水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第249回

2013年07月02日 00時00分00秒 | #小説

 代役アンドロイド  水本爽涼
    (第249回)

『沙耶さんはアンドロイドですよね!?』
 二人? きりになったキッチンで、三井が突然、仕掛けた。
『…はい、そうですけど、あなたもですよね!?』
 沙耶も負けてはいない。瞬時に鋭く返した。三井は想定外の返答に少し、たじろいだ。
『ああ、まあそうでございますが…』
 しばらく沈黙が続いた。沙耶はその間も台所の片づけをし、手を動かしている。三井は手持ち無沙汰のままキッチンテーブルの椅子へ腰を下ろし、黙っている以外、手立てはなかった。片づけ物が終わったとき、今度は沙耶が攻勢に出た。
『三井さんは、いつ製造されたんですか?』
『はっ!? ええ、私は一年ばかり前でございます』
『って、私が先輩ってことね』
『? と、いいますと?』
『私は、それ以上前の製造物なの』
『そうなのですか…。では、いろいろとご指導を仰がねばなりません。よろしくお願いを申し上げます』
『なんか、言い方が硬いわね』
『先生にもそう言われております。もう一度、プログラムを差し替えようかと…』
『まあ、あの長左衛門の作なら仕方ないわね。保よりは、ね』
『はあ、それはこの私(わたくし)めに理解できます…』
 三井は、まったく反論しなかった。


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