産経新聞より転載
川崎中1殺害 「フレー、フレー、遼太!」島を愛し愛され
産経新聞 2月25日(水)7時55分配信
川崎中1殺害 「フレー、フレー、遼太!」島を愛し愛され
上村遼太さんの遺体が発見された現場には、花や線香を供える人が絶えず訪れている=24日午後、川崎市川崎区の多摩川河川敷(岩崎雅子撮影)(写真:産経新聞)
■「自分は残るけん」夢砕かれ
殺害された上村遼太さんは、川崎市に移住するまでの6年余りを日本海に浮かぶ島根県・隠岐諸島の西ノ島町で過ごした。「自分は島に残るけん」と話し、数週間後には一旦戻ってきたという上村さん。島民が愛してやまなかったその姿を見ることは、もうない。
上村さんは5歳のころ、父親が漁師としてIターン就職するのに伴って神奈川県から西ノ島町に移住。小学6年生だった平成25年7月、家庭の事情で母親と川崎市に移るまで、青く澄んだ海に囲まれ、漁業や畜産業を営む人口約3千人の離島で暮らした。
「明るくユーモアがあって、人の気持ちのよく分かるムードメーカー。誰にも好かれる子だった。島に残っていれば…」。約90人が通う島内唯一の小学校、西ノ島小の金築康治(かねつき・やすはる)校長(54)は今も上村さんが帰ってくるように思える。
バスケットボールでは地元の大会で優勝。「遼太が得点すると逆転できる」との伝説まで生んだ。25年5月の広島県での修学旅行では、列から離れたと思ったら、どこで買ったのか、編みがさに木刀を差した「木枯し紋次郎」の姿で現れ、爆笑を誘った。
休み時間は下級生と一緒にサッカーをしたり、家庭環境に苦労しながらも妹らの面倒をみたりした。同級生だけでなく、上級生にもかわいがられ、休日には大好きな釣りに出かけた。「夜釣りは危ない」と注意されると、朝5時から釣りに出かけて地元の漁師も目を丸くしていたという。
25年7月、島を離れた姿は今も語り草だ。彩り鮮やかな紙テープをたなびかせて出港するフェリー。「遼太がんばれ」の横断幕を掲げ、友人や上級生、下級生ら約70人が島中から集まった。「フレー、フレー、遼太!」。声を張り上げて追いすがる友人らを、上村さんは、はにかむように笑顔で見つめ続けていた。
そのわずか2週間後、上村さんが友人に会いに島に戻ってきたことを金築校長は知っている。転校後の川崎市の小学校の卒業アルバムに、上村さんはこう記していた。「西ノ島小の友達と連絡を取り合って、これからも仲のいい関係を続けていきたいです」
純粋な思いは卑劣な凶行に打ち砕かれた。(荒船清太)
川崎中1殺害 「フレー、フレー、遼太!」島を愛し愛され
産経新聞 2月25日(水)7時55分配信
川崎中1殺害 「フレー、フレー、遼太!」島を愛し愛され
上村遼太さんの遺体が発見された現場には、花や線香を供える人が絶えず訪れている=24日午後、川崎市川崎区の多摩川河川敷(岩崎雅子撮影)(写真:産経新聞)
■「自分は残るけん」夢砕かれ
殺害された上村遼太さんは、川崎市に移住するまでの6年余りを日本海に浮かぶ島根県・隠岐諸島の西ノ島町で過ごした。「自分は島に残るけん」と話し、数週間後には一旦戻ってきたという上村さん。島民が愛してやまなかったその姿を見ることは、もうない。
上村さんは5歳のころ、父親が漁師としてIターン就職するのに伴って神奈川県から西ノ島町に移住。小学6年生だった平成25年7月、家庭の事情で母親と川崎市に移るまで、青く澄んだ海に囲まれ、漁業や畜産業を営む人口約3千人の離島で暮らした。
「明るくユーモアがあって、人の気持ちのよく分かるムードメーカー。誰にも好かれる子だった。島に残っていれば…」。約90人が通う島内唯一の小学校、西ノ島小の金築康治(かねつき・やすはる)校長(54)は今も上村さんが帰ってくるように思える。
バスケットボールでは地元の大会で優勝。「遼太が得点すると逆転できる」との伝説まで生んだ。25年5月の広島県での修学旅行では、列から離れたと思ったら、どこで買ったのか、編みがさに木刀を差した「木枯し紋次郎」の姿で現れ、爆笑を誘った。
休み時間は下級生と一緒にサッカーをしたり、家庭環境に苦労しながらも妹らの面倒をみたりした。同級生だけでなく、上級生にもかわいがられ、休日には大好きな釣りに出かけた。「夜釣りは危ない」と注意されると、朝5時から釣りに出かけて地元の漁師も目を丸くしていたという。
25年7月、島を離れた姿は今も語り草だ。彩り鮮やかな紙テープをたなびかせて出港するフェリー。「遼太がんばれ」の横断幕を掲げ、友人や上級生、下級生ら約70人が島中から集まった。「フレー、フレー、遼太!」。声を張り上げて追いすがる友人らを、上村さんは、はにかむように笑顔で見つめ続けていた。
そのわずか2週間後、上村さんが友人に会いに島に戻ってきたことを金築校長は知っている。転校後の川崎市の小学校の卒業アルバムに、上村さんはこう記していた。「西ノ島小の友達と連絡を取り合って、これからも仲のいい関係を続けていきたいです」
純粋な思いは卑劣な凶行に打ち砕かれた。(荒船清太)