風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

最後は小さくなってグッバイ

2021年10月24日 | 「新エッセイ集2021」

 

寒くなって戸惑う もう秋を忘れて冬なのかも知れない だんだん少なくなって とうとう小さくなって 朝顔の最後の花が咲いた ひとつだけ咲いた これでおしまい 冬のことは知らない タネになって静かに眠る この夏には70輪ほどが いくどもいくども咲いた 最後は1輪だけでさよならする 花の記憶を辿りながら 夢のヒツジを70ぴきまで数える そうして暖かくなったら ふたたび花の季節がくる 変わらないのは花だけかもしれない 花は変わらずとも季節は変わる 温かい毛布を出して ストーブも出した 扇風機はまだ出したまま 風の気まぐれで 寒かったり暑かったりするから 服を重ねたり脱いだりするが 花ではないから ぱっと咲くこともできないし 枯れることもできない 雲の流れを見ながら迷走する どこへ行けばいいのか やりたいけどやれない 行きたいけど行けない 飛びたいけど飛べない 咲きたいけど咲けない 花ではないから







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