ただ、グローバルな競争にさらされた企業が正社員の採用を抑制するなかで、非正規雇用が雇用の受け皿となり、失業者の増加を防いできた面も否定できない。
正規雇用と非正規雇用とのバランスをどう取っていくのか。国の将来像を踏まえた長期的視点に立って立法化してもらいたい。
労働者派遣法は昭和60年に制定され、当初は通訳やアナウンサーなど専門的な13業務だけに派遣が限定されていた。それが、バブル崩壊で雇用調整を進める企業側の要請もあって、いまでは建設、港湾運送などを除いたほとんどの業種で認められるようになった。
しかし、派遣労働のすそ野が広がるにつれて、深刻な問題も浮き彫りになった。バブル崩壊後の就職氷河期といわれた時期に正社員になれなかった若者の多くが、職業訓練の機会がないまま年齢を重ね、非正規労働を続けている。
厚労省によれば、卸売・小売業では非正規労働者の割合が1990年代以降急激に上昇し、2002年には業界全体の44・2%に達した、という。この上昇傾向はいまも続いている。
派遣やパートで働く人は、正規雇用と違って雇用契約が不安定で、いつ仕事を辞めさせられるか分からない不安を抱いている。
経営側にはなお、規制緩和を求める意見が強いが、このまま非正規雇用の増加が続けば、将来の生活保護が増加し、国の社会保障負担が増大する懸念も強まる。そうした非正規雇用が生む社会のひずみに対して、対策を急ぐのは政府の責務である。
厚労省の研究会がまとめた「契約期間が1カ月以内の派遣を原則禁止する」などの対症療法だけでは不十分だろう。企業の核となる正規社員への転換を進めるとともに、非正規社員の待遇を改善し、同一労働同一賃金に近づける方策を探る必要がある。健康保険や雇用保険への加入も課題だ。
国民が生きがいを感じ、安心、安定して働ける社会へ向け企業側の意識改革も欠かせない。それが長期的に国が発展する礎であることを忘れてはなるまい。(MSN産経ニュース)
派遣法改正の動きは歓迎するべきとは思うが、非正規雇用は派遣だけではない。派遣法が改正されれば、おそらくそのしわ寄せは契約社員増加をまねくだろう。先日、月200時間残業で過労死された方は契約社員だった。契約社員やパート・アルバイト社員も有期雇用で、昇給の機会にめぐまれず、ボーナスや有給休暇などの保障の恩恵からは取り残されがちなまま正規雇用者の受け皿として、正規雇用と同等かそれ以上の労働と責任を要求されている。
大阪府の財政立て直しで、知事と府労組との談合の様子をみるにつけ、(正規雇用者)労働組合の並外れた利己的体質は目をそらしたくなるほどだった。政府や経営側ばかりではなく、労働組合にも職場の全体に思いをはせる対応を考えてもらうこと、正規雇用と非正規雇用のバランスをとること、非正規雇用者の待遇改善のために正規雇用者の待遇面での(減給などマイナス面も含めて)譲歩も視野に入れ考えてもらうことは不可能なのだろうか。同じ職場において正規雇用者が受ける恩恵の受け皿、代替として、非正規雇用者が一方的に受容している理不尽を、労組が確信的に見て見ぬ振りをすることは、労働者の構造的な格差助長に加担していることになり、労働者の組合としてどうなのか?と思う。