようとした丁度その時、突如、別の一隊がやってきて、お互いに敵と誤認した同士で激しい銃撃戦となった。
そして、クニシンを除いて二グループの全員が死傷してしまった。

偶然にしては筋立が上手すぎ、クニシンはそれ以後、この事件に疑惑を感じた・・・

先の鉄道事故の直後に無賃乗車し逃げた青年、ミクワが近くの駅で捕らえられた。
ミクワは無賃乗車した理由を拒み、公安のカルボフスキが彼を引き取るために駅に行った。
そしてカルボスキは、戦争直後のある出来事を思い出す。

大戦直後でポーランド国内がまだ混乱し不安定な状態の頃。
共産党員の中尉カルボフスキは、ヤシチカと言う兵士と共に、"小隊"と呼ばれるヤクザな集団に潜入することになった。
うまく騙したつもりで相手の隊長の部落にたどり着いたが、実はヤシチカはその集団の一味だった。
カルボフスキは自分が持っていた手榴弾で危機一髪の難を逃れたが、両脚を粉砕してしまった。
誰がヤシチカをスパイとして送ってきたのか。

1956年現在、捕まったミクワの話。
炭鉱で働いていた彼は、ある有力者に坑内に入るよう命じられた。
その直後、坑内で火災が起きて犠牲者が多数出、彼は放火の疑いで追われる。
ミクワは身の明しのため、自分を依頼したその有力者を捜す。
そして、ついにその男を列車の中に追い詰めて突き落とそうとしたのだった。

このように作品の中に、三つの事件がなぞとして描かれている。
1943年の第二次大戦期ドイツ占領下での、外科医クニシンの回想と、
1946年の大戦直後の、公安高官カルボフスキの回想。
そして、1956年現在の炭坑労働者の青年ミクワの話。

互いに関係のなさそうな事件の背後に、影となる人物が浮かび上がりひとつに繋がっていく。
その時々の時代を背景としたサスペンス調の手法に一時も目が離せず飽きない。
さすが、その後のポーランドでもっとも重要な監督の一人となるだけあると感心した。
次は、このカヴァレロヴィチの『夜行列車』(1959年)を観る。

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