詩歌探究社 蓮 (SHIIKATANKYUSYA HASU)

詩歌探究社「蓮」は短歌を中心とした文学を探究してゆきます。

土岐善麿の百首&オレンジ月夜

2024-06-11 12:03:04 | 短歌情報

『土岐善麿の百首』 河路由佳

2024/6/8 税込1870円 ふらんす堂

 

ふらんす堂の歌人入門シリーズ⑩として刊行された。

河路由佳は歌人で日本語の研究者であり、土岐善麿の研究者。

私は善麿のいくつかの歌集を持っているに過ぎない読者。

特にローマ字歌集『NAKIWARAI』の作品全てを日本語表記に

してみようと試みたことがあったが、すぐに断念した経験を持つ。

それらを十分に読み込んでいるわけではないので土岐善麿の

あらすじを知るのには最適の入門書である。

私が短歌を始めたころ買ってみた商業誌の巻頭作品が善麿であった。

 

『オレンジ月夜』 河路由佳

2024/5/27 税込¥2.640円 港の人

 

河路由佳の意欲的な活動は目覚ましく、

先月には5冊目の歌集『オレンジ月夜』を刊行されている。

これもまた感想文を送るまでには十分に拝読できて

いないのだが目に留まった作品を紹介しておく。

 

不穏なる空に大きな鳥の飛ぶ形の青空ぽっかりとある

音もなくUFO降りてきたように朝からショベルカーが来ている

地震にはあらずわたしの骨格を揺らし実家に重機が刺さる

コロナ禍の徒歩通勤の路地裏はマスク外して大股でゆく

土岐善麿を詠んだ作品もある。

土岐湖友と名のりし善麿二十歳(はたち)にて儚き人への恋歌多し

善麿の「湖面荘」の跡訪ねれば広し 高級マンションの建つ

 

 

 

 

 

 

 


「舟」44号 2024.6 夏号

2024-06-08 09:06:31 | 短歌情報

「舟」44号 2024.6 夏号 (表紙の2023.6は誤植でしょう)

代表編集人 依田仁美

 

現代短歌舟の会機関誌「舟」が発行された。

全146頁の充実した文芸誌。

 

巻頭の一文で依田仁美は<当会は「不教不受」を掲げる>と書く。

 

 

私は購読会員として「ハードボイルド」15首を発表している。

3首紹介する。こんなうた。

 

まだやっているのかロシアウクライナ戦争二年図面書きつつ

プリゴジンとナワリヌイが死んだことを知る程度なり熔接しつつ

実はこれニワトリの卵なんだよな茹で立て玉子の殻を剥きつつ

 

以前、当ブログで紹介した浅川洋の作品集『渚 NAGISA』の

評を依田仁美が書いている。これは浅川さんの財産になろう。

 

 

 


「花の室・21」30号

2024-05-24 12:04:36 | 短歌情報

「花の室・21」30号  2024/4/30発行

編集・発行 塚田沙玲

 

塚田さん代表の同人誌。

同人の作品とエッセイ他評論も載っている。

淡々と地道に活動されている。

 

作品を一部紹介します。

 

勝山祐衣「リピート・リピート」より

貼り紙の求人が救に見えてみの虫だらけのノートをとじる

一日のおわりの光はねかえす眼鏡のふちに宿る自由よ

 

塚田沙玲「傷痕のごと」より

古代より有明の沢と言ひたりと銀のお髪の魔女棲むなだり

春の雪ふりつむころか山あいの詩人の庭に魔女の御髪に

 

 

 


「アルファ」33号

2024-05-24 12:03:11 | 短歌情報

「アルファ」33号 2024/5/8発行 

編集・発行 恩田英明

 

恩田英明個人雑誌「アルファ」33号。

毎号、楽しみに読んでいるのが、連載「山崎方代の風景」。

今号は『迦葉』から

<五寸釘くぎ一本の打ちどころお慕い申してやまないのです>

が、取り上げられている。

 

恩田英明「玉蜀黍蕊」より紹介します。

 

いまの世に山越えに往く人もなし分去れに咲く白梅の花

ときは来ぬ桜はどつと散るべかり空に貼りつく桜はなびら

畑暮れて玉蜀黍蕊(ぎょくしょくきずい)夜の間は髪文字(かもじ)にならむと身じろぎはじむ

 

1首目の<分去れ>は「わか‐され」と読み道が「左右に分かれるところ。

 分かれ道。 追分。」だそうで《群馬から長野にかけての方言》とのこと。

3首目の玉蜀黍蕊はとうもろこしのいわゆる髭。

 

 

 

 

 


「さて、」15号

2024-05-10 09:39:59 | 短歌情報

「さて、」15号 2024/5/10発行 年二回刊

編集・発行 さて、 発行所 天草季紅方

 

全54頁の同人誌です。

表紙の雰囲気からして、独自路線を歩んでおられる。

同人誌や個人誌はボクの知る限りみなどれも似て非なる

独自・独特の雰囲気があります。

 

原田千万「越冬賦」より紹介します。

月光がしづかにつもりこの世からあの世へ向かふ橋が見えたり

わが死など語られることあらざらむ飛行機雲がほどかれてゆく

 

文章では天草季紅の連載「木本千代の歌 3 沈黙と表出」が読ませる。

 

 

 

 

 

 


モンキートレインに乗って。

2024-05-09 12:06:15 | 短歌情報

『モンキートレインに乗って ファイナル昭和十九年の会アンソロジー

発行者:及川隆彦 発行所:ながらみ書房  定価3300円 2024/4/29発行

 

メンバーの南輝子さんからお送りいただいた。ありがたいことです。

<ファイナル>ということはファイナルなのであろう。

会員の30首とエッセイが収載されており巻末に「活動記録」が載っている。

何名か存じ上げているが、今年傘寿とは思えない方々ばかりだ。

 

南輝子の作品「命いのち、清(チュ)ら」から紹介する。

 

身をかがめ身を低くして耳澄ますきりりり地球が傾きをます

さみどりの泉のほとり水求めあつまつてくる蝶、小鳥、死者

 

今後とも良き先輩として導いていただきたい。

 

5/9(木)曇 

 

寒い寒い。ぜんぶ寒い。

 

さて、トヨタ。利益が5兆円突破したそうです。

販売台数は1000万台突破しているし。

単純に計算するとクルマ1台売って500万円儲かっている計算?

ま、クルマ売ってるだけじゃないにせよ。儲けすぎです。

凄い経営努力です。

 

見習おうっと。

 

 

おしまい。

 

 

 


「十月」161号

2024-04-04 12:19:59 | 短歌情報

「十月」161号 2024年3月20日発行

年2回刊 800円(税・送料込)

 

超短歌研究会「十月会」の冊子が昨日届く。

月例会で発表された内容のレポートと会員の短歌10首と

300字の小文が載っています。私が担当を下りる際、

「年2回発行にして内容の充実を図る方が良い」と言いました。

 

私は「バカさゆえ」10首と「会話が大事」300字を書きました。

 

「バカさゆえ」より2首紹介しておきます。

 

真に受けて伸び伸びやれば出る杭は打たれ出過ぎた杭は抜かれる

バカさゆえ苦しみバカさゆえ悩みいまを惜しみて出る悔いを打つ

 

Word原稿をメール提出しているのですが私の短歌に

掲載ミスがありました。特にクレームはつけませんよ。

ボクが担当の頃はいろいろ言われましたけどね。

この場で掲載ミスの短歌の正誤画像を付けておきます。

「ツキノグマ」と「ツキノワマ」の違いに注目して、脇に「、」を

付けたのが消されていたんです。

(誤)で意味通じなくなっちゃったよー。

 

 

おしまい。

 

 

 


「夏暦」58号

2024-04-02 11:59:46 | 短歌情報

「夏暦」58号 令和6年3月30日発行

発行者 王 紅花 年三回刊

 

王 紅花の個人誌。

 

「わたくしは誰」29首より3首紹介する。

 

アマゾンがわれにお知らせ「あなたにイチオシのアンパンマン プリちぃビーンズ」

わたくしは誰?

友達とつきあふコツを伝授するアニメを最後まで見てしまふ

買ひおきし赤き長靴初雪のうつすら積もる夜のポストまで

 

「飯能市の雛飾り」なる小文。

私も訪れたことのある名栗温泉の大松閣や

数年前までクマタカの撮影によく通った

有間ダムのことが書かれていたので

身に引き寄せて読んだ。

王紅花さんは青梅市にお住まいだ。

 

「あとがき」に第三回松平修文絵画展のおしらせ。

6/13~7/9まで軽井沢千住博美美術館ギャラリーで開催されるという。

 

 

 

 

 


「鱧と水仙」62号と令和五年度「彩短歌会作品集」

2024-03-05 12:02:45 | 短歌情報

「鱧と水仙」62号・藪の会

会員数21名の同人誌。

知友・山中もとひの第二歌集『生きてこの世の木下(こした)にあそぶ』が

特集されている。自選十首より二首紹介する。

 

ていねいに水撒く係の人はいて工事現場に指図の声降る      山中もとひ

良いものは川上から来るどんぶらこ川下のこと知らない知らない

 

 

令和五年度「彩短歌会作品集」 代表 平林静代

平林静代さんが22名(出詠者数)の会員を率いる短歌会の作品集。

 

平林静代「繊月」12首より二首紹介する。

 

どうにかなる、なんとかなるさと思ひしが 一太刀あびしやうな繊月  平林静代

濃緑の木々が零せる影ふめばわれも静かな一本となる

 

 

同人誌2誌を紹介した。

こういう活動が短歌界を支えているのです。

 

 

 

 


「帆」第36号 佐藤よしみ

2024-02-18 15:43:25 | 短歌情報

「帆」第36号 佐藤よしみ 2024.2

 

独自の歩みを続ける佐藤よしみの「帆」36号。

 

ちちははの世代はとうに過ぎており訃報はおのが世代に至る

一葉の写真たりとも残すまじ言い残したる友の明け暮れ

口コミの影響受けて選ぶ店久しぶりなる飲み会に行く

今度いつ会えるのやらと言いながらほんとうはあまり興味なきこと

短歌「たそがれ」より。

同世代ゆえの共感。

2首目。人にはふたとおりあるようだ。

生きた証を残したい人。形跡ともども消したい人。

私は前者だが、後者に憧れる。

 

「琉歌(うた)の見える場所(25)

佐藤よしみのライフワークであるこの連載エッセイを通してしか

知ることのできない沖縄が私にはある気がする。

 

先週の土曜日、わが短歌教室の仲間から「先生これ来てます?」と

「帆」36号を見せられた。

「萩谷さんは立派な歌人だと勘違いされてるんだよ」と言っておいた。

 

 

 


『夢の日』糸田ともよ

2024-02-15 08:46:33 | 短歌情報

『夢の日』糸田ともよ

 

詩と写真のちいさな本。

52x68mmの本。

詩精神が凝縮されている。

裏表紙。

とある頁。

 

 

 

 

 

 

 

 


『ただごと歌百十首 奥村晃作のうた』今井聡

2024-02-03 10:11:29 | 短歌情報

『ただごと歌百十首 奥村晃作のうた』 今井 聡

六花書林 2024/2/20

 

コスモス短歌会の今井聡が師である奥村晃作の百十首を読む。

お馴染みの奥村短歌から、私がすっかり読み落としていたうたまで

幅広く採り上げられている。

 

奥村自身が最終歌集とした『蜘蛛の歌』が昨年12月に出たので

そこからも十首抄出し、百十首としたようだ。

 

身近にいた今井だからこそ知る作品の背景など織り交ぜて

奥村の膨大な作品を読み込んだうえでの百十首鑑賞。

 

この評論を出すに至ったのは故田島邦彦の言葉が端緒としてあったという。

「『奥村晃作の歌百首』を書くのは君だ、必ず書け」

と、強い口調で言ったという。

本書には板橋歌話会のシーンも書かれている。

今は亡き大坂泰さん、黒崎善四郎さん、松坂弘さんらの面影も偲ばれる。

 

今井さん、素晴らしい仕事をされたと思う。

奥村さんもさぞ歓んでいらっしゃるだろう。

しっかり拝読したいと思う。

 

 

 


浅川 洋 詩画集『渚』

2024-01-27 09:40:26 | 短歌情報

浅川 洋 詩画集『渚』 2023/11/26発行

発行所 風卵舎

 

昨夜現物を見た。浅川洋の詩画集『渚』。

この色はティファニーブルーに近い。

箱を開けると白い詩画集が収められている。

ジャバラ様の書物を開くと芸術家浅川洋の画と詩歌。

書物を立てるとこのようになる。

装幀も紙質も質感も圧倒的な存在感を放つ。

 

感動し

感激する。

 

 

 

二度か三度か、お目にかかったことがある浅川さんは

ボクの知る限り現在「舟」に所属されている。

彼女の個展にも出かけたことがあった。

 

凄い作品を創ったものだ。

 

 

 

 


『うたの徒行』外塚喬(六花書林)

2023-12-14 12:22:57 | 短歌情報

『うたの徒行』外塚喬(六花書林)

 

外塚喬が主宰する「朔日」に連載しているエッセイの集成。

126篇。どのページから読むのもよし。

小文の中に短歌が数首抽かれるスタイル。

わたしはそういう読み物を特に好む。

楽しい読み物である。

 

 

 


現代短歌[舟の会]機関誌「舟」43号

2023-12-08 12:04:48 | 短歌情報

「舟」43号・冬号

 

現代短歌[舟の会]機関誌「舟」43号(代表編集人依田仁美)が届く。

 

私は本誌の購読会員。

 

「踏み外せば死ぬというとき」15首を発表している。

全142頁の大冊なので全部は読んでいない。

 

目次を見てまず読んだのが依田仁美氏による

「追悼 α星墜つ 清炎・清水亞彦」。

「追悼文」といえども読者を涙ぐませる文章はなかなかない。

清水さんの人柄と依田さんの想いがあってこそ。

清水さんは素敵な人であった。