風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

わたくし的歩き身体改造論

2021年08月23日 | 「新エッセイ集2021」

 

わたくしは私であり僕であり あたしでありおれであり あたいでありおいらでもあるが ひげの吾輩ほど偉くもなく猫ほどに賢くもない わたくしの身体の査定はほぼポンコツでガタビシ 足はガクガク心臓はパクパク おまけにハートはビクビクヒヤヒヤ これまで暢気にとんとん拍子で 坂を下ってきたのは老ノ坂だったのか この青息吐息で四苦八苦のくたびれた身体を 今更ながら心機一転の補修でなんとか 南無三宝おんあぼきゃ曼斗羅 虫の神さま草の神さま八百万の 見えないちっちゃな神さまとも談合し 弱った臓腑には陀羅尼助丸やら正露丸をぶっかまし 冷水摩擦で皮膚をしばいて靴ひもしめて えっこらやっこら息継いで坂をのぼる朝夕 公園の鉄棒は腕は伸びきりただぶら下がるだけ 地面と足とのこのブランクが 伸ばしてみても縮めてみても 運動不足の怠惰が分銅に掛かり 針は動かず塵芥も舞わず 汗はぽたぽた涙もじわじわ 苦あれば楽ありとはほんまかいな 楽すれば転がるばかりの老いの坂あり そればかりは実感痛感遺憾息ぎれ 血中酸素濃度は大丈夫かな 超過敏に反応する昨今のわたくし デルタやラムダやサンミツは避けて きれいな空気で深呼吸すれば 胸は膨らみ前頭葉もフルオープン 高鳴る鼓動で幻惑サーフィン 光の彼女は遠距離交信かつ非公式 語りかけてもキスしてみても 四角で冷たいスマホの中だけ ゴリラガラスの鏡よ鏡さんと ぼくの想いを指恋タッチで発信するも ノーもイエスも以心伝心異心電信 雨あがりの青空には七色の迷路が ゆうべの夢の跡にはただ有明の月が 消えるでもなく冴えるでもなく まずは息ととのえて気をしずめて いまはこの坂道をのぼること 坂の上には何かあっぺか コップ一杯の水くらいあっかも 一滴の水でも花はぱっと咲くかも 歩き疲れて縮んだ脚かも 水を得た魚ぴんと張るかも 無理せずスローがマイブームのわたくし 超スローな負荷が筋肉を強くするとか 脚はゆっくりアップでゆっくりダウン 腰はゆっくり折ってゆっくり伸ばす 息はゆっくり吸ってゆっくり吐いて スローモーションで時間も暦も止めて 昨日も今日も歩くあるく なんだ坂こんな坂おいの坂 おらの坂おいらの坂わたくしの坂を どうしようもないわたしが歩いてゐる  

 

 

 


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