
近くの池で、水鳥がひときわ変わった泳ぎをしていることがある。
2羽で追いかけっこをしている。それも、どちらが追いかけて、どちらが追いかけられているのか判らない。ぐるぐるとコマが回っているような円を描いている。その動きは激しくて、池のその部分だけが沸騰しているようにみえる。
水鳥が恋をしているのだと思った。
雄と雌の2羽は相思相愛の仲。その円い動きが証明している。
片思いであれば、どちらかが追いかけ、どちらかが逃げる。その動きは直線になるはずだ。
だが、この2羽はひたすら円を描いている。もう何も見えないといった激しさで、渦巻きつづける。恋というものを、目に見える形にすると、このようになるのかもしれないと思った。
また、ある時は20羽くらいが集団で渦巻いている。
こちらも激しい動きで熱気がある。さしずめ、合コンといったところだろうか。渦巻きは、1羽2羽と他の水鳥も巻きこんで、次第に大きくなっていくようだ。
これは、スポーツに近い恋といえないだろうか。
かつて祭りの夜に、若い男女が集まって、踊ったり歌ったりして恋が生まれたような、おおらかで原始的な恋のロンドをみるようだ。
もちろん、水鳥が恋をしているなどとは、水鳥の生態を知らない、ぼくの勝手な想像だ。
こんな寒い朝に、そこに春の気配をみている馬鹿は、たぶんぼくだけだろうな。
鳥たちの水掻きでかき混ぜられた、春の渦潮が、ぼくの頭の中でうずまいているようだ。
まもなく水鳥たちは、春を残して飛びたつ。
嬉しいコメント、ありがとうございます。
「ユーラサユラサ」のイラストに元気をもらいました。
ますます書く意欲が湧いてきました。