代役アンドロイド 水本爽涼
(第267回)
『もちろん! そうと決まれば今、三井さんが言ったことが、すべてOKにならなきゃね。最低条件だからさ』
『ホームレスで暮らすのも可能でしょうが、それにしたって私たち自身のメンテナンス、修理の機材は必要ですから運び込まねばなりません。それには諸費用が必要となります。あとから購入する方法ですと、かなりの諸費用を計上し、手元に置いておかねばなりませんから…』
三井は理路整然と話した。そのとおりなんだから仕方ないわね…と思え、沙耶も反論はしなかった。
そうこうして、ひと月が流れようとしていた。保が発案した飛行車の実物大の組立は電子部品や機材の購入が始まったところだった。
「お前のとこ、また何か作るらしいな。教授がちょくちょく寄って、大将にそう言ってるぞ」
保が馬飼(まがい)商店へ部品調達の下見に行ったとき、中林がそう言って声をかけてきた。保は心中を見透かされたようで一瞬、ギクリとした。それでも、すぐに落ち着いて返した。
「ああ…。前回より凄いぞ、今度のやつは!」
「どんなんだ?」
「お前には沙耶のことを黙っていてもらう借りがあるしな。それに、発注すれば孰(いず)れ分かるだろ。…エアカーだ」
「はあ?! エアカーって、空飛ぶ車ってことか?」
「ピンポ~ン! 飛行機ならぬ飛行車さ、ははは…。SF映画でよく見るだろ? あれだ」