ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『セッション』を観て

2015年10月22日 | 2010年代映画(外国)
デパートの屋上にある劇場で『セッション』(デミアン・チャゼル監督、2014年)を観てきた。
春に公開された作品だが、ジャズドラマーになろうとする男が鬼教師のしごきにもめげず努力していく。
と言うような根性物の内容らしいので、あまり観る気がしなかった作品である。
でも、折角身近なところで上映しているなら、DVDで観るよりましだろうと出かけた。

名門音楽大学1年生のニーマンは、「バディ・リッチ」のような偉大なジャズ・ドラマーを目指して練習に励む。
そんなある日、学内でも名高い指揮者のフレッチャーから、彼のバンドに招かれる。
憧れのフレッチャーから指導を受けられることを喜ぶニーマン。
そして、練習初日。
フレッチャーがスタジオに入って来ると、異様な緊張感に覆われるメンバー達。
それを目撃したニーマンは、違和感を覚える。・・・・

一流になるためのフレッチャーのしごき。時には暴力まがいの事までし、個人の人間性まで否定する。
それに、内心反発して一にも二にもドラムの練習に明け暮れるニーマン。
認められ出したことを良いことに、傲慢な心持ちになっていくニーマン。
そのために、恋人とも別れるニーマン。
そして、挫折。

日本でもよくある話の材料。
スポーツの根性物で一流選手にするためには体罰も厭わずというやつ。
(私は体罰という言葉に嫌悪感を持っている。
単なる暴力を罰という日本語を使ってプラマイ・ゼロにし、本質をうやむやにしてしまうと思うからである。)

このように、物語の筋はいたってシンプルである。
しかし、この映画はすごく素晴らしいのである。
フレッチャー役の J・K・シモンズが真剣なら、ニーマン役のマイルズ・テラーも真剣である。
常に緊張感が漂っていて、観客は画面にクギ付けになる。
なぜか。
画面編集が素晴らしいし、監督の演出力が凄い。

ニーマンが映画館のカウンターに勤めるニコルにデートを申し込む場面、そして、デート先のピザ店での会話。
この場面がとってもいい。観客の私までニコルに恋してしまうのである。
それを、わずかな描写で済ます。
同じように、家族関係も何気なく描いて全体を解らさせる。

有望な才能の若い監督が出現したと、私は感銘してしまった。
久しぶりに多いに満足し、充実した日だった。
そして、映画はやっぱりいいなとつくづく思った。

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