読書感想275 ゴルディオスの結び目
著者 ベルンハルト・シュリンク
生年 1944年
出身地 ドイツ西部ノルトライン・ウェストファーレン州
出版年 1988年
邦訳出版年 2003年
邦訳出版社 (株)小学館
訳者 岩淵達治&石丸英子 大田文子 大塚仁子 北川和代 北村春子 林啓子 増田久美子 望月節子 安彦恵子
本書の受賞歴 ドイツの優れたミステリーに与えられるグラウザー賞受賞
☆☆感想☆☆
2年前に恋人と一緒にドイツからフランスに移ってきたゲオルグ
は、仕事が見つからないまま、南フランスの田舎に素敵な一軒家を見
つけて住むことにした。しかし経済的な困窮が続き恋人はドイツに
戻ってしまった。今はマルセイユのモーラン翻訳事務所からの翻訳
で生計を立てている。その翻訳は新型攻撃ヘリコプター開発のヨー
ロッパ共同プロジェクトに参加しているメルモ社からのものだ。し
かしそれも不定期で安定した収入は得られない。そこに新しいブル
ナコフ翻訳事務所がゲオルグに接触してきた。ゲオルグに運が向い
てくる。ブルナコフの秘書のフランソワーズと恋人になり、モーラン
が事故死した翻訳事務所を引き継ぐことになる。ある日、フランソワ
ーズはゲオルグの下から離れていき、翻訳依頼もぱったり来なくな
る。ゲオルグはフランソワーズを捜しに、わずかな手がかりからニュ
ーヨークへ飛ぶ。舞台は南フランスの片田舎からニューヨークの大
都会に移る。
ゲオルグがフランソワーズを探していく過程で、ゲオルクが巻き
込まれていた陰謀がわかっていく。陰謀は、題名の「ゴルディオスの
結び目」の通り複雑である。編集部の注では「ゴルディオスの結び
目」とはギリシャ伝説で複雑に入り組んだ綱の結び目のことだとい
う。デルフォイの神託ではこれを解いた者が全アジアを征するだろ
うと予言され、アレクサンダー大王がその結び目を剣で断ってしま
ったという。
この物語ではゲオルグの恋が印象に残る。ニューヨ
ークの町の様子が生き生きと描写されていて行ってみたくなる。