水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第五十八回)

2011年11月01日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  
    
第五十八回
中位相処理されたマヨネーズ効果で、有難いことに完璧に元の状態に戻っている幽霊平林だった。
 さて、時間経過が分かると、次に幽霊平林は霊界番人の話を上山に伝えるタイミングを探った。上山に呼び出されず、こちらから現れるとなると、上山に迷惑がかからないよう配慮せねばならない。よく考えれば、こちらから人間界へ現れること自体が約束違反なのだから、せめて迷惑に考慮することぐらいは必要に思えた。
━ そろそろ、課長、戻る頃だな… ━ と、瓶(かめ)の水量から計算した幽霊平林は、人間界へと消えた。
 こちらは会社が終わり、ようやく家へ辿り着いた上山である。玄関ドアのノブを上山が回そうとしたとき、スゥ~っといつもの格好よさで幽霊平林が現われた。
『やあ、課長!』
「やあ、課長はないだろうが、君!」
 上山は突然、現れた幽霊平林に少し腹が立ったのか、怒り口調でそう云った。
『あっ! どうもすいません。今日は、お約束を無視して、こちらから現れました…』
 上山は平謝りでそう云った。
『おお、まあそれはいいさ。まっ、中で話そうや。誰ぞに聞かれりゃ変だろ?』
『はい。…じゃあ』
 幽霊平林は、スゥ~っと外壁を透過して中へと入った。このパターンも、すでに馴れた上山である。当然、幽霊平林は入ったものと想定して、一人帰ったときと変わらず、ドアを閉じて靴を脱ぐと上がった。もちろん想定通り、幽霊平林は透過して入り、居間でプカリプカリと漂っていた。
「それで、勝手に現れたことは、よほどなんだろうな、君?」
『ええ、課長、そりゃもう…。実は霊界番人様のお言葉を伝えるためなんです。って、霊界司様のお言葉でもあるんですが…』
「勿体(もったい)ぶらないで、早く云いなよ」


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