翻訳 朴ワンソの「裸木」27<o:p></o:p>
P84~P87<o:p></o:p>
ジャンパーの首の周辺がだぶだぶのせいか、首が少し長く、そこに見える清潔で白い下着に好感が持てた。<o:p></o:p>
彼女に好感を感じる自分が性格が良すぎるようで、少し腹が立った。<o:p></o:p>
しかし、彼女の白く長い首は他人の憎悪のようなもので、到底耐えられるものではなかった。<o:p></o:p>
私は彼女が勧めた林檎の一切れを長く長く咀嚼した。彼女は子供達を隣室に行かせることも、林檎を勧めることも無言でひたすら目だけで示した。彼女の目顔と動作にはたくさんの感情と意味があった。私はだんだん腹が立った。まったく夫をがみがみなじるようなところもないからだ。<o:p></o:p>
貧乏くさくだぶだぶの防寒ジャンパーの中の清潔な下着。<o:p></o:p>
その上、白く長い首と繊細な顔はよりによって私の好きなモディリアーニが描いた女性と似ていたのはどうしてなの。<o:p></o:p>
私は挫折感と焦燥で下唇を噛んで座る位置をあちこちずらした。彼女を私の気持ちの上でどうしても明瞭に処理できなかったのだ。<o:p></o:p>
「床が少し冷たいようだよ。どっちにしても」<o:p></o:p>
奥さんが私の膝の下に手を置いて見ながら、とてもきまり悪そうにすると、<o:p></o:p>
「まあ、こちらに、こちらに来て」<o:p></o:p>
オクヒドさんは敷いている敷布団の一方を上げながら慌てた。<o:p></o:p>
私は彼の横へ近づいて敷布団の下に手を入れて、彼の素朴で温かい視線を探した。<o:p></o:p>
彼は視線が合うと少し笑った。私も彼にならってとてもおとなしく笑いを浮かべた。<o:p></o:p>
「ミス・李は先生が出勤なさらないので、どんなに心配したことか。今日も実はミス・李がしきりに見舞いに行こうとせがんで、僕も案内したわけです」<o:p></o:p>
「とにかくありがとう」<o:p></o:p>
「最近繁忙期じゃないですか。あの商売がそんなに儲かる商売だということは、僕も本当に知りませんでした。ミス・李が一人で苛められているようです。わずかの間でヒステリーがぐっと増えました。先生は早く回復されるはずだから…」<o:p></o:p>
「体の動きはすっかりよくなった。余裕を持って見ても3,4日寝ていれば大丈夫なんだけど…」<o:p></o:p>
「とても具合が悪かったんですか?」<o:p></o:p>
私は初めて彼に声をかけた。<o:p></o:p>
「風邪に手足の痛みが重なったようだ。もともとずっと無病だったから。直ぐに治るはずだよ。今はこの咳だけがちょっと止まれば、コン、コン…」<o:p></o:p>
彼の言葉はまた咳が遮った。私は無意識に陶器の灰皿を彼の口に当ててやって、背中をさするところだったが、そんなことは既に奥さんがしていた。<o:p></o:p>
私はそうしたいという気持ちで胸を焦がした。<o:p></o:p>
咳が止んだ彼は壁に疲れたようにもたれかかり、隣室に閉じ込められている子供達は障子を開けて代わる代わる覘きこみ始めた。行かなければならない時間になったようだ。<o:p></o:p>
一番幼い子供がとうとう障子をからっと開けてオンドルの暖かい部屋に下りてきて林檎の袋をいじりだした。食べ物の好き嫌いのない健康な男の子だった。<o:p></o:p>
私はその子供を引っ張って膝の上に座らせて林檎を一つ持たせてやった。そして子供の清潔で柔らかい頭髪に鼻をつけた。ほのかに香ばしい匂いがする子供は一生懸命林檎を頬張った。私はだんだんうっとうしくなった。<o:p></o:p>
香ばしい匂いと林檎をかじる、さくさくという音は心地よいけれど悲しかった。私は泣きださないように子供を何度も強く抱いた。<o:p></o:p>
健康で頑丈な男の子は艶のある林檎の皮を余すことなく浸食し、果肉を貪欲に食べた。<o:p></o:p>
ついに種が見えると私はわっと泣きだしそうになった。<o:p></o:p>
「行かなきゃ」<o:p></o:p>
私は子供を手荒くおろしてぱっと立った。<o:p></o:p>
「どうして? もうしばらく遊んでいったら」<o:p></o:p>
「母が待っているの」<o:p></o:p>
私はだしぬけに考えてもいないことを言った。<o:p></o:p>
「あの坊やと同じで、お母さんを思い出したみたいだよ」<o:p></o:p>
泰秀がくどくど言いながら立ち上がって、目をしかめて私の頬を固くつついた。釘にかけたオーバーを取って着せてくれ、マフラーを頭に固く巻いてくれた。そして先日のように何本かの髪の毛が額に垂れ下がるまで手入れをするのを忘れなかった。<o:p></o:p>
その間オクヒドさんと奥さんは私を愛おしそうに大らかな笑みを湛えて眺めていた。それにじっと耐えねばならなかった。<o:p></o:p>
どんなに酷い侮辱もこれよりはましなはずだ。私は敷石の上で靴を履いても時間はゆっくりとしか進まなかった。強く足を転がしてみたが腹立ちは解消されなかった。隣室の子供達がわあっと縁側に殺到して来て「さようなら」や「バイバイ」のような挨拶をしても、私はぶっきら棒に口をつぐんだままだった。<o:p></o:p>
かなり暗い中門との間で奥さんのざらざらしているけれど温かい手が私の手をしっかりと掴んだ。<o:p></o:p>
「ありがとう。こうして来てくれて。そしてパパがいつもお世話になって…」<o:p></o:p>
私は彼女の手を粗雑に振りきって、ぴょんと敷居を越えた。先に外に出た泰秀にしがみついた。<o:p></o:p>
しばらく雪が洗ったように止んで、きれいに晴れた空に星がいっぱい輝いていた。そして激しく渦巻く風が地面から空へ雪を巻き上げていた。<o:p></o:p>
袖の中に、チマの裾の下に、雪の粉がわけもなく飛び込んで来た。私は寒かった。歩けば歩くほどどんどん寒くなって、歯ががちがちと震えた。<o:p></o:p>
巨大な骸骨のように並んだ街路樹も、刺々しい風の中で痛ましい音を出して震えた。風はどんどん激しくなって獣の咆哮のように荒々しい声を出した。<o:p></o:p>
泰秀は自分のジャンパーを脱いで私のオーバーの上に重ねてくれた。それでも震えた。雪の粉のようにどこかへ飛んで行ってしまいそうで、私は片腕で泰秀の腰をぎゅっと抱きしめた。<o:p></o:p>
それでも震えはなかなか収まらなかった。<o:p></o:p>
「ジャンパーを一緒に被ってよ」<o:p></o:p>
「僕は大丈夫。別に寒くないんで」<o:p></o:p>
「一緒に被ろうよってば。体温が必要よ」<o:p></o:p>
「どういうことなんだい? 病気でもなるっていうのかい?」<o:p></o:p>
私達は二人でジャンパーを一緒に被って、力いっぱい抱き合って吹雪の中を歩いた。地球の終末に二人だけが残された、通行人も灯もない廃墟の街を、雪は地面から空に向かって、しきりに舞い上がった。<o:p></o:p>
泰秀はずっと震えている私を本当に自分の体温で融かすかのように一生懸命さすった。<o:p></o:p>
少し離れた所に派出所の灯が見えた。その前でしばらく離れて再び一つの体になって歩きはじめた。<o:p></o:p>
「家まで連れて行くよ。一人では無理だ」<o:p></o:p>
「心配しないで。早く力を出さなくちゃ」<o:p></o:p>
彼は私がまるで凍死直前のように一生懸命に私の全身を痛くなるまでさすりながら、<o:p></o:p>
「じっとしていたらいけないし、何かちょっと、そうだ」<o:p></o:p>
「どうして意識も失ったように怖がるの?」<o:p></o:p>
「いや、まさか。そうじゃないけど、寒いという気持ちをちょっと忘れることが出来ればと思って」<o:p></o:p>
「オクヒド先生の奥さんは美人だったわね」<o:p></o:p>
「何、そうだよ」<o:p></o:p>
それで話題はまた途切れた。片側の故宮の塀は限りなく長く、その中の樹木が飢えた獣のように殷々とした咆哮を上げていた。しばらくして泰秀がまた促した。<o:p></o:p>
「何か、そうだ」<o:p></o:p>
彼は面白そうでもまた不安な様子だった。<o:p></o:p>
「歌でも歌わない」<o:p></o:p>
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