著者: アンデシュ・ルースルンド ベリエ・ヘルストレム
生年: 1961年 1957年
出身国: スウェーデン
出版年: 2004年
邦訳出版年: 2017年
邦訳出版社: (株)早川書房
翻訳者: ヘレンハルメ美穂
受賞歴: 「ガラスの鍵」賞(北欧ミステリー最高峰)
☆☆感想☆☆☆
章を追うごとに語り部が変わっていき、物語が進んでいく。プロローグでは連続女児暴行殺人犯のベルント・ルンドが獲物を物色する場面から始まる。そして4年後に5歳のマリーが友達のダヴィッドと子豚のお面をかぶって狼の仮面をかぶったパパのフレドリックをやっつける場面に変わる。幸せな父と娘。一方、死刑制度のないスウェーデンで服役中のルンドは病院に護送される途中で刑務官に暴行を加えて脱走する。お昼ごろマリーを保育園に送っていったフレドリックは保育園の前でにこやかな男を見かける。自宅に帰ってテレビのニュースでその男がルンドだと気付く。その時マリーもルンドもすでに消えていた。
死刑にできない連続殺人犯に私的な制裁を加えることは是か非か。しかもその制裁は新たな連続殺人を防いだ場合は正当防衛ではないのか。そうした議論が塀の外でも中でも渦巻いている。
この作品はルースルンドの処女作でエーヴェルト・グレーンス警部とスヴェン・スンドクヴィスト警部補の活躍する警察小説の第1作だという。ルースルンドは「熊と踊れ」でも本作でもそうだが、共著者に事情通の人を選んでいる。ヘルストレムは服役囚だったことがあり、その経験から犯罪防止団体を設立して、そこを訪れたルースルンドと出会って本書が生まれたという。
ストックホルムは自然に恵まれた町で、森や湖が身近にあり、さらにスウェーデンの刑務所は独房というよりインターネットも使える快適な個室空間になっている。犯罪者を罰するという考えが希薄なのだろう。驚いた。