http://the-liberty.com/article.php?item_id=12945 幸福の科学出版
緊迫化する北朝鮮情勢。本誌・本欄ではかねてより、国防強化の必要性を訴え続けてきましたが、そうした事態になっても、憲法改正の議論はなかなか進みません。憲法や自衛隊法の改正などを進めなければ、自衛隊は有事に対処できず、国民を守りきることはできません。
しかし、安倍政権は、「対応を検討する」、「万全の措置をとっている」などの発言を繰り返しているため、わざわざ法改正をせずとも、北朝鮮の脅威に対処できると思っている節があります。
確かに戦後の日本は、自衛のための最小限の武装にとどめる「専守防衛」を掲げ、自衛隊が漠然と国民を守っているという"安心感"がありました。
ですが、これまでのやり方が通用しないということが、次々に明らかになっています。そこで本欄は、政府の対応の実態をポイントごとに整理したいと思います。
(1)政府は核攻撃の避難施設の収容能力を把握せず
もし、北朝鮮が日本に核攻撃を仕掛けてきたら——。
真っ先に逃げ込むべきは、地下鉄などの地下施設ですが、政府は、避難先として想定している地下施設について、全体の収容規模を把握していないことが判明しました(4月28日付産経新聞)。
東京都だけで避難施設は3000カ所を超えており、東京地下鉄も「国からどういう避難指示が出るか分からず、駅の利用を前提にした避難行動は検討していない」と話していると言います。
(2)PAC3では日本は守れない
そもそも、核ミサイルを迎撃すればいい——。
確かにその意見には一理ありますが、迎撃ミサイルの「PAC3」の配置状況を見ると、日本の都市をすべて守り抜くことはできないことが分かります(図はリバティWebにてご覧ください)。
政府はミサイルの迎撃について、「可能です」(稲田朋美防衛大臣)と自信を示していますが、はっきり言えば、「虚勢」です。
戦争平和社会学者の北村淳氏は、ウェブサイト「JBpress」で、「(現在のところ)9発以上になると、イージスBMD駆逐艦の防衛網は突破されることになる」と述べているように、複数のミサイルが同時に撃たれれば、日本に着弾します。
たとえ、PAC3で迎撃できたとしても、放射能の汚染物質は日本の領土に落下してしまい、国民の命を危険にさらします。
あくまで現在の防衛体制は、被害を減らすという域を出ません。被害を未然に防ぐには、「敵基地先制攻撃」を検討すべきです。
(3)自衛隊は在韓邦人を救えない
大型連休に入り、関西国際空港からは、52万人の日本人が韓国へ飛び立ちます。
そうした中、もし有事が起きたら、韓国にいる日本人は、日本政府がチャーターしたバスや船などに乗って、半島南部へ退避。そこから政府専用機や自衛隊の艦船などに乗り込み、救出する対応が行われます。
しかし、この対応には、韓国政府の同意が必要となります。それなしには、自衛隊は火の海になったソウルに向かい、救出することができないのです。
1950年に起こった朝鮮戦争当時、日本にはまだ自衛隊が存在しておらず、半島にいた日本人は自力で帰国しています。政府が国民を守り切れなかった朝鮮戦争の過ちを繰り返してはなりません。
(4)北朝鮮の難民対策を放置
また政府は現在、多くの有識者から指摘され続けてきた、北朝鮮からの避難民の対策をやっと検討し始めています。これは、EUがイスラム圏から殺到する難民への対応で大混乱していたという状況を、ただ傍観していたことを意味します。
事実、朝鮮半島から避難民がやってくるとみられる長崎県対馬市に本誌が取材を行ったところ、「何万人も対応することは不可能」と答えています。安倍政権は、「万全の体制をとっている」との立場ですが、本当にそうなのか疑問です。
(5)化学兵器のテロは?
さらに北朝鮮は、サリンなどの化学兵器を搭載したミサイルを撃つ危険性もあります。
安倍政権は4月28日に、自衛隊が化学兵器を載せたミサイルを迎撃した場合、「ミサイル破壊時の熱等により、無力化される可能性が高い」とする答弁書を閣議決定。国民の懸念を払しょくするよう努めました。
しかし、化学兵器がミサイルで飛んでくるのではなく、地下鉄などに設置され、爆破されるような事態に対する対策は十分にとられていません。政府は化学兵器の脅威を過小評価しています。
(6)北朝鮮のサイバー攻撃を想定せず
北朝鮮の脅威はミサイルだけではありません。
北朝鮮が日本を攻撃する際に、国の主要機関やインフラ施設などにサイバー攻撃を同時に仕掛ける可能性もあります。電子機器が妨害されれば、高度に近代化された都市の機能が麻痺し、日本は大混乱に陥るでしょう。
ですが、今のところ、その危険性を指摘する声は少なく、日本はまったくの「無力」と言ってもいい状況にあります。
(7)政府の危機意識は大丈夫か?
そんな中、政権を担う20人の大臣のうち、半数を超える11人が、大型連休中に外遊する予定です。外務省に限ると、大臣と副大臣が日本にいない期間は4日間もあり、危機意識があるのかと疑問視されています。
一方で自民党は、大型連休中の国会議員の海外出張について、比例復活当選と東京都選出の議員は原則禁止する方針を決めています。
つまり、選挙に影響する外遊は認めないが、それ以外なら認めるというわけです。事の重要性をわきまえない事態に、国民は不安を覚えるでしょう。
◎戦後の防衛政策の弊害が露わに
戦後の日本は、憲法を一度も改正せず、専守防衛に徹してきました。しかしそれにより、有事の際に国民の命を守り切れないという状況に陥っています。危機が迫る中、その弊害が浮き彫りになっていると言えます。
政治家は「国防強化は選挙の票に結びつきづらい」というイメージを持っているかもしれません。ですが、万が一の事態が起きてしまったら、時すでに遅しなのです。
少なくとも、「国民に被害が出るまで何もできない」という意味の「専守防衛」の看板を取り下げ、被害が出る前に十分に反撃できる能力を持つ「積極防衛」にシフトするよう、問題提起する必要があります。(山本慧)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『危機の中の北朝鮮 金正恩の守護霊霊言』 大川隆法著
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