水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第五十九回)

2011年11月02日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 
    
第五十九回
『はい。この前、お話した社会悪を滅ぼす、という意味を訊(たず)ねた、という訳です』
「ああ…二人で決めた(2)のやつだな。(1)は私とマヨネーズだったが、…まあ、このざまだ。君はよく見える」
『いえ、そう云わないで下さいよ。僕としては、お蔭で課長と正義の味方ってことですから…』
「えっ? どういうことだい?」
『だから、(2)なんですよ』
「ああ、そうだった。(2)を聞かんとな」
『霊界番人様の申されるには、この人間界にのさばる社会悪の退治だとか…』
「ほう、社会悪な。そうは云っても、具体的にはどういうことだ?」
『そうでした。それも訊(たず)ねましたが、心が荒(すさ)んだ結果、起こっている犯罪とかです』
「でもなあ…。そんなのは一杯、あるぜ」
『だから、この如意の筆を示して振れ、と申されました。如意の筆ですが…、これを示して言葉を念じればその物が、黙って振れば地球上のその悪事が、たちまち消滅するということです』
「まるで魔法じゃないか」
『ええ、なんだか魔術師のようなことらしいです』
「それに、私が?」
『はい』
「会社は、どうするんだ? 金がないと食ってけないぞ。それに、生活もな」
『そこら辺のことは生憎(あいにく)、訊(き)いておりません』
「それが大事なんじゃないか。そんなボランティアみたいなことは、生活にゆとりがある人のやるこったろ?」
『すみません…』
「なにも、君が謝るこっちゃないが…。それ訊いておいてくれよ」
『はい…』
 幽霊平林は素直に頷(うなず)いた。


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