詩歌探究社 蓮 (SHIIKATANKYUSYA HASU)

詩歌探究社「蓮」は短歌を中心とした文学を探究してゆきます。

短歌文芸誌「ぱにあ」113号。

2023-02-25 13:48:21 | 短歌情報

短歌文芸誌「ぱにあ」113号。

編集発行代表 秋元千恵子

 

80頁を超える豪華な同人誌。

文章と短歌とのバランスがとても良い。

2021年10月の「ぱにあ」30周年記念号のとき

代表の秋元さんは89歳になったと書かれていた。

あれからもう1年半になる。

 

久保田幸枝「巷物語・百首詠―魔女の風景(時分の花)」より5首紹介する。

 

時の風に押されて私ここにあり この世のことは風次第にて

積む。括る。本はいづれも本ながら過ぎし時間の嵩とも言へて

この桜お年を召されてをりまして…‥‥説明役も若くはあらず

一人は自由で不自由なるものと気付く切なさ独りのながく

蒔かぬ種生えて地面をにぎははす時分の花をよしとすわれは

 

裏表紙に

秋元千恵子作品集『生かされて 風花』 ¥8.800.-

発行:現代出版社 発売:洪水企画

の広告。

全歌集と主要評論、短編小説、散文など秋元さんの集大成である。

 

 

 

 

 

 


「帆」33号。

2023-02-25 11:48:33 | 短歌情報

「帆」33号 

2023/2/27発行 不定期刊 頒価300円

発行人 佐藤よしみ

 

「つなぐ」30首と「琉歌(うた)の見える場所」(22)が発表されている。

佐藤よしみもまた孤高の歌人だ。

 

 

「つなぐ」より5首紹介する。

 

手つかずのまま残されし売地あり夢の骸のようなくらがり

分けあえば半分になるかかなしみはビル風ばかり渦巻いている

くしゃみひとつこらえることがうまくなる能面のごとき顔が並べり

鼻曲りの鮭を一匹打ち上げて千歳河原は冬に入りゆく

無防備にならざるを得ぬ 肉体をもつものなべてに死ののちはある

 

1首目:直喩が効く。

2首目:二人でいれば悲しみは半分になるというまやかし。

3首目:くしゃみをこらえきれなかった時の周囲の目を気にする。

4首目:鼻曲りの鮭は雄。海から川を上るころは獰猛であった。

5首目:無防備とはまさにそれ。