佐藤よしみ「帆」32号 2022/10/27発行
「移ろい」30首より紹介します。
手つかずのアイスコーヒー水滴がこらえきれずに流れはじめる
手紙には常に時候の挨拶と自愛せよとの結びの語あり
生きるとはすべてひとりの闘いと思えばぬるき晩秋の風
レコードが同じところで滞るあの日傷つけあいしところで
1首目:<水滴がこらえきれずに>と擬人法。擬人法を使うと
並みの歌なら幼稚になるがこれは次元が違う。
2首目:下句に印象的な気づき。
3首目:「人生は自分との闘いである」と大学時代の恩師に色紙を戴いたことを思い出す。
もはや慣用句的な言葉だが発する人によって言葉の重みは増す。
4首目:私はこういう世界が好きなのである。