代役アンドロイド 水本爽涼
(第251回)
保と長左衛門の思惑は大きく外れ、結果としてアンドロイド同士を固い絆で結びつける破目になってしまった。二人はそんなことになっていようとは露ほども知らず、話を続けていた。
「はっはっはっはっ…、そうか。では、そのように勝夫婦には言っておこう。いい方だと、わしは思うのだがのう。お前の仕事の都合ということならば仕方あるまい。じゃが、もう一度、訊(たず)ねておくぞ。見合いだけでも駄目なのか?」
「じいちゃん、すまない」
保は両の手を合わせ謝る仕草をした。
「はきつかない、おじちゃんだこと…」
おしゃまな里彩が愚痴った。お前に言われたかぁない! とは思えたが、保は出かけた声をグッと我慢して堪えた。
「まあ、仕方あるまい…」
長左衛門は見合い写真を革鞄(かばん)に戻した。保も長左衛門もキッチンにいる沙耶と三井の成り行きが気にはなっていた。だが二人とも、そのことは億尾にも出さなかった。
「おじいちゃま、三井はどうしてるのかしら?」
物怖じしない天真爛漫な里彩が唐突に訊ねた。二人は少なからず考えていたことだから、ギクッ! とした。
「んっ!? ああ…三井のう。適当に上手く沙耶さんのお相手をしておるじゃろう」
「そうよね。三井はアンドロイドだから、手抜かりないわね」
瞬間、長左衛門は、しまった! と顔を歪(ゆが)めた。