花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

蓼冷汁天目

2015-04-19 | アート・文化


大阪市立東洋美術館で開催中の「黄金時代の茶道具―17世紀の唐物」に昨日伺った。開催期日は平成27年4月4日(土)から6月28日(日)迄である。本年の友の会会員証の意匠に選ばれた東洋陶磁美術館所蔵の国宝「油滴天目」や、その他の数多くの名品とともに、日本医学中興の祖、曲直瀬道三先生所有の緑色の釉薬の天目茶碗、「蓼冷汁天目」(京都国立博物館蔵)が展示されていた。曲直瀬道三先生は、織田信長の診察を行なって信長が切り取った正倉院所蔵の名香、蘭奢待(らんじゃたい)を下賜された、桃山時代の医聖でかつ一流の文化人である。末尾にこの蘭奢待が記された『山上宗二記』の一節を掲げる。眼福にあずかった後は、今月も三谷和男先生御主催の遊漢方臨床談話会に出席した。

ちなみに蓼であるが、生薬名「水蓼(すいりょう)」、ヤナギタデ(ホンタデ、マタデ)Polygonum hydropiper L.が基原植物で、薬性は辛、苦、平、帰経は脾・胃・大腸経に属する。効能は行滞化湿、散瘀止血、祛風止痒、解毒であり、湿を取り除き血を巡らせて下痢、腹痛、関節痛、月経痛などを治し、湿疹や毒邪咬傷にも有効とされている。



此外五十種ノ香トテ異名色々あり木
所も色々の品あり但し武辺
隆正に宗易宗久拙子名香
の聞様相尋之時右之十六種
相極候堺にハ惣別香の道
三人の外ハ知たる者なし京にも
此四人なり
(中略)
医師道三 香ニテハなく候先寺以来
     ランシャタイ持来られ候
     真に無双の正名なり


五島美術館監修図版目録『山上宗二記 天正十四年の眼』, p170
第四章、影印翻刻『山上宗二記』(齋田記念館本)