代役アンドロイド 水本爽涼
(第70回)
強力電磁波は昨日(きのう)と同様、放出されたようだった。辺りには、きな臭い臭いが漂っている。薄煙が消えて、最初に口を開いたのは但馬だった。自分の失敗を棚に上げ、彼は偉く息巻いていた。
「後藤君、本当にきちっとプログラムを組んだんだろうね!?」
どこまでも強気で、失敗は自分のせいじゃないと言いたげである。
「おかしいなぁ~。プログラムは間違いないと思うんですが…」
山盛教授も息巻いた但馬には突っ込まなかった。保は、上手い具合にトラブルが起きたから、沙耶の観察が出来る最高の状況に喜んだ。
「沙耶、気分はどうだ!?」
『よく分からないけど、大丈夫みたい…』
「そうか…。上手く働いたようだな」
保は、やれやれと、ひと息ついて小さく呟(つぶや)いた。沙耶の方は、これでひとまずだが、研究室の自動補足機は一難去ってまた一難の状況である。但馬の面子(メンツ)は丸潰れで、保も加勢する訳にはいかなくなっていた。これ以上、講師である但馬を追い込めなかった。一応、現在の状況は後藤のミスという形になっていた。そのとき、沙耶が応接椅子からスクッ! と立ち、コツコツとヒールの音よろしく、三人に近づいた。教授、後藤、但馬はその沙耶を見た。
『こうなんじゃないですか?』
沙耶の両手指は器用に動いて、手にしたパーツを弄(いじく)っていた。
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