ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

マルセル・カルネ・5〜『天井桟敷の人々』

2017年10月25日 | 戦前・戦中映画(外国)
あの有名な『天井桟敷の人々』(マルセル・カルネ監督、1945年)を再度観た。

第1部、“犯罪大通り”
ヒュナンビュル座の前で余興を楽しんでいたガランスを、パントタイム役者のバティストは、一目で恋い焦がれてしまう。
しかし内気な彼は、ガランスを手に入れる機会を逃がし、そのガランスは野心に燃える役者フレデリックと一夜を過ごす。
片や、劇団座長の娘ナタリーはバティストを愛しているが、バティストがその気になってくれない。

舞台に立つガランスを観た大富豪の紳士モントレー伯爵は、彼女を見そめ、何かあったら連絡してほしいと名刺を渡し・・・

泥棒から人殺しまでする詩人らしきラスネール、何かいかがわしそうな商人のジェリコほか、いろいろな人がいて、
この話には、それぞれの人生模様が一杯、あちこちに散りばめられている。

第2部、“白い男”
あれから、数年が流れて。

物語りは、バティストとガランスの恋愛に絞られてくる。
バティストはナタリーと結婚し、子もいる。
ガランスは、モントレー伯爵と一緒になっていても、バティストが忘れられずにパリに戻ってくる。
パリに戻ったガランスは、人気になっているバティストのパントタイムをひっそりと見に来る。

この辺りからのバティストとガランスの、二人の心情を思うと、映像からひと時も目が離せなくなる。凄い。
その凄いと思う感覚は、作品の全体を包む台詞からも身に染みて湧きあがってくる。
そこには、ジャック・プレヴェールの脚本が、詩的に、文学的要素を含みながら余すところなく発揮されている。

それに加えて、バティスト役のジャン=ルイ・バローのパントタイム。若くはなくても、ガランス役のアルレッティ。
そのほかの役者のそれぞれの個性。
目を瞠るオープンセットと、その膨大な人のエキストラ。

これが第二次世界大戦のさなかに作られたと考えると、やはり、フランス映画史上に残る名作と言われるだけあると納得する。
しかし昔、この作品が有名であるということで身構えて観た時、素晴らしいなと感じても、いまいち、最高峰の映画という認識には至らなかった。
今回、観直して感じることは、映画史上の頂点だとのことに一応同意しても、今後も幾度も観なければ、本当の真の価値がわからないではないかと言うこと。

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