水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第250回

2013年07月03日 00時00分00秒 | #小説

 代役アンドロイド  水本爽涼
    (第250回)

『そらそうでしょうね』
 見えない火花が沙耶と三井の間で散っていた。とはいえ、それは闘争から生じるものではなく、互いの防御と性能の探りあいで、問答的だった。
『一応、あなたの設定は女性なんでしょうか?』
『あらっ、その訊き方って失礼なんじゃない? 感じで分かるでしょ。まあ、いいけどね。私達は人間じゃないんだから、でもさ、人間に対したときは、それじゃね。注意なさいよ』
『はあ…どうも、すみません』
 三井は完全に守勢に立たされていた。
『なにも謝ることはないわよ。私とあなたはアンドロイド仲間なんだし…』
『それなんですが、私(わたくし)ども以外にもアンドロイドは、いるのでしょうか?』
『私の調べたところによれば、今のところ、それは皆無ね』
『と、いうことは、岸田一族は卓抜した頭脳の持ち主ってことになりますが』
『そうね。保と長左衛門もノーベル賞は取れるわね。研究室の山盛教授の比じゃないことは確か…』
『そうですね。ところで私どもは、このまま人間として存在可能なんでしょうか?』
 沙耶は、いつの間にかテーブル椅子へ座り、三井と対峙していた。
『製造者次第よ。私は自分で修理できないしメンテナンスも無理なんだから。あなただってそうでしょ?』
『ええ、それは、まあ…』
『言われたとおり、やってりゃいいのよ。それが一番! っていうか、それ以外に私達の存在し続ける方法はない…ってこと』


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