読書感想214 ホテルローヤル
著者 桜木紫乃
生年 1965年
出身地 北海道
出版年月 2013年1月
第149回直木賞受賞
☆感想☆☆☆
釧路湿原を見下ろす風光明媚な場所に立つ6部屋しかない小さいラブホテル、ホテルローヤルにまつわる男女の話が7編収められている。どれもこれも貧しくわびしい話で、ホテルローヤルといっしょで崩れ落ちていくような気配が漂っている。とくに胸に迫ったのは「せんせぇ」と「星を見ていた」。前者は悲しみに押しつぶされ、後者は悲しみを支えてくれる夫婦の絆がわずかに救いになっている。桜木紫乃の作品は舞台が北海道なので読み続けてきた。北海道というのは悲しみとか崩壊という面よりもっと別な面がある。力強いフロンティア・スピリットとその伝統もある。弱く駄目な人間だけでなく、強くしっかりした人間も多い。そういう面も織り込んだ物語を読みたいと思う。
1. 「シャッターチャンス」廃墟となっているホテルローヤルで、恋人をヌードにして撮影する話。
2. 「本日開店」釧路がさびれて、経済的に困窮してきたお寺の有力な檀家をつなぎとめる方法。
3. 「えっち屋」ホテルローヤルを閉店するにあたり、大人の玩具の納入業者の生真面目な男と、経営者の一人娘とのいきさつ。
4. 「バブルバス」たまたま浮いた5000円で初めてラブホテルに来た夫婦。
5. 「せんせぇ」津軽海峡線の木古内で高校教師をしている男とその教え子の女の子の話。男は妻の裏切りを確かめるために札幌に向かい、女の子は両親に捨てられ行くあてもなく、男にまといついて行く。
6. 「星を見ていた」ホテルローヤルの60歳の掃除婦の話。3人の独立した子供たちとは音信も途絶えているが、あるとき自慢の次男から3万円が送られてくる。
7. 「ギフト」妻子がある身でありながら、年が半分ほどの若い女の子と浮気をして、ホテルローヤルを建てる男の話。