ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

マルセル・カルネ・4〜『陽は昇る』

2017年10月24日 | 戦前・戦中映画(外国)
『陽は昇る』(マルセル・カルネ監督、1939年)を観た。

6階建てのアパートの最上階室から、突然、銃声がする。
撃たれた男が、よろよろと部屋から出てきて階段を転げ落ち、死ぬ。
通報を受けた警官が部屋のドアをノックすると、中にいる男フランソワは、威嚇射撃した後、そこに閉じこもる。

警察がアパートを包囲する。
警察と対峙するフランソワは、これまでの出来事を回想していく・・・

フランソワが働いている工場へ、若い女が花束を届けにやってくる。
名は、花屋に勤めているフランソワーズ。
同じ名で、共に、孤児として施設で育ったという境遇に共感するフランソワ。
フランソワはフランソワーズに夢中になり、フランソワーズもフランソワを愛する。

しかしフランソワーズにはヴァレンティンという手品師の相手がいて、ヴァレンティンもフランソワーズを好いている。
そのヴァレンティンには、元々クララという愛人がいる。
クララは、ヴァレンティンに捨てられた腹いせに、フランソワを誘惑する。

二組の男女。その間での、複雑に感情が絡み合った恋の駆け引き。
ただし、内容としては至って単純で、その分、作品に深みが伴わない。

フランソワがヴァレンティンを撃つ。
つい我を忘れてしまって、そうしたということか。
ただ一般的には、逆上したとしても動機が薄過ぎるのではないか。
もっとも、カミュの『異邦人』のように“太陽がまぶしかったので殺人を犯した”という、不条理の世界に照らせば、一概に動機をうんぬん言えないかもしれない。

ラスト。
ジリジリといつまでも鳴る目覚まし時計を、止めてくれる人がどこにもいない。
「詩的リアリズム」作品と言われるカルネの世界。
ここにも、それが表れている。

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