防衛省は、島嶼防衛力・奪還力の向上や、想定されている東海南海トラフ地震などへの対応力向上のため、海上自衛隊に海上輸送能力や航空能力の優れた強襲揚陸艦を導入する方針だ。
強襲揚陸艦とは、敵の存在する地域やその海岸に、水陸両用の上陸作戦ができる揚陸艦のこと。強襲揚陸艦の元祖は日本が第二次世界大戦中に旧日本陸軍が「神州丸」「あかつき丸」という先駆的な上陸作戦と航空能力を兼用した揚陸艦を運用したことが始まりで、第二次世界大戦後は米国などで建造・運用が進められてきた。
今回、海上自衛隊に導入される強襲揚陸艦は、ヘリなどの航空機運用能力と水陸両用作戦能力は必要であり、現在配備予定の大型ヘリ搭載艦「いずも」の基準排水量1万9500トンの2倍程度の排水量が求められる。
参考までに、アメリカの強襲揚陸艦ワスプ級は基準排水量が2万8000トンクラスで、人員1894人の上陸要員とLCAC(エア・クッション型揚陸艇)3隻、航空機は運用用途により搭載数が変化するが、ヘリのみ搭載で最大42機、垂直/短距離離発着機(V/STOL機)最大20機のほかヘリ6機が搭載可能である。またワスプ級の後継として建造中のアメリカ級で基準排水量が3万~4万トンクラスであり、今後建造される日本の強襲揚陸艦も、米国のワスプ級やアメリカ級をモデルとすべきだろう。
昨年フィリピンで台風30号による大きな被害が発生した際、訓練やドッグ入り整備でLCACを搭載できる輸送艦が「おおすみ型」1隻しかなかったことは、有事や大災害対応に大きな問題となった。日本は離島6800余りを抱えており、また艦艇は稼働率や整備の問題から数量の確保も重要だ。アメリカは強襲揚陸艦ワスプ級8隻を保有しており、後継のアメリカ級も同程度の配備計画があるのだから、8~16隻はほしいところだ。
日米両国が同等の水陸両用能力を保有する方向へ進むことは、日米同盟の堅持や強化、日本の自主防衛力の確立・強化がより進むことになる(弥)