しんぶん赤旗 2015年2月18日(水)
志位委員長の代表質問 衆院本会議志
日本共産党の志位和夫委員長が17日の衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。
ISを名乗る過激武装組織への対応について
私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。
この間、ISを名乗る過激武装組織によって、2人の日本人の命が奪われるという事態が起こりました。残虐で卑劣なテロ行為を断固糾弾するとともに、ご家族に心からの哀悼の意を表します。
国連中心に、国際法、国際人道法を厳格に守った行動を
ISへの対応で、いま求められているのは、国際社会が一致結束して、一連の国連安保理決議に基づき、外国人戦闘員の参加を阻止し、資金源を断ち、テロ組織を武装解除と解体に追い込んでいくことであります。
この点で、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が「あらゆる対テロ行動は、国際人権法・人道法と合致したものでなければならない」と述べていることは重要です。相手が最も野蛮で無法な組織であるからこそ、国際社会の側が、国連中心に、国際法、国際人道法を厳格に守って行動することが何よりも重要であり、そういう態度を堅持することこそテロ組織を追い詰めていく一番の力になると考えます。総理の見解を求めます。
日本外交の対応について――三つの問題点を問う
こうした悲劇を繰り返さないためにも、この間の日本外交の対応について、冷静な検証が必要です。私は、三つの問題点を指摘しなければなりません。
第一は、総理が、「テロに屈する」の一言で冷静な検証を拒否する態度をとっていることです。国会質疑で、わが党議員が、総理の中東歴訪での言動を指摘し、「そういう言動をとれば、2人の日本人に危険が及ぶかもしれないという認識があったのか」とただしました。総理は、質問に答えず、“そういう質問をすること自体が、テロに屈することになる”と答弁しました。「テロに屈する」の一言で、異論を封じ、冷静な検証を拒否するという態度でいいのか。私は、こうした態度をあらためることを強く求めます。2人の日本人が拘束されてから今日にいたるまでの政府の対応について、国民に納得のいく説明を行うとともに、検証にとって必要不可欠な情報を公開することを強く求めるものです。
第二に、総理は、米軍が行っているISへの空爆への支援について、「政策的にはやらない」としながら「憲法上は可能だ」と述べました。さらに、日本人人質事件と絡めて、「このように海外で邦人が危害に遭った時、その邦人を救出するため、自衛隊が持てる能力を十分に生かすことはできない。そうした法制も含めて法整備を進める」と述べました。しかし、そもそも「救出作戦」とは、相手を制圧する軍事作戦です。それは人質の命も自衛隊員の命も危険にさらすことになります。自衛隊がそうした作戦を行うことは、憲法違反の武力行使にあたることは明白ではありませんか。今回の事件を機に、「海外で戦争する国」づくりを進めるなどということは、断じて許されるものではありません。
第三に、ISのような過激武装組織がどうして生まれたか。そのきっかけとなったのが、2001年、米国が開始したアフガニスタン報復戦争でした。「テロへの対抗」を名目にした戦争は、テロを根絶するどころか、その温床を広げる結果となりました。さらに2003年のイラク侵略戦争は、「地獄の門」を開き、泥沼の内戦を引き起こしました。これらの戦争が引き起こした混乱のなかから、モンスターのようなテロ組織が生まれ、勢力を拡大していったのです。それは、マレーシアのナジブ首相が、「1人の悪魔を攻撃して、より大きな悪魔が現れた」と批判している通りであります。戦争でテロはなくせない、法と理性にもとづく世界の一致結束した行動によってこそテロは根絶できる、これこそ真の歴史的教訓ではないでしょうか。アフガン・イラク戦争に、日本政府は支持を与え、自衛隊を派遣しました。世界から無法なテロを一掃するためにも、アフガン・イラク戦争と日本政府の対応についての真摯(しんし)な歴史的検証を行うべきではないでしょうか。
以上、3点について、総理の見解を求めるものであります。
暮らしと経済――経済政策の三つの転換を提起する
暮らしと経済の問題について質問します。
安倍政権の経済政策の根本は、「大企業がもうかれば、その恩恵がいずれ庶民の暮らしに回る」というものです。しかし現実はどうでしょう。円安と株高によって、大企業は空前のもうけをあげ、内部留保は285兆円に達しました。所得が10億円を超える富裕層は1年間で2・2倍に急増しました。しかし、働く人の実質賃金は18カ月連続マイナス、年収200万円以下の「働く貧困層」といわれる方々は史上最多の1120万人に達しました。総理、あなたの経済政策の根本が誤りだったこと、もたらしたものは格差拡大だけだったことは、事実が証明しているではありませんか。答弁を求めます。
消費税10%は中止し、破たんした「消費税頼みの道」からの転換を
日本共産党は、三つの点で、経済政策の抜本的転換を提起するものです。
第一は、消費税増税路線からの転換であります。
日本経済は、昨年4月の消費税増税によって深刻な危機に陥っています。経済の6割を占める個人消費は昨年1年間、過去20年間で最大の落ち込みとなりました。「とても暮らしが成り立たない」「商売が立ち行かない」という怨嗟(えんさ)の声が広がっています。
内閣府が1月に発表した「ミニ経済白書」は、「消費税率引き上げによる物価上昇は実質所得の減少をもたらし、将来にわたって個人消費を抑制する効果を持つ」と認めました。総理、今日の景気悪化の原因が消費税増税にあること、増税による個人消費の抑制は一時のものではなく長期にわたるという認識はありますか。
総理は、10%への増税を2年後に必ず実施するとしています。しかし消費税増税は、必ず景気を壊します。1997年の5%への増税は大不況への引き金を引きました。昨年の8%への増税も景気悪化の引き金を引きました。2度も失敗しているのに、3度目で景気が悪くならないとどうして言えるのですか。はっきりとした答弁を求めます。
日本共産党は、「消費税に頼らない別の道」として、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革で財源をつくる、大企業の内部留保を活用し、国民の所得を増やす経済改革で税収を増やす――この二つの政策をあわせて実施することで、社会保障充実と財政再建のための財源を確保することを提案しています。消費税10%は中止し、破たんした「消費税頼みの道」から転換すべきではありませんか。答弁を求めます。
「介護難民」を激増させる報酬削減――社会保障費の自然増削減路線からの転換を
第二は、社会保障費の自然増削減路線からの転換であります。
「社会保障のため」といって消費税増税を強行しながら、来年度政府予算案は、社会保障費の自然増削減路線を復活させ、介護、年金、医療、生活保護など、あらゆる分野で社会保障の切り捨てを進めるものとなっています。
政府予算案には、介護報酬の2・27%引き下げ、過去最大規模の削減が盛り込まれています。いま介護の現場は、深刻な人手不足にあえいでいます。東京都高齢者福祉施設協議会が昨年12月に行った調査によると、都内の約半数の特養ホームで、職員が定数に満たない状況です。低賃金のために職員が集まらない。職員が足らないため、「部屋は空いているが新規入居者は受け入れない」「施設の一部を閉鎖している」「ショートステイの受け入れをやめた」などの事態が起こっています。
介護報酬引き下げが、現場の危機に拍車をかけることは明瞭ではありませんか。政府は、介護職員に対して処遇改善加算をするといいます。しかし、加算も含めた事業者への報酬全体を大幅に引き下げて、どうして介護職員の待遇改善ができますか。「介護難民」を激増させる介護報酬削減は中止すべきです。
来年度予算案は、福祉の費用を削りに削りながら、空前のもうけをあげている大企業に、2年間で1・6兆円もの大減税をばらまこうとしています。しかし、いくら大企業に減税しても、賃上げや設備投資に回らず、内部留保が積みあがるだけで何の効果もない。これはこの間の経過でも明らかではありませんか。社会保障費の自然増削減路線は中止し、大企業にばらまくカネがあるならば社会保障にこそ使うべきです。答弁を求めます。
雇用のルール破壊を許さず、人間らしく働けるルールを
第三は、雇用のルール破壊を許さず、人間らしく働けるルールをつくることです。
総理は、日本を「世界で一番企業が活躍しやすい国」にする、その邪魔となる「岩盤規制」を打破するとして、雇用に関する二つの重大法案――労働者派遣法改悪法案、「残業代ゼロ法案」を提出しようとしています。
しかし、日本の雇用のルールの現状は「岩盤」というべきものでしょうか。派遣・パートなど非正規雇用が、全体の4割近くにまで広がっています。異常な長時間労働、「サービス残業」、「ブラック企業」が横行し、「過労死・過労自殺」がこの15年間で4倍近くに増加しています。最低賃金があまりにも低く、懸命に働いても貧困から抜け出せません。「岩盤」どころか、働く人を守るルールがあまりにない。ずぶずぶの「軟弱地盤」というのが現状ではありませんか。
労働者派遣法改悪法案は、同じ仕事での派遣受け入れは「原則1年、最大3年」という期間制限を撤廃し、3年ごとに派遣労働者を入れ替えさえすれば、同じ仕事で無期限に派遣労働者を使い続けることができるようにするものです。こんな大改悪がやられれば、正社員から派遣への大量の置き換えが進むことは明瞭ではありませんか。
「残業代ゼロ法案」は、一定の年収を超えた労働者には、時間外労働協定――残業の上限を決める労使の協定を結ばなくてもよいし、残業代を払わなくてもよいとするものです。しかし、だいたい現状はどうか。経団連、経済同友会の役員企業の時間外労働協定を調べたところ、35社中28社で「過労死ライン」とされる「月80時間以上」の時間外労働協定を結んでいます。この現状をどう考えますか。ただでさえ「過労死ライン」を超える異常な長時間労働を強制している財界・大企業に、こんな法律を与えたら、「過労死」がいよいよ蔓延(まんえん)することは火を見るより明らかではありませんか。
安倍政権が提出しようとしている雇用に関する二つの重大法案は、ただでさえずぶずぶの「軟弱地盤」の現状を、「底なし沼」へと悪化させる歴史的大改悪です。国会提出を断念することを強く求めます。
日本共産党は、次の3点で人間らしく働ける雇用のルールをつくることを提案します。
一つは、派遣労働を臨時的・一時的業務に厳しく限定する派遣法抜本改正を行い、均等待遇のルールをつくり、非正規から正社員への流れをつくることです。
二つは、「サービス残業」、「ブラック企業」をなくし、「残業は月45時間まで」と定めた「大臣告示」を法律化し、異常な長時間労働をただすことです。
三つは、中小企業支援の抜本的強化と一体に最低賃金を時給千円以上に引き上げるとともに、地域間格差を是正し、全国一律最低賃金制を確立することです。
総理の答弁を求めます。
集団的自衛権を問う――「閣議決定」の撤回、法改悪の中止を求める
集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を具体化する法整備に関わって、2点にしぼって質問します。
第一は、米軍等を自衛隊が支援する「恒久法」をつくると伝えられていることについてです。わが党の国会論戦をつうじて、アフガン・イラク戦争のような戦争をアメリカが引き起こしたさいに、自衛隊が従来の「戦闘地域」までいって軍事支援を行うことになる。相手から攻撃されたら「武器の使用をする」ことになる。そのことを総理は認めました。これを具体化するのが「恒久法」ではありませんか。米軍と自衛隊が肩を並べて戦争をするための法整備ではありませんか。
第二は、総理が、国会質疑の中で、米国等が先制攻撃を行った場合でも集団的自衛権の発動はありうるのかと問われて、「(日本が)武力行使をするのは新3要件を満たすか否かの中で判断する」と述べ、発動を否定しなかったことについてです。先制攻撃は国際法違反の侵略行為です。そして、米国が、ベトナム戦争、イラク戦争など先制攻撃を繰り返してきたことはまぎれもない歴史的事実です。米国が違法な先制攻撃を行った場合でも、「新3要件」を満たしていると判断すれば集団的自衛権を発動するというのですか。そうであるなら集団的自衛でなく集団的侵略そのものではありませんか。明確な答弁を求めます。
日本共産党は、憲法違反の「閣議決定」を撤回し、「閣議決定」を具体化する一切の法改悪の作業を即時中止することを強く求めるものです。
沖縄米軍新基地建設――選挙結果を「真摯に受け止める」なら断念せよ
沖縄・名護市辺野古への米軍新基地建設について質問します。
昨年、沖縄県民は、県知事選挙、総選挙で、新基地建設反対の「オール沖縄」の意思を、疑いようのない明確さで示しました。
総理は、選挙結果を「真摯に受け止める」と述べました。しかし、やっていることはどうでしょう。翁長知事との対話を拒否する。沖縄振興予算を一方的に減額する。住民の抗議行動を暴力的に排除して海上作業を再開する。県民がどんな審判を下そうと、「聞く耳」をもたず、新基地建設につきすすむ。こんな野蛮な強権政治は、民主主義の国では絶対に許されないと考えますが、いかがですか。
総理は「普天間移設は負担軽減になる」と繰り返しています。しかし、辺野古の米軍新基地は、普天間基地の単なる「移設」などという生やさしいものではありません。
第一に、滑走路は、普天間基地では1本ですが、新基地では1800メートルの滑走路が2本になります。
第二に、新基地には、300メートル近い岸壁が建設され、4万トンを超える強襲揚陸艦が接岸できるようになり、空と海からの海兵隊の一大出撃拠点が造られます。
第三に、新基地には、普天間基地にはない広大な弾薬搭載エリアが建設されます。
第四に、新基地は、キャンプ・シュワブや辺野古弾薬庫と一体運用され、その面積は普天間基地の約5倍にものぼります。
第五に、さらに、キャンプ・ハンセン、高江など北部訓練場、伊江島飛行場などとも連動して、海兵隊の基地機能は飛躍的に強化することになります。
そして第六は、耐用年数は200年。22世紀どころか23世紀まで沖縄を基地の鎖でしばりつけることになります。
総理、このどこが「負担軽減」ですか。老朽化した普天間基地に代えて、大幅に機能強化され、半永久的に使用できる最新鋭の巨大基地を建設する――これがいま進められていることの正体ではありませんか。
総理が、選挙結果を「真摯に受け止める」というなら、新基地建設をただちに断念すべきです。普天間基地の無条件撤去を求めて米国政府と交渉すべきです。答弁を求めます。
戦後70年――「和解と友好」のための五つの基本姿勢を提唱する
今年は、戦後70年の節目の年です。
総理が発表するとしている「戦後70年談話」に、内外から懸念と批判が広がっています。総理は、「村山談話」について「全体として引き継ぐ」と言います。しかし、1月25日のNHKインタビューで、その核心的内容――「植民地支配と侵略」への「痛切な反省と心からのお詫(わ)び」という「キーワード」を引き継ぐのかと問われ、最後まで引き継ぐとは言わず、さらに「キーワードを同じように使うことではないのか」と問われて、「そういうことではない」と明言しました。
これは「村山談話」の一番の核心的内容をあいまいにし、事実上否定する姿勢をあからさまにしたきわめて重大な発言です。このような立場に立った「談話」ならば、百害あって一利なしと言わなければなりません。
日本共産党は、この節目の年が、日本とアジア諸国との「和解と友好」に向かう年となるために、日本の政治がとるべき五つの基本姿勢を提唱するものです。
第一は、「村山談話」「河野談話」の核心的内容を継承し、談話の精神にふさわしい行動をとり、談話を否定する動きに対してきっぱりと反論することです。
第二は、日本軍「慰安婦」問題について、被害者への謝罪と賠償など、人間としての尊厳が回復される解決に踏み出すことです。
第三は、国政の場にある政治家が靖国神社を参拝することは、侵略戦争肯定の意思表示を意味するものであり、少なくとも首相や閣僚による靖国参拝は行わないことを日本の政治のルールとして確立することです。
第四は、民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、立法措置を含めて、政治が断固たる立場に立つことです。
第五は、「村山談話」「河野談話」で政府が表明してきた過去の誤りへの反省の立場を、学校の教科書に誠実かつ真剣に反映させる努力をつくすことです。
以上について総理の見解を問うものです。
日本共産党は、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いてきた党として、戦後70年の今年が、日本とアジア諸国との心通う友好に向かう年になるように、全力をあげて奮闘する決意を表明して質問を終わります。
志位委員長の代表質問 衆院本会議志
日本共産党の志位和夫委員長が17日の衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。
ISを名乗る過激武装組織への対応について
私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。
この間、ISを名乗る過激武装組織によって、2人の日本人の命が奪われるという事態が起こりました。残虐で卑劣なテロ行為を断固糾弾するとともに、ご家族に心からの哀悼の意を表します。
国連中心に、国際法、国際人道法を厳格に守った行動を
ISへの対応で、いま求められているのは、国際社会が一致結束して、一連の国連安保理決議に基づき、外国人戦闘員の参加を阻止し、資金源を断ち、テロ組織を武装解除と解体に追い込んでいくことであります。
この点で、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が「あらゆる対テロ行動は、国際人権法・人道法と合致したものでなければならない」と述べていることは重要です。相手が最も野蛮で無法な組織であるからこそ、国際社会の側が、国連中心に、国際法、国際人道法を厳格に守って行動することが何よりも重要であり、そういう態度を堅持することこそテロ組織を追い詰めていく一番の力になると考えます。総理の見解を求めます。
日本外交の対応について――三つの問題点を問う
こうした悲劇を繰り返さないためにも、この間の日本外交の対応について、冷静な検証が必要です。私は、三つの問題点を指摘しなければなりません。
第一は、総理が、「テロに屈する」の一言で冷静な検証を拒否する態度をとっていることです。国会質疑で、わが党議員が、総理の中東歴訪での言動を指摘し、「そういう言動をとれば、2人の日本人に危険が及ぶかもしれないという認識があったのか」とただしました。総理は、質問に答えず、“そういう質問をすること自体が、テロに屈することになる”と答弁しました。「テロに屈する」の一言で、異論を封じ、冷静な検証を拒否するという態度でいいのか。私は、こうした態度をあらためることを強く求めます。2人の日本人が拘束されてから今日にいたるまでの政府の対応について、国民に納得のいく説明を行うとともに、検証にとって必要不可欠な情報を公開することを強く求めるものです。
第二に、総理は、米軍が行っているISへの空爆への支援について、「政策的にはやらない」としながら「憲法上は可能だ」と述べました。さらに、日本人人質事件と絡めて、「このように海外で邦人が危害に遭った時、その邦人を救出するため、自衛隊が持てる能力を十分に生かすことはできない。そうした法制も含めて法整備を進める」と述べました。しかし、そもそも「救出作戦」とは、相手を制圧する軍事作戦です。それは人質の命も自衛隊員の命も危険にさらすことになります。自衛隊がそうした作戦を行うことは、憲法違反の武力行使にあたることは明白ではありませんか。今回の事件を機に、「海外で戦争する国」づくりを進めるなどということは、断じて許されるものではありません。
第三に、ISのような過激武装組織がどうして生まれたか。そのきっかけとなったのが、2001年、米国が開始したアフガニスタン報復戦争でした。「テロへの対抗」を名目にした戦争は、テロを根絶するどころか、その温床を広げる結果となりました。さらに2003年のイラク侵略戦争は、「地獄の門」を開き、泥沼の内戦を引き起こしました。これらの戦争が引き起こした混乱のなかから、モンスターのようなテロ組織が生まれ、勢力を拡大していったのです。それは、マレーシアのナジブ首相が、「1人の悪魔を攻撃して、より大きな悪魔が現れた」と批判している通りであります。戦争でテロはなくせない、法と理性にもとづく世界の一致結束した行動によってこそテロは根絶できる、これこそ真の歴史的教訓ではないでしょうか。アフガン・イラク戦争に、日本政府は支持を与え、自衛隊を派遣しました。世界から無法なテロを一掃するためにも、アフガン・イラク戦争と日本政府の対応についての真摯(しんし)な歴史的検証を行うべきではないでしょうか。
以上、3点について、総理の見解を求めるものであります。
暮らしと経済――経済政策の三つの転換を提起する
暮らしと経済の問題について質問します。
安倍政権の経済政策の根本は、「大企業がもうかれば、その恩恵がいずれ庶民の暮らしに回る」というものです。しかし現実はどうでしょう。円安と株高によって、大企業は空前のもうけをあげ、内部留保は285兆円に達しました。所得が10億円を超える富裕層は1年間で2・2倍に急増しました。しかし、働く人の実質賃金は18カ月連続マイナス、年収200万円以下の「働く貧困層」といわれる方々は史上最多の1120万人に達しました。総理、あなたの経済政策の根本が誤りだったこと、もたらしたものは格差拡大だけだったことは、事実が証明しているではありませんか。答弁を求めます。
消費税10%は中止し、破たんした「消費税頼みの道」からの転換を
日本共産党は、三つの点で、経済政策の抜本的転換を提起するものです。
第一は、消費税増税路線からの転換であります。
日本経済は、昨年4月の消費税増税によって深刻な危機に陥っています。経済の6割を占める個人消費は昨年1年間、過去20年間で最大の落ち込みとなりました。「とても暮らしが成り立たない」「商売が立ち行かない」という怨嗟(えんさ)の声が広がっています。
内閣府が1月に発表した「ミニ経済白書」は、「消費税率引き上げによる物価上昇は実質所得の減少をもたらし、将来にわたって個人消費を抑制する効果を持つ」と認めました。総理、今日の景気悪化の原因が消費税増税にあること、増税による個人消費の抑制は一時のものではなく長期にわたるという認識はありますか。
総理は、10%への増税を2年後に必ず実施するとしています。しかし消費税増税は、必ず景気を壊します。1997年の5%への増税は大不況への引き金を引きました。昨年の8%への増税も景気悪化の引き金を引きました。2度も失敗しているのに、3度目で景気が悪くならないとどうして言えるのですか。はっきりとした答弁を求めます。
日本共産党は、「消費税に頼らない別の道」として、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革で財源をつくる、大企業の内部留保を活用し、国民の所得を増やす経済改革で税収を増やす――この二つの政策をあわせて実施することで、社会保障充実と財政再建のための財源を確保することを提案しています。消費税10%は中止し、破たんした「消費税頼みの道」から転換すべきではありませんか。答弁を求めます。
「介護難民」を激増させる報酬削減――社会保障費の自然増削減路線からの転換を
第二は、社会保障費の自然増削減路線からの転換であります。
「社会保障のため」といって消費税増税を強行しながら、来年度政府予算案は、社会保障費の自然増削減路線を復活させ、介護、年金、医療、生活保護など、あらゆる分野で社会保障の切り捨てを進めるものとなっています。
政府予算案には、介護報酬の2・27%引き下げ、過去最大規模の削減が盛り込まれています。いま介護の現場は、深刻な人手不足にあえいでいます。東京都高齢者福祉施設協議会が昨年12月に行った調査によると、都内の約半数の特養ホームで、職員が定数に満たない状況です。低賃金のために職員が集まらない。職員が足らないため、「部屋は空いているが新規入居者は受け入れない」「施設の一部を閉鎖している」「ショートステイの受け入れをやめた」などの事態が起こっています。
介護報酬引き下げが、現場の危機に拍車をかけることは明瞭ではありませんか。政府は、介護職員に対して処遇改善加算をするといいます。しかし、加算も含めた事業者への報酬全体を大幅に引き下げて、どうして介護職員の待遇改善ができますか。「介護難民」を激増させる介護報酬削減は中止すべきです。
来年度予算案は、福祉の費用を削りに削りながら、空前のもうけをあげている大企業に、2年間で1・6兆円もの大減税をばらまこうとしています。しかし、いくら大企業に減税しても、賃上げや設備投資に回らず、内部留保が積みあがるだけで何の効果もない。これはこの間の経過でも明らかではありませんか。社会保障費の自然増削減路線は中止し、大企業にばらまくカネがあるならば社会保障にこそ使うべきです。答弁を求めます。
雇用のルール破壊を許さず、人間らしく働けるルールを
第三は、雇用のルール破壊を許さず、人間らしく働けるルールをつくることです。
総理は、日本を「世界で一番企業が活躍しやすい国」にする、その邪魔となる「岩盤規制」を打破するとして、雇用に関する二つの重大法案――労働者派遣法改悪法案、「残業代ゼロ法案」を提出しようとしています。
しかし、日本の雇用のルールの現状は「岩盤」というべきものでしょうか。派遣・パートなど非正規雇用が、全体の4割近くにまで広がっています。異常な長時間労働、「サービス残業」、「ブラック企業」が横行し、「過労死・過労自殺」がこの15年間で4倍近くに増加しています。最低賃金があまりにも低く、懸命に働いても貧困から抜け出せません。「岩盤」どころか、働く人を守るルールがあまりにない。ずぶずぶの「軟弱地盤」というのが現状ではありませんか。
労働者派遣法改悪法案は、同じ仕事での派遣受け入れは「原則1年、最大3年」という期間制限を撤廃し、3年ごとに派遣労働者を入れ替えさえすれば、同じ仕事で無期限に派遣労働者を使い続けることができるようにするものです。こんな大改悪がやられれば、正社員から派遣への大量の置き換えが進むことは明瞭ではありませんか。
「残業代ゼロ法案」は、一定の年収を超えた労働者には、時間外労働協定――残業の上限を決める労使の協定を結ばなくてもよいし、残業代を払わなくてもよいとするものです。しかし、だいたい現状はどうか。経団連、経済同友会の役員企業の時間外労働協定を調べたところ、35社中28社で「過労死ライン」とされる「月80時間以上」の時間外労働協定を結んでいます。この現状をどう考えますか。ただでさえ「過労死ライン」を超える異常な長時間労働を強制している財界・大企業に、こんな法律を与えたら、「過労死」がいよいよ蔓延(まんえん)することは火を見るより明らかではありませんか。
安倍政権が提出しようとしている雇用に関する二つの重大法案は、ただでさえずぶずぶの「軟弱地盤」の現状を、「底なし沼」へと悪化させる歴史的大改悪です。国会提出を断念することを強く求めます。
日本共産党は、次の3点で人間らしく働ける雇用のルールをつくることを提案します。
一つは、派遣労働を臨時的・一時的業務に厳しく限定する派遣法抜本改正を行い、均等待遇のルールをつくり、非正規から正社員への流れをつくることです。
二つは、「サービス残業」、「ブラック企業」をなくし、「残業は月45時間まで」と定めた「大臣告示」を法律化し、異常な長時間労働をただすことです。
三つは、中小企業支援の抜本的強化と一体に最低賃金を時給千円以上に引き上げるとともに、地域間格差を是正し、全国一律最低賃金制を確立することです。
総理の答弁を求めます。
集団的自衛権を問う――「閣議決定」の撤回、法改悪の中止を求める
集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を具体化する法整備に関わって、2点にしぼって質問します。
第一は、米軍等を自衛隊が支援する「恒久法」をつくると伝えられていることについてです。わが党の国会論戦をつうじて、アフガン・イラク戦争のような戦争をアメリカが引き起こしたさいに、自衛隊が従来の「戦闘地域」までいって軍事支援を行うことになる。相手から攻撃されたら「武器の使用をする」ことになる。そのことを総理は認めました。これを具体化するのが「恒久法」ではありませんか。米軍と自衛隊が肩を並べて戦争をするための法整備ではありませんか。
第二は、総理が、国会質疑の中で、米国等が先制攻撃を行った場合でも集団的自衛権の発動はありうるのかと問われて、「(日本が)武力行使をするのは新3要件を満たすか否かの中で判断する」と述べ、発動を否定しなかったことについてです。先制攻撃は国際法違反の侵略行為です。そして、米国が、ベトナム戦争、イラク戦争など先制攻撃を繰り返してきたことはまぎれもない歴史的事実です。米国が違法な先制攻撃を行った場合でも、「新3要件」を満たしていると判断すれば集団的自衛権を発動するというのですか。そうであるなら集団的自衛でなく集団的侵略そのものではありませんか。明確な答弁を求めます。
日本共産党は、憲法違反の「閣議決定」を撤回し、「閣議決定」を具体化する一切の法改悪の作業を即時中止することを強く求めるものです。
沖縄米軍新基地建設――選挙結果を「真摯に受け止める」なら断念せよ
沖縄・名護市辺野古への米軍新基地建設について質問します。
昨年、沖縄県民は、県知事選挙、総選挙で、新基地建設反対の「オール沖縄」の意思を、疑いようのない明確さで示しました。
総理は、選挙結果を「真摯に受け止める」と述べました。しかし、やっていることはどうでしょう。翁長知事との対話を拒否する。沖縄振興予算を一方的に減額する。住民の抗議行動を暴力的に排除して海上作業を再開する。県民がどんな審判を下そうと、「聞く耳」をもたず、新基地建設につきすすむ。こんな野蛮な強権政治は、民主主義の国では絶対に許されないと考えますが、いかがですか。
総理は「普天間移設は負担軽減になる」と繰り返しています。しかし、辺野古の米軍新基地は、普天間基地の単なる「移設」などという生やさしいものではありません。
第一に、滑走路は、普天間基地では1本ですが、新基地では1800メートルの滑走路が2本になります。
第二に、新基地には、300メートル近い岸壁が建設され、4万トンを超える強襲揚陸艦が接岸できるようになり、空と海からの海兵隊の一大出撃拠点が造られます。
第三に、新基地には、普天間基地にはない広大な弾薬搭載エリアが建設されます。
第四に、新基地は、キャンプ・シュワブや辺野古弾薬庫と一体運用され、その面積は普天間基地の約5倍にものぼります。
第五に、さらに、キャンプ・ハンセン、高江など北部訓練場、伊江島飛行場などとも連動して、海兵隊の基地機能は飛躍的に強化することになります。
そして第六は、耐用年数は200年。22世紀どころか23世紀まで沖縄を基地の鎖でしばりつけることになります。
総理、このどこが「負担軽減」ですか。老朽化した普天間基地に代えて、大幅に機能強化され、半永久的に使用できる最新鋭の巨大基地を建設する――これがいま進められていることの正体ではありませんか。
総理が、選挙結果を「真摯に受け止める」というなら、新基地建設をただちに断念すべきです。普天間基地の無条件撤去を求めて米国政府と交渉すべきです。答弁を求めます。
戦後70年――「和解と友好」のための五つの基本姿勢を提唱する
今年は、戦後70年の節目の年です。
総理が発表するとしている「戦後70年談話」に、内外から懸念と批判が広がっています。総理は、「村山談話」について「全体として引き継ぐ」と言います。しかし、1月25日のNHKインタビューで、その核心的内容――「植民地支配と侵略」への「痛切な反省と心からのお詫(わ)び」という「キーワード」を引き継ぐのかと問われ、最後まで引き継ぐとは言わず、さらに「キーワードを同じように使うことではないのか」と問われて、「そういうことではない」と明言しました。
これは「村山談話」の一番の核心的内容をあいまいにし、事実上否定する姿勢をあからさまにしたきわめて重大な発言です。このような立場に立った「談話」ならば、百害あって一利なしと言わなければなりません。
日本共産党は、この節目の年が、日本とアジア諸国との「和解と友好」に向かう年となるために、日本の政治がとるべき五つの基本姿勢を提唱するものです。
第一は、「村山談話」「河野談話」の核心的内容を継承し、談話の精神にふさわしい行動をとり、談話を否定する動きに対してきっぱりと反論することです。
第二は、日本軍「慰安婦」問題について、被害者への謝罪と賠償など、人間としての尊厳が回復される解決に踏み出すことです。
第三は、国政の場にある政治家が靖国神社を参拝することは、侵略戦争肯定の意思表示を意味するものであり、少なくとも首相や閣僚による靖国参拝は行わないことを日本の政治のルールとして確立することです。
第四は、民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、立法措置を含めて、政治が断固たる立場に立つことです。
第五は、「村山談話」「河野談話」で政府が表明してきた過去の誤りへの反省の立場を、学校の教科書に誠実かつ真剣に反映させる努力をつくすことです。
以上について総理の見解を問うものです。
日本共産党は、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いてきた党として、戦後70年の今年が、日本とアジア諸国との心通う友好に向かう年になるように、全力をあげて奮闘する決意を表明して質問を終わります。