toshiの「読書日記」

忘備録を兼ねて読んだ本の感想などを書いています。個人的な感想なので不快に思われたりすることも有るかもしれませんがご容赦。

「音楽が鳴りやんだら」 高橋弘希

2022年08月30日 | 読書日記
天才ミュージシャン葵の物語。
私の時代で言えば桑田佳祐のような人かな。

私も昔ジャズコンボやっていたんで、バンド活動に関しては共感できるところも色々有ったけれど、音楽的に明らかにおかしいんじゃないの?と言う内容も有ったりする。
もしかしてジャズとロックでは違うところも有るのかもしれないけど・・・・。

物語が面白くてどんどん先を読んでいきたいのに、ストーリにはあまり関係の無い挿話とか、余計な描写とか、どうでもいいサイドストーリとかが多すぎて、そこからメーンストーリに戻ったときにはすっかり熱が冷めてしまい、再度気持ちが盛り上がるのにしばらくかかったりする。
余計な部分はそぎ落として3分の2くらいの分量にすべき。
それに語り手が代わりながら状況を説明したり物語を進行させる(時には意味不明な独り言だったり)という手法を多用しすぎで分かりにくくストレスが溜まる。

最高のスタッフと共に、理想のバンドメンバーを集め、これからどうなるんだろう・・・と言うところで葵が狂っていく(としか理解できない)。
後は何だか分からない展開。
そして最後に取って付けたようなエンディング。ここで伏線をすべて回収してめでたしめでたしなんだろうけど、その前の訳の分からない世界のため何の感激も無い。
何なんだこれは・・・・。
終盤までは80点の作品だったのに10点も付けられない。


朱音が「(クラッシック音楽のコンテストは)すでに在る音楽をいかに完璧に演奏するかのトレース大会」という台詞は私が昔から思っていたことで激しく共感。。

どうでも良いけど、私のバンドもベースが朱音と同じく音楽に造詣が深く、他にメンバーが何となく感じてることを理論的に説明していたのを読んでいて思い出した。





文藝春秋
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「判決はCMの後で」 青柳碧人

2022年08月28日 | 読書日記
1から100まで全て人が作り上げた法律は、自然科学を専門とする私とはもっとも統いところにある世界。
何の資格取るにも必ず法規が出てくるけれど、理屈で理解できる内容と違って丸暗記しないといけないし、合理的とは思えない内容が有ったりするから一番苦手なところ。
そんな法学嫌いな私だから、読みはじめてちょっと後悔したけれど、特に法律の話と言うわけではなかった。

普段テレビを見ないから、そんなにテレビに影響力が有るのか分からないし、裁判がテレビによって演出され、審議よりも放送が優先されるという設定が違和感だらけ。
途中から犯人捜しのミステリになって来てから物語が面白くなってくる。
真相解明の物語としてそこそこ良くできているのに、設定にリアリティが無さ過ぎてかなり残念。
サイドストーリもいただけない。




角川書店
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「水族館の殺人」 青崎有吾

2022年08月27日 | 読書日記
前作「体育館の殺人」より完成度が高くなっている。
裏染の台詞も常識的になって、訳の分からないたとえも最小限になって、読むのに邪魔にならない。
ただ、被害者が自ら日誌の束を持って犯行場所に行った根拠が乏しい。。





東京創元社
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「体育館の殺人」 青崎有吾

2022年08月25日 | 読書日記
第22回鮎川哲也賞受賞の本格派ミステリ作品とキャッチされていて、内容もいかにも・・という感じだけど、探偵役の裏染の最後の謎解きには突っ込みどころ満載。

裏染の台詞の比喩はマニアックすぎてほとんど理解できない。
最初のうちは、もしかしたらそこがカギになるのかもと思ってイチイチ調べていたけれど、なんだかアニメの話らしく途中で馬鹿らしくなって流石に辞めた。

ご都合主義の展開もてんこ盛りで、本格派としては物足りない。
最初からコージーミステリと思って読むのが正解。





東京創元社
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「卯月の雪のレター・レター」 相沢沙呼

2022年08月23日 | 読書日記
関係が上手く行ってない人達が、改善しそうになって行くという短編集。
どれも、つまらなくはないけれど、特に面白いという訳でもない。
設定が特殊過ぎるせいかも知れない。

最後の表題作はちょっと毛色が変わった感じで、中では一番良かった。
ちなみに、卯月の雪とは桜吹雪のこと。レター・レターは「later letter(遅れた手紙)」。




東京創元社
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「インシテミル」 米澤穂信

2022年08月21日 | 読書日記
ミステリーの王道の一つ、典型的なクローズド・サークル物。
細かいところで色々言いたいことは有るけれど、思ったよりも本格派でした。

小説内で登場人物が起こっている出来事について客観的に過去のミステリ小説と比較したりするのは最近の流行りなのかな??




文藝春秋
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「藩医 宮坂涼庵」 和田はつ子

2022年08月20日 | 読書日記
良く有る連作短編時代小説かと思ったら、何となく完結して独立した感じになってる章も有るけれど明らかに途中で終わって次に続いている章も有ったりで、とりあえずみんな繋がって一つの長編という構成と捉えるべきかも。
と言って、まだ完結してないけれど・・・。

話があちこち飛んで、ぼんやり読んでいるとついて行けなくなる。
そして和田はつ子の作品はみんなそうだけど、ストーリ展開はかなりご都合主義。
と言うことで、全体としてはイマイチ。

正義感あふれた市民が腐りきった役人や私腹を肥やす承認に立ち向かう話は、初出の赤旗にふさわしい。

気に入ったわけじゃないけれど、物語が終わっていないから、続編も読もうかな。。





新日本出版社
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「連れ猫」 吉野万里子

2022年08月17日 | 読書日記
「イモムシ偏愛記」が良かったんで、続けて吉野万里子を選んでみたんだけど・・・・。
今まで外れが無かった吉野万里子史上はしめての外れかも。

最初に登場する有也が1秒も一緒にいたくないほど嫌な奴で、彼の台詞や行動のすべてが許せない。
有也ほどではないけれど、次に登場する権輔もロクなもんじゃない。
彼らのせいで読み続けるのが少し嫌になる。
おまけに主人公(?)の亜沙美も考えてることが良く分からない。

別の主人公(?)の2匹の猫達が登場するとファンタジーの世界になるけれど、これは読んでるうちに徐々に受け入れられるようになる。

2匹の猫の名前でもある、いい孤独の「ソリチュード」と悪い孤独の「ロンリネス」と言う言葉に拘っているようで最初に登場した後は、最後に取って付けたように書かれているだけで中途半端な感じ。

孤独とは・・・と言う哲学的な考察ををしながら、猫の奇跡の再会物語になっていたり。
内容が盛沢山すぎて焦点がボケている印象。





新潮社
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「イモムシ偏愛記」 吉野万里子

2022年08月16日 | 読書日記
吉野万里子に外れは無かったけれど、これは一番面白かった。大当たりかも・・。
文章もストーリも、登場人物のキャラ設定も申し分ない。

ただ、凪の華道部での活躍と、華乃のその後がちょっと気になる。。。

巻末には有川浩の「植物図鑑」のように、登場するイモムシの写真を載せて欲しかったな。
その都度気になって調べてました。



光文社
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「殺人者の白い檻」 長岡弘樹

2022年08月15日 | 読書日記
両親を殺害したとして死刑になった定永を緊急手術で救った医師。
死刑囚の命を救うことに意味が有るのか悩む医者の物語かと思っていたら、リハビリ中に定永の無実を確信するところから、真犯人を探すミステリーだった。

物語は最後まで面白く読めるけれど、そもそも定永が犯人とされた証拠と、手の感覚が覚えていたという2つの肝心なところに違和感を感じてしまう。

そして、ここで終わっちゃうの・・・と言うラスト。





KADOKAWA
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「きらめきを落としても」 鯨井あめ

2022年08月13日 | 読書日記
色んなタイプの短編集。

「ブラックコーヒーを好きになるまで」
こだわりの強い主人公が異常過ぎて、ちょっとついて行けない。

「上映が始まる」
1作目の主人公の恋人の妹が登場。
1作目がつまらな過ぎて、もう読むのを辞めようかと思ったけれど、辞めなくて良かった。
この本の中では、この作品が一番好き。

「主人公でない」
作中作と物語が混然とする実験的な作品。
これが2作目だったら、ここで読むのを辞めてたかも。。

「ボーイ・ミーツ・ガール・アゲイン」
違っているけど、これが表題作ということかな。
とにかく、ご都合主義きわまる作品。
だけど、ちゃんと伏線は回収してるし、嫌いじゃないよ。

「燃」
1作目と同じく良く分からない主人公が登場するちょっと哲学的な話。
良く理解できないし、面白いのか詰まらないのかも良く分からない不思議な小説。

「言わなかったこと」
高校の頃、ちょっと書いてたから何となく気持ちがわかる。
続きが気になるお話。
私の中では「上映が始まる」と双璧。


ちなみにこの本の目次はデザイン凝りすぎで分かりにくくて、目次としての機能を果たしてない。




KODANSHA
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「空を駆ける」 梶よう子

2022年08月12日 | 読書日記
翻訳家の若松賤子の伝記。
この手の小説は事実とフィクションが入り混じっているから良く分からないけれど、カシ(主人公の若松賤子の本名=甲子)の興味を持った物事には熱心に取り組むけれどそうでないものにはまるで力が入らないという性格は私とそっくり(私の場合の興味の対象はほぼカシとは逆だけど・・・)。
書いてあることが事実ならば、晩年のカシは働きすぎ。
ただ、そのために多くの功績を残すことができたのか、夭逝してしまったのかは分からないけれど。




集英社
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「プリンシパル」 長浦京

2022年08月09日 | 読書日記
内容がヘビーの上、容赦ない描写の連続。
とてもサラッと読めるような内容じゃないので読むのに足かけ4日もかかってしまった。

暴力団の娘に生まれた主人公の綾女。
父の死によって無理やり組織を引き継がされるが、次第にその血と天性によって否応なく才能を発揮することになる。
最後の最後まで誰が味方なのか分からないという、油断できない女性版ハードボイルド小説。





新潮社
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「御留山」 佐伯泰英

2022年08月06日 | 読書日記
「新酔いどれ小籐次」の完結の第25巻。

小籐次そっくりな刀研ぎの名人「滝の親方」が登場。

終盤まで馬鹿な殿様の後始末。
城下の人達の好意で、最後はあっさり江戸に帰って、空蔵の仕切りで新兵衛の弔いで幕。
シリーズの終わりとしてはちょっと味気ない。





文春文庫
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「竹本義太夫伝 ハル、色」 岡本貴也

2022年08月04日 | 読書日記
義太夫をはじめ古典に限らず芸能にはジャズ以外は全く興味が無いからちょっと敷居が高そうだったけど、三浦しをんの「仏果を得ず」は楽しめたので手に取ってみた。
「仏果を得ず」の時は、最後まで分からなかった言葉の説明が冒頭に有ってありがたかった
ちなみに「人形浄瑠璃」=「文楽」で、その語り部(太夫)の代表的な流派が「義太夫」らしい。
その義太夫節を作った竹本義太夫(五郎兵衛)の伝記。

当然浄瑠璃の場面が多く登場するし、言葉の意味もサッパリだけど大丈夫。
何の問題も無く最後まで面白く読める。

このような小説(事実に基づいたフィクション)の場合、どこまでが真実でどこからが創作なのか分からないけれど、純粋に物語として楽しめた。
一人の女性を思い続ける五郎兵衛の気持ち、良く分かる・・・・。

タイトルの「ハル」と「色」は浄瑠璃を語るときの注意事項みたいだけど、一か所出てきただけでそこで説明が無かったので最後まで意味が分からなかった。
タイトルにするくらいなんだから物語の中で重要な意味を持っていて、意味が分かっていないと理解できないところがあったかもしれないと思うと残念。




幻冬舎
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