しんぶん赤旗 2014年4月21日(月)
「一点共闘」を日本の政治を変える統一戦線に
全国革新懇懇談会 志位委員長の報告
17日に全国革新懇が開いた「『一点共闘』と政治を変える共同の発展をめざす懇談会」での日本共産党の志位和夫委員長の報告を紹介します。
(写真)報告する志位和夫委員長=17日、衆院第1議員会館
この数年来、原発、TPP、消費税、憲法、米軍基地など、国政の根幹にかかわる問題で、一致点にもとづく共同――「一点共闘」が大きな広がりをもって発展しています。
いかにして、この動きを、日本の政治を変える統一戦線へと発展させていくか。私は、「一点共闘」の運動のなかに生まれている“新しい質”をしっかりととらえ、それを発展させていくことが大切だと感じています。4点ほどお話しさせていただきたいと思います。
広大な無党派の人々が自発的に参加する新しい市民運動の流れが発展している
第一は、広大な無党派の方々が自発的、主体的に参加する新しい市民運動の流れが大きく発展しているということです。
たとえば、原発ゼロをめざす毎週金曜日の官邸前行動です。この行動は、2012年3月29日から開始され、2年を超えて継続的に取り組まれ、すでに97回を数えたということです。官邸前から始まった行動が全国に拡散するとともに、「原発をなくす会」、「首都圏反原発連合」、「さようなら原発1000万人アクション」の3者が共同する取り組みも発展し、節々で大きな原発ゼロのうねりをつくりだしています。
この運動に取り組んでいるみなさんは、「普通の人が誰でも安心して参加し、声をあげることができる場を提供する」ことに徹しているといっています。インターネットを駆使して運動を広げる創意性、「原発を日本からなくすまで続ける」という粘り強い持続性、「自分たちが再稼働を止めなくて誰が止めるのか」という深い自発的エネルギーが発揮されていることを感じます。
私は、こうした運動の形態は、日本の国民運動の歴史のなかでも初めてのものであり、画期的意義をもつものではないかと考えています。この流れは、原発ゼロだけでなく、秘密保護法反対でも重要な力を発揮しました。日本の大問題を、自分自身の課題としてとらえ、行動する、新しい市民運動の流れが広がっていることは、大きな希望だと感じています。
保守といわれてきた人々との広大な共同の発展
第二は、保守といわれてきた方々との広大な共同が発展しているということです。
「戦争をする国づくり」に反対するたたかいという点では、2004年に始まる「9条の会」の運動が、全国で7500もの地域・職場・学園の「会」の運動として広がっています。「5・3憲法集会実行委員会」による共同の取り組みが継続的に発展しています。これらの憲法擁護運動の果たすべき役割はいよいよ大きいと思います。
そういうなかで注目すべきは、共同のすそ野が従来の保守といわれている方々に大きく広がっているということです。憲法解釈の変更で集団的自衛権行使へと暴走する安倍政権に対して、自民党の元幹部、民主党の元幹部、改憲派の憲法学者、歴代の内閣法制局長官、内閣官房で自衛隊の海外派兵に直接携わっていた元担当者などの方々が、次々に反対の論陣を張っています。憲法9条改定の是非をこえて、「立憲主義を守れ」の一点で広大な共同がつくりだされつつあります。
考えてみますと、これらの方々は、私自身でいえば、国会で、あるいは政党討論会などで、丁々発止の論戦をやった相手がずらりと並んでいるのです。自衛隊の海外派兵をめぐっては、政府がつくりあげた「戦闘地域にいかない」「後方地域支援しかやらない」といった議論がいかにゴマカシかを、私たちは国会論戦でさんざん明らかにしてきましたが、そういう論戦の相手方だったわけです。論争の相手だった方々が、いま共同の相手に変わっていることは、たいへんに感慨深いものがあります。
保守との共同という点では、TPP反対のたたかいもたいへんに重要です。全国各地でJA(農協)や医師会のみなさんとの新しい共同が、発展してきました。TPPの問題は、政府が強引に交渉に参加する、そして交渉の進展のなかで、運動にはさまざまな複雑さも生まれていることは事実だと思います。
しかし、この間積み上げてきた共同の努力は、複雑さをはらみながらも必ず発展すると、私は考えています。3月30日の「もうやめよう! TPP交渉大行動」には、JA全中の代表が連帯あいさつを行いました。全国各地でJAのみなさんとの共同行動が粘り強く続いています。先日、日豪EPA交渉が、日本側の牛肉関税を大幅に下げる譲歩で「大筋合意」したことにたいして、多くの県段階でJA会長が厳しい批判の談話を出しています。この分野で広がった保守の方々との共同の流れは、曲折はあっても必ず発展すると、私は確信しています。
保守の方々との共同が、なぜここまで広がったのかという原因を考えますと、一言でいって安倍政権は、もはや保守政権とはいえない。「極右政権」というべきものになっている。さらに弱肉強食の「新自由主義」という点でも暴走のタガが外れてしまっている。そういうもとで、まじめな良心的な保守の方々は「とてもついていけない」という状況が生まれています。保守のみなさんとの新しい共同が広がっている根本には、こうした情勢の特徴があると思います。いま広がっている共同は、一過性のものでも偶然のものでもない、深い必然性をもつものだと、私は考えるものです。
労働運動でナショナルセンターの違いを超えた共同行動の広がり
第三に、労働運動でナショナルセンターの違いをこえた共同行動が開始されていることも、たいへん重要な変化だと感じています。
この分野の共同行動の弱さは、日本の統一戦線運動のなかでの大きな弱点でした。率直にいって、連合指導部の特定政党支持おしつけ、労資協調主義という弱点が壁になり、なかなか共同運動がすすまなかった。連合指導部のこの弱点はなお続いていますが、同時に、変化も起こっています。
この間の動きで注目しているのは、JAL(日本航空)や電機産業のリストラとのたたかいのなかで、全労連、全労協と、MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)の3者の共同が広がり、昨年10月には、この3者が事務局団体になって、労働法制の規制緩和に反対する持続的な共同組織である「雇用共同アクション」が結成されたことです。
さらに、昨年12月、日本弁護士連合会が主催する労働法制の規制緩和に反対する「市民大集会」が取り組まれ、ここに全労連、連合、全労協、中立系産別組織が勢ぞろいするという画期的出来事が起こりました。1989年に二つのナショナルセンターができて以来、初めての出来事だとのことです。ここにも複雑さや逆流もあるでしょうが、共同の流れが大きく発展することが強く期待されます。
いま国会では、安倍政権によって、労働者派遣法の大改悪の法案が企てられています。この法案は、「常用雇用の代替禁止」「派遣は一時的・臨時的なものに限る」という従来の大原則すら投げ捨て、「生涯ハケン」「正社員ゼロ」社会に道を開く、史上最悪の歴史的改悪ですが、この暴走にストップをかけるという点でも、労働運動のナショナルセンターの違いを超えた共同は大いに可能だし、またそれが強く求められていると考えるものです。
地方における自治体ぐるみの「一点共闘」の発展
第四に、地方に目を向けますと、自治体ぐるみで、「オール○○」という形での「一点共闘」が各地で起こっていることは、きわめて重要です。
たとえば、米軍基地問題での「オール沖縄」のたたかいです。「オール沖縄」の旗印になっているものは、昨年1月、政府に提出された歴史的な「建白書」です。この「建白書」というのは、県内41市町村の首長、議会議長、県議会議長の連名によるもので、オスプレイの配備撤回、普天間基地の閉鎖、県内移設断念という、たいへんシンプルですが力強い要求を突きつけたわけです。
この「オール沖縄」の意思を恐れて、安倍政権は卑劣な分断策動を行ってきました。裏切らせたのは、県選出の自民党国会議員、自民党県連、そして県知事でした。彼らは「オール沖縄」から脱落しました。しかし「オール沖縄」の結束がなくなったわけではない。そのことは、1月の名護市長選挙の勝利にはっきりと示されました。
沖縄のたたかいは、今年、たいへんに大事な局面を迎えると思います。知事選挙が11月にあります。この知事選挙は、辺野古に新基地をおしつけようという勢力と、「建白書」に示された「オール沖縄」の声を総結集してそれをうちやぶろうという勢力との、歴史的なたたかいになっていくと思います。必ずこのたたかいで勝利をかちとるために、大いに知恵と力をつくしていきたいと決意しています。
原発問題での「オール福島」のたたかいも、この間、重要な発展をしてきています。「オール福島」で旗印になっているのは、「福島県内の全原発10基廃炉」「国、東電にたいする全面賠償」という要求です。この要求を旗印にして、県知事、自治体首長、県・市町村議会、農協や商工会が参加する運動が発展しています。すでに福島県では、県議会と県内全59の市町村で「全基廃炉」を求める意見書や決議が採択されています。
TPP問題での「オール北海道」のたたかいも、注目すべき発展を見せています。文字通り「オール北海道」で、「TPP問題を考える道民会議」がつくられました。「道民会議」には、農林水産業団体、道経連はじめ経済諸団体、労働諸団体、医師・歯科医師・薬剤師会などがずらりと入り、それに肩を並べて民医連、新婦人、農民連なども正式の構成団体として加入しています。昨年7月には、「道民会議」が中心になり、道が後援して、「TPP交渉参加に抗議し即時脱退を求める北海道総決起大会」が開催されています。
「オール沖縄」、「オール福島」、「オール北海道」――これらは自治体ぐるみの地域共同の運動になっているわけですが、その特徴は、どれもがその矛先が、ずばり正面から安倍政権の暴走に向けられていることです。安倍政権にぐさりと突き刺さる要求を、それぞれの地域から堂々と掲げて、自治体ぐるみのたたかいを発展させている。ここが大切なところだと思います。さきほど北海道・十勝からの報告で、「十勝では安倍内閣支持率が24%まで下がった」という話がありましたが、地域ぐるみで安倍政権の足元を揺るがすようなたたかいを行っているということが、たいへん重要であります。
大阪では独特の形態での「一点共闘」の発展があります。維新の会の暴走ストップという「一点共闘」です。その出発点となったのは、2011年秋の大阪府知事選挙、大阪市長選挙のダブル選挙でした。このときに「独裁政治を許さない」という一点で、共産党も参加する「大阪市をよくする会」の予定候補が立候補を辞退し、現職の平松氏を自主的に支援して共同のたたかいに全力をあげました。勝利まではいかなかったけれども、これは重要な出発点となりました。2013年9月の堺の市長選挙では、「反維新」の「一点共闘」で見事に勝利をかちとりました。橋下市長が追いつめられるなかでの、今年3月の「出直し市長選挙」では、共産党は大義も道理もない橋下氏の辞任・再出馬を徹底批判するとともに、「一点共闘」を重視する立場から、共同候補が擁立できない場合には「独自候補」をたてないという方針で、「都構想ストップ」で他党とも足並みをそろえてがんばりました。維新の会は、安倍政権との関係でも、そのさらに右翼的な突出部隊となっていますが、その本拠地・大阪で、この異常な反動的潮流との矛盾がいよいよ広がり、「一点共闘」が発展しているのは、たいへん重要な動きです。
政党・団体・個人が、対等・平等で力をあわせてこそ
「一点共闘」の発展のなかで生まれている“新しい質”について、四つの角度からお話しいたしました。そのうえで、その全体を通して、私が大切だと感じていることを、二つほど話したいと思います。
一つは、どの分野の「一点共闘」でも、一致する要求実現のために政党・団体・個人が対等・平等の立場で共同することが当たり前になっているということです。私は、これはとても大切な変化だと思います。
私たち日本共産党の立場からしますと、こういう共同でこそ、たいへんに気持ちよく力を発揮してたたかうことができます。「共産党は遠慮してくれ」とか、「共産党は後ろの方にいてくれ」などということは、あまりなくなりました。もちろん“縁の下の力持ち”でがんばるときはあります。その時はその時でがんばりますが、多くの場合、共産党も共同の一員として公然と力をあわせていきましょうということが、当たり前になっている。
歴史的に見ても、JAなど保守の諸団体との共同ということは、戦後ずっとなかったことで、これが開始されたのはこの数年のことです。また、1980年の「社公合意」以降は、さまざまな国民運動のなかでも日本共産党排除の動きが起こり、運動が分断される時代が長く続きましたが、その壁がいまや崩れはじめている。市民運動のなかにも、共産党排除の動きが一時期ありましたが、いまでは多くの場合に克服されて、一致点で政党との共同をすすめる新しい市民運動が発展しています。
私は、一致する要求実現のために、政党・団体・個人が対等・平等で共同し、お互いに気持ちよく存分の力を発揮するというのは、統一戦線の大道を歩むものだし、そこに踏み切ってこそ国民的な力が一番深いところから発揮されるのではないかと感じています。ぜひ、こうした共同のあり方を発展させたいと願っています。
革新懇運動が「要」「懸け橋」としての役割を発揮して
いま一つは、革新懇運動の役割がいよいよ大事だということです。
いまさまざまな「一点共闘」が互いに連携し、「点」が「面」をなす共闘になりつつあります。TPP反対でがんばってきた共同の動きが、原発ゼロでも共同するという動きがあちこちで見られます。原発ゼロでがんばってきた共同の力が、秘密保護法反対のたたかいのさいにも発揮されるということもありました。
こうした「点」から「面」への共同の発展というときに、革新懇運動というのは草の根からあらゆる「一点共闘」に参加しているわけです。そういう点では、「一点共闘」が互いに連帯し、大きな国民的な共同の流れをつくりだしていくうえで、「要」の役割を革新懇運動は担っているのではないかと、私は考えています。
同時に、それぞれの「一点共闘」が掲げている要求を実現しようとすれば、自民党政治のゆがみ――「アメリカいいなり」、「財界中心」というゆがみにぶつからざるをえなくなってきます。そういう点では、暮らし、民主主義、平和の「三つの共同目標」を掲げて国民的合意をつくる独自の努力を行っている革新懇運動は、「一点共闘」を日本を変える統一戦線に発展させていく「懸け橋」として役割を担っているということも、いえるでしょう。
私は、以前、沖縄の嘉手納町にうかがって、当時の宮城篤実町長と懇談したことが強い印象に残っています。宮城町長が私に訴えたのは、「普天間基地が世界一危険だといわれるが、嘉手納基地も世界一危険なんです」「安保条約の是非に関する新たな議論を国会のなかで巻き起こしてほしい」ということでした。宮城さんは、最近、「しんぶん赤旗」に寄せてくださった談話のなかでも、「安保廃棄を言えるしっかりした国家観をもった政治家が育ってほしい」とのべています。嘉手納基地は、3700メートルの滑走路が2本もある、アジア最大の空軍基地です。この基地を動かそうと思ったら、安保条約の問題にぶつからざるをえない。安保条約をなくすことが、この基地を撤去するうえでも、早道ではないかということを痛切に実感したものでした。
もう一つ、私が住んでいる千葉県の革新懇ニュースをみせていただくと、ずらり保守の方々が次つぎと登場しています。そのなかで、県建設業協会の元副会長の中川栄吉さんは、憲法9条を守ることの大切さを語るとともに、「(革新懇の)『三つの共同目標』は党利党略でなく、まったく同感です」と言われています。この方は「自民党歴50年」ということです。そういう立場の方まで、「三つの共同目標」はまったく同感といってくださるような状況の変化も起こっています。
「一点共闘」が互いに連帯する「要」として、さらに「一点共闘」が日本を変える統一戦線へと発展していく「懸け橋」として、革新懇運動の果たすべき役割はいよいよ重要となっています。まさに情勢は、革新懇運動のがんばりどころだということを心得て、統一戦線の発展のために知恵と力を尽くす決意を申し上げて、私の発言といたします。
「一点共闘」を日本の政治を変える統一戦線に
全国革新懇懇談会 志位委員長の報告
17日に全国革新懇が開いた「『一点共闘』と政治を変える共同の発展をめざす懇談会」での日本共産党の志位和夫委員長の報告を紹介します。
(写真)報告する志位和夫委員長=17日、衆院第1議員会館
この数年来、原発、TPP、消費税、憲法、米軍基地など、国政の根幹にかかわる問題で、一致点にもとづく共同――「一点共闘」が大きな広がりをもって発展しています。
いかにして、この動きを、日本の政治を変える統一戦線へと発展させていくか。私は、「一点共闘」の運動のなかに生まれている“新しい質”をしっかりととらえ、それを発展させていくことが大切だと感じています。4点ほどお話しさせていただきたいと思います。
広大な無党派の人々が自発的に参加する新しい市民運動の流れが発展している
第一は、広大な無党派の方々が自発的、主体的に参加する新しい市民運動の流れが大きく発展しているということです。
たとえば、原発ゼロをめざす毎週金曜日の官邸前行動です。この行動は、2012年3月29日から開始され、2年を超えて継続的に取り組まれ、すでに97回を数えたということです。官邸前から始まった行動が全国に拡散するとともに、「原発をなくす会」、「首都圏反原発連合」、「さようなら原発1000万人アクション」の3者が共同する取り組みも発展し、節々で大きな原発ゼロのうねりをつくりだしています。
この運動に取り組んでいるみなさんは、「普通の人が誰でも安心して参加し、声をあげることができる場を提供する」ことに徹しているといっています。インターネットを駆使して運動を広げる創意性、「原発を日本からなくすまで続ける」という粘り強い持続性、「自分たちが再稼働を止めなくて誰が止めるのか」という深い自発的エネルギーが発揮されていることを感じます。
私は、こうした運動の形態は、日本の国民運動の歴史のなかでも初めてのものであり、画期的意義をもつものではないかと考えています。この流れは、原発ゼロだけでなく、秘密保護法反対でも重要な力を発揮しました。日本の大問題を、自分自身の課題としてとらえ、行動する、新しい市民運動の流れが広がっていることは、大きな希望だと感じています。
保守といわれてきた人々との広大な共同の発展
第二は、保守といわれてきた方々との広大な共同が発展しているということです。
「戦争をする国づくり」に反対するたたかいという点では、2004年に始まる「9条の会」の運動が、全国で7500もの地域・職場・学園の「会」の運動として広がっています。「5・3憲法集会実行委員会」による共同の取り組みが継続的に発展しています。これらの憲法擁護運動の果たすべき役割はいよいよ大きいと思います。
そういうなかで注目すべきは、共同のすそ野が従来の保守といわれている方々に大きく広がっているということです。憲法解釈の変更で集団的自衛権行使へと暴走する安倍政権に対して、自民党の元幹部、民主党の元幹部、改憲派の憲法学者、歴代の内閣法制局長官、内閣官房で自衛隊の海外派兵に直接携わっていた元担当者などの方々が、次々に反対の論陣を張っています。憲法9条改定の是非をこえて、「立憲主義を守れ」の一点で広大な共同がつくりだされつつあります。
考えてみますと、これらの方々は、私自身でいえば、国会で、あるいは政党討論会などで、丁々発止の論戦をやった相手がずらりと並んでいるのです。自衛隊の海外派兵をめぐっては、政府がつくりあげた「戦闘地域にいかない」「後方地域支援しかやらない」といった議論がいかにゴマカシかを、私たちは国会論戦でさんざん明らかにしてきましたが、そういう論戦の相手方だったわけです。論争の相手だった方々が、いま共同の相手に変わっていることは、たいへんに感慨深いものがあります。
保守との共同という点では、TPP反対のたたかいもたいへんに重要です。全国各地でJA(農協)や医師会のみなさんとの新しい共同が、発展してきました。TPPの問題は、政府が強引に交渉に参加する、そして交渉の進展のなかで、運動にはさまざまな複雑さも生まれていることは事実だと思います。
しかし、この間積み上げてきた共同の努力は、複雑さをはらみながらも必ず発展すると、私は考えています。3月30日の「もうやめよう! TPP交渉大行動」には、JA全中の代表が連帯あいさつを行いました。全国各地でJAのみなさんとの共同行動が粘り強く続いています。先日、日豪EPA交渉が、日本側の牛肉関税を大幅に下げる譲歩で「大筋合意」したことにたいして、多くの県段階でJA会長が厳しい批判の談話を出しています。この分野で広がった保守の方々との共同の流れは、曲折はあっても必ず発展すると、私は確信しています。
保守の方々との共同が、なぜここまで広がったのかという原因を考えますと、一言でいって安倍政権は、もはや保守政権とはいえない。「極右政権」というべきものになっている。さらに弱肉強食の「新自由主義」という点でも暴走のタガが外れてしまっている。そういうもとで、まじめな良心的な保守の方々は「とてもついていけない」という状況が生まれています。保守のみなさんとの新しい共同が広がっている根本には、こうした情勢の特徴があると思います。いま広がっている共同は、一過性のものでも偶然のものでもない、深い必然性をもつものだと、私は考えるものです。
労働運動でナショナルセンターの違いを超えた共同行動の広がり
第三に、労働運動でナショナルセンターの違いをこえた共同行動が開始されていることも、たいへん重要な変化だと感じています。
この分野の共同行動の弱さは、日本の統一戦線運動のなかでの大きな弱点でした。率直にいって、連合指導部の特定政党支持おしつけ、労資協調主義という弱点が壁になり、なかなか共同運動がすすまなかった。連合指導部のこの弱点はなお続いていますが、同時に、変化も起こっています。
この間の動きで注目しているのは、JAL(日本航空)や電機産業のリストラとのたたかいのなかで、全労連、全労協と、MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)の3者の共同が広がり、昨年10月には、この3者が事務局団体になって、労働法制の規制緩和に反対する持続的な共同組織である「雇用共同アクション」が結成されたことです。
さらに、昨年12月、日本弁護士連合会が主催する労働法制の規制緩和に反対する「市民大集会」が取り組まれ、ここに全労連、連合、全労協、中立系産別組織が勢ぞろいするという画期的出来事が起こりました。1989年に二つのナショナルセンターができて以来、初めての出来事だとのことです。ここにも複雑さや逆流もあるでしょうが、共同の流れが大きく発展することが強く期待されます。
いま国会では、安倍政権によって、労働者派遣法の大改悪の法案が企てられています。この法案は、「常用雇用の代替禁止」「派遣は一時的・臨時的なものに限る」という従来の大原則すら投げ捨て、「生涯ハケン」「正社員ゼロ」社会に道を開く、史上最悪の歴史的改悪ですが、この暴走にストップをかけるという点でも、労働運動のナショナルセンターの違いを超えた共同は大いに可能だし、またそれが強く求められていると考えるものです。
地方における自治体ぐるみの「一点共闘」の発展
第四に、地方に目を向けますと、自治体ぐるみで、「オール○○」という形での「一点共闘」が各地で起こっていることは、きわめて重要です。
たとえば、米軍基地問題での「オール沖縄」のたたかいです。「オール沖縄」の旗印になっているものは、昨年1月、政府に提出された歴史的な「建白書」です。この「建白書」というのは、県内41市町村の首長、議会議長、県議会議長の連名によるもので、オスプレイの配備撤回、普天間基地の閉鎖、県内移設断念という、たいへんシンプルですが力強い要求を突きつけたわけです。
この「オール沖縄」の意思を恐れて、安倍政権は卑劣な分断策動を行ってきました。裏切らせたのは、県選出の自民党国会議員、自民党県連、そして県知事でした。彼らは「オール沖縄」から脱落しました。しかし「オール沖縄」の結束がなくなったわけではない。そのことは、1月の名護市長選挙の勝利にはっきりと示されました。
沖縄のたたかいは、今年、たいへんに大事な局面を迎えると思います。知事選挙が11月にあります。この知事選挙は、辺野古に新基地をおしつけようという勢力と、「建白書」に示された「オール沖縄」の声を総結集してそれをうちやぶろうという勢力との、歴史的なたたかいになっていくと思います。必ずこのたたかいで勝利をかちとるために、大いに知恵と力をつくしていきたいと決意しています。
原発問題での「オール福島」のたたかいも、この間、重要な発展をしてきています。「オール福島」で旗印になっているのは、「福島県内の全原発10基廃炉」「国、東電にたいする全面賠償」という要求です。この要求を旗印にして、県知事、自治体首長、県・市町村議会、農協や商工会が参加する運動が発展しています。すでに福島県では、県議会と県内全59の市町村で「全基廃炉」を求める意見書や決議が採択されています。
TPP問題での「オール北海道」のたたかいも、注目すべき発展を見せています。文字通り「オール北海道」で、「TPP問題を考える道民会議」がつくられました。「道民会議」には、農林水産業団体、道経連はじめ経済諸団体、労働諸団体、医師・歯科医師・薬剤師会などがずらりと入り、それに肩を並べて民医連、新婦人、農民連なども正式の構成団体として加入しています。昨年7月には、「道民会議」が中心になり、道が後援して、「TPP交渉参加に抗議し即時脱退を求める北海道総決起大会」が開催されています。
「オール沖縄」、「オール福島」、「オール北海道」――これらは自治体ぐるみの地域共同の運動になっているわけですが、その特徴は、どれもがその矛先が、ずばり正面から安倍政権の暴走に向けられていることです。安倍政権にぐさりと突き刺さる要求を、それぞれの地域から堂々と掲げて、自治体ぐるみのたたかいを発展させている。ここが大切なところだと思います。さきほど北海道・十勝からの報告で、「十勝では安倍内閣支持率が24%まで下がった」という話がありましたが、地域ぐるみで安倍政権の足元を揺るがすようなたたかいを行っているということが、たいへん重要であります。
大阪では独特の形態での「一点共闘」の発展があります。維新の会の暴走ストップという「一点共闘」です。その出発点となったのは、2011年秋の大阪府知事選挙、大阪市長選挙のダブル選挙でした。このときに「独裁政治を許さない」という一点で、共産党も参加する「大阪市をよくする会」の予定候補が立候補を辞退し、現職の平松氏を自主的に支援して共同のたたかいに全力をあげました。勝利まではいかなかったけれども、これは重要な出発点となりました。2013年9月の堺の市長選挙では、「反維新」の「一点共闘」で見事に勝利をかちとりました。橋下市長が追いつめられるなかでの、今年3月の「出直し市長選挙」では、共産党は大義も道理もない橋下氏の辞任・再出馬を徹底批判するとともに、「一点共闘」を重視する立場から、共同候補が擁立できない場合には「独自候補」をたてないという方針で、「都構想ストップ」で他党とも足並みをそろえてがんばりました。維新の会は、安倍政権との関係でも、そのさらに右翼的な突出部隊となっていますが、その本拠地・大阪で、この異常な反動的潮流との矛盾がいよいよ広がり、「一点共闘」が発展しているのは、たいへん重要な動きです。
政党・団体・個人が、対等・平等で力をあわせてこそ
「一点共闘」の発展のなかで生まれている“新しい質”について、四つの角度からお話しいたしました。そのうえで、その全体を通して、私が大切だと感じていることを、二つほど話したいと思います。
一つは、どの分野の「一点共闘」でも、一致する要求実現のために政党・団体・個人が対等・平等の立場で共同することが当たり前になっているということです。私は、これはとても大切な変化だと思います。
私たち日本共産党の立場からしますと、こういう共同でこそ、たいへんに気持ちよく力を発揮してたたかうことができます。「共産党は遠慮してくれ」とか、「共産党は後ろの方にいてくれ」などということは、あまりなくなりました。もちろん“縁の下の力持ち”でがんばるときはあります。その時はその時でがんばりますが、多くの場合、共産党も共同の一員として公然と力をあわせていきましょうということが、当たり前になっている。
歴史的に見ても、JAなど保守の諸団体との共同ということは、戦後ずっとなかったことで、これが開始されたのはこの数年のことです。また、1980年の「社公合意」以降は、さまざまな国民運動のなかでも日本共産党排除の動きが起こり、運動が分断される時代が長く続きましたが、その壁がいまや崩れはじめている。市民運動のなかにも、共産党排除の動きが一時期ありましたが、いまでは多くの場合に克服されて、一致点で政党との共同をすすめる新しい市民運動が発展しています。
私は、一致する要求実現のために、政党・団体・個人が対等・平等で共同し、お互いに気持ちよく存分の力を発揮するというのは、統一戦線の大道を歩むものだし、そこに踏み切ってこそ国民的な力が一番深いところから発揮されるのではないかと感じています。ぜひ、こうした共同のあり方を発展させたいと願っています。
革新懇運動が「要」「懸け橋」としての役割を発揮して
いま一つは、革新懇運動の役割がいよいよ大事だということです。
いまさまざまな「一点共闘」が互いに連携し、「点」が「面」をなす共闘になりつつあります。TPP反対でがんばってきた共同の動きが、原発ゼロでも共同するという動きがあちこちで見られます。原発ゼロでがんばってきた共同の力が、秘密保護法反対のたたかいのさいにも発揮されるということもありました。
こうした「点」から「面」への共同の発展というときに、革新懇運動というのは草の根からあらゆる「一点共闘」に参加しているわけです。そういう点では、「一点共闘」が互いに連帯し、大きな国民的な共同の流れをつくりだしていくうえで、「要」の役割を革新懇運動は担っているのではないかと、私は考えています。
同時に、それぞれの「一点共闘」が掲げている要求を実現しようとすれば、自民党政治のゆがみ――「アメリカいいなり」、「財界中心」というゆがみにぶつからざるをえなくなってきます。そういう点では、暮らし、民主主義、平和の「三つの共同目標」を掲げて国民的合意をつくる独自の努力を行っている革新懇運動は、「一点共闘」を日本を変える統一戦線に発展させていく「懸け橋」として役割を担っているということも、いえるでしょう。
私は、以前、沖縄の嘉手納町にうかがって、当時の宮城篤実町長と懇談したことが強い印象に残っています。宮城町長が私に訴えたのは、「普天間基地が世界一危険だといわれるが、嘉手納基地も世界一危険なんです」「安保条約の是非に関する新たな議論を国会のなかで巻き起こしてほしい」ということでした。宮城さんは、最近、「しんぶん赤旗」に寄せてくださった談話のなかでも、「安保廃棄を言えるしっかりした国家観をもった政治家が育ってほしい」とのべています。嘉手納基地は、3700メートルの滑走路が2本もある、アジア最大の空軍基地です。この基地を動かそうと思ったら、安保条約の問題にぶつからざるをえない。安保条約をなくすことが、この基地を撤去するうえでも、早道ではないかということを痛切に実感したものでした。
もう一つ、私が住んでいる千葉県の革新懇ニュースをみせていただくと、ずらり保守の方々が次つぎと登場しています。そのなかで、県建設業協会の元副会長の中川栄吉さんは、憲法9条を守ることの大切さを語るとともに、「(革新懇の)『三つの共同目標』は党利党略でなく、まったく同感です」と言われています。この方は「自民党歴50年」ということです。そういう立場の方まで、「三つの共同目標」はまったく同感といってくださるような状況の変化も起こっています。
「一点共闘」が互いに連帯する「要」として、さらに「一点共闘」が日本を変える統一戦線へと発展していく「懸け橋」として、革新懇運動の果たすべき役割はいよいよ重要となっています。まさに情勢は、革新懇運動のがんばりどころだということを心得て、統一戦線の発展のために知恵と力を尽くす決意を申し上げて、私の発言といたします。