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「言語が世界を分節する」@相模湾


この施設内には、新たなる命が再生される冬至、一年の折り返し点である夏至、
通過点の春分と秋分に太陽が昇る地点がマークされている


小田原文化財団、江之浦測候所が、相模湾を見渡す美しい土地に開館(2017年)して以来、わたしの「行きたいリスト」のトップに入っていた。


冬至の日に、このトンネルのラインに太陽が昇る。
ストーンヘンジだ


人間は、そのままでは混沌とした世界に「区切り」を入れて(満点の星を区切って星座を編んで世界の成り立ちを語ったように)知的営みを開始する。
「言語が世界を分節する」のだ。
世界を説明し、自分が誰かを知り、折り合いをつけて生き延びる。

今朝、興味深かったのは、エルニーニョ現象で雪が積もったインド南部の映像を見、「雪が珍しいこの地方の人たちの言語体系には、「雪」の下部システム(雹とか霰とか)は少ないんだろうなあ」と思った。







江の浦測候所は、世界を分節するために選ばれた、世界中に存在する遺跡に似ているからだった。

わたしが最も興味があるのは「人間は世界をどのように認識するか」「世界中のさまざまな文化圏では美をどのように認識しているか」なのだ。
旅行が好きなのもそこに理由がある。




しかし、英国に住む関西人にはとても遠いところのように思えた。

今回、Zimermanのピアノリサイタルを追いかけて横浜と東京に宿を取り、横浜からもしかしてと調べると、小田原近郊の根府川はものの1時間ほどで行けることが、しかも車などは必要ないことが分かった。





オフィシャルサイトはこう説明する。

「古典演劇から現代演劇までの伝承・普及、古美術品等の保存・公開、現代美術の振興発展に寄与することを目的とし、2009年、現代美術作家・杉本博司により設立され」た、公益財団法人小田原文化財団、江の浦測候所は、構想と場所探しに20年、建築に6年かかり、今も拡大を続けている。


「古代演劇、古典芸能、前衛舞台芸術の企画・制作・公演活動を通した普及振興活動を行うこと、寄贈を受けた「杉本コレクション」を中心とした美術品等を公開展示すること及び旧石器時代から現代、美術品から空間美術に至る、時代・ジャンルを越えた美術についての調査・研究を行うことを活動の中心といたします。」


「我が国の芸術文化の公演、公開、研究等の普及振興活動を通して、人間と自然との係わり、そして人類とその環境を見つめ直すきっかけを提示することを標榜いたします。世界はその昔、神秘に満ちていました。多くの事が意識化され理解された今、人類意識の新しい地平を私達は見いださなければならないのです。」


縄文時代の鉄棒。
他にも茶室、飛鳥時代や戦国時代の遺構の一部、古代が蘇る化石も


地勢のそのものの美しさ、世界中から集められ古代の遺物、意味の付与、古今の日本の建築の洗練されたさま、その調和が心地よく、離れ難い場所だった。

係の方が、英国から遥々来た客に、空の色と雲の形によって海の色と輝きが変わるようす、太陽が海から昇り、太陽が箱根山の向こうに沈むようす、稲妻が海を走ってくるようす、風が吹き荒れるようす、昔使われていたみかん小屋や、とんびが空から小動物を狙うようす、もぐらや、猪が土地を荒らすようす、土地の人々の暮らしの話をしてくれた。

それはすべて建築家の意図以前から、無作為のうちにそこにあり続ける人間の可憐さ、知的さ、そのもののようだった。




もえ的超おすすめスポットのひとつ!!!!


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