著者 アンドレイ・クルコフ
国籍 ウクライナ
使用言語 ロシア語
生年 1961年
出版年 1996年
邦訳出版年 2004年
出版社 (株)新潮社
訳者 沼野恭子
国際的な評価 20か国に翻訳出版され、ベストセラーに
なっている。
☆感想☆☆☆
動物たちに餌もろくにやれなくなった動物園からもらって来たペンギンのミーシャと暮らすヴィクトルは、キエフに住む売れない小説家。ある新聞社から死亡記事を書くように頼まれる。さらにまだ生きている大物政治家や財界人、軍人たちの追悼記事をあらかじめ書いていく仕事を依頼されるようになる。そして追悼記事を書いた大物が次々に死んでいく。追悼文の取材に訪れた先で銃撃の音を聞き、取材先の新聞記者が射殺されたことに度肝を抜かれる。そして孤独なヴィクトルの家に、追悼文を個人的に依頼してきた「ペンギンじゃないミーシャ」が4歳の娘のソーニャを預けて姿を消す。鍵のかかった家に誰かが侵入している痕跡がある。ペンギンのミーシャを預かってくれた若いセルゲイ巡査の姪のニーナがベビーシッターとしてやってくる。手紙やお金が残されている。どうやってはいったのか。何が何だかわからないうちに、追悼文を書いて死んだ大物の葬儀にペンギンと一緒に参列するようになる。そしてヴィクトルは自分について書かれた追悼文を見付け、自分がいつのまにか国家安全保障の「グループA」という暗殺組織の一員になっており、マフィアともつながっているという記事に驚く。これぞ青天の霹靂。さあ、生延びることはできるのか。
カフカのような不条理な世界に翻弄される主人公の姿をペットとして個人の家で飼われているペンギンの不条理さと重ねている。登場人物がそれぞれ生き生きとしていて可愛らしい。怖い話なのに楽しく面白い。