http://the-liberty.com/article.php?item_id=13071 幸福の科学出版
《本記事のポイント》
・英マンチェスターのテロを受け、世界中が恐怖に包まれている
・テロの目的は「復讐や報復」、革命の目的は「自由の創設」
・世界中で、平和的な手段による、多くの人々を幸福にするための「正しい革命」を
イギリス中部のマンチェスターで、子供数人を含む22人が死亡した自爆テロが起きてから1週間。ヨーロッパ全体が、「いつどこで何が起きるか分からない」という恐怖に包まれている。
メイ首相はテロ発生直後、「治安強化のため、主要施設の警備に軍を動員する」と発表。また、「コンサートやスポーツ関連のイベントなど公共行事で兵士を配備する可能性がある」と述べるなど、テロ警戒レベルは最高度に高まっている。
◎テロへの恐怖は人々の自由を奪う
一般市民を巻き込むテロは、人々の生活のあらゆる自由を奪うものだ。中には、多くの人々が集まるところに行くことや、家から出ることにすら危険が伴うと考える人もいるかもしれない。ヨーロッパに旅行に行くことや、移住することを躊躇する人も増えるだろう。
2001年9月11日に、史上最悪の同時多発テロを経験したアメリカは、その後テロとの戦いを10年以上続けている。もともと「自由の大国」だったアメリカは、テロの恐怖に神経をすり減らし、かつてのアメリカらしさを失いつつある。もともとは移民に対して最も寛容な国だったが、宗教差別や移民に対する猜疑心が強まった。
◎問われる「手段の正当性」
テロ事件を起こすイスラム教徒の一部の過激派の中には、「神の国を打ち立てよう」「欧米諸国から空爆されて苦しむ祖国の実態を世界に知らしめよう」など、主観的な大義名分はあるのかもしれない。過激派組織「イスラム国」は、世界各国でジハード(聖戦)を起こすことで、世界革命を目指しているつもりなのだろう。
しかし、その目的を果たすための「手段の正当性」は問われなければいけない。罪もない人を無差別に殺すという手段では、人々が自由に生きる権利を奪い、不幸しか生まない。「最終的に多くの人々を幸福にする方向に向かっているかどうか」という観点から、その手段や目的の正当性を考えることが必要だ。
◎「テロ」と「革命」を分ける決定的な違い
宗教法人・幸福の科学の大川隆法総裁は、2016年7月の法話「地球を救う光」の中で、テロと革命の違いについて、次のように述べている。
「この世において、テロリストといわれる人々の行動の多くは、『復讐の念』『憤りの念』『怒りの念』などによって支配されています。そして、『リベンジ(報復)として、多くの人々の血を流したい』と思っているのでしょう。ただ、この考えの底には、『神は生贄を求める』というような考えが横たわっているように、私には感じられます。
一方、『革命』という言葉も多義的に理解はされていますけれども、革命の本質は『自由の創設』です。その意味で、テロとはまったく違ったものだと私は考えています。(中略)革命というのは、『人々を一元的に支配してしまおうとする、あるいは、人々を隷従させ奴隷にしようと支配する力に対し、自由が花開くことを求めて、人々が立ち上がること』です」
幸福の科学は、国際政治の分野においても、さまざまな政治的な発信を行い、「北朝鮮や中国の軍事拡張主義を抑えてアジアを平和にする」「キリスト教圏とイスラム教圏の世界戦争をやめさせる」などの目的を持って活動している。その究極の目的は、自由を奪われて苦しんでいる人々を解放し、「一人でも多くの人を幸福にすること」にある。
暴力的な手段ではなく、思想を啓蒙するという平和的な方法で、世界の争いを解決する方法を広め、多くの人々を幸福にする「正しい革命」を起こすことが必要だ。(小林真由美)
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2017年5月24日付本欄 英マンチェスターのコンサート会場で自爆テロ 根本解決には「慈悲」の考え方が必要
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2016年7月7日付本欄 全世界に「神の正義」を打ち立てる革命を 大川隆法総裁 御生誕祭・大講演会「地球を救う光」
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2016年7月号 「革命」はどうやって起こるのか(Webバージョン) - 編集長コラム
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http://the-liberty.com/article.php?item_id=13070 幸福の科学出版
《本記事のポイント》
・悪名高い「治安維持法」には、当初、思想、言論の自由を弾圧する明確な意図はなかった
・共産党を応援した人や、政府に批判的な主張をする宗教団体も罪に問われるようになった
・テロの取締りを目的とする「共謀罪」も拡大解釈により、自由を奪わないよう注意を
「テロ等準備罪」、いわゆる「共謀罪」を新設する「組織犯罪処罰法改正案」が衆院で可決されました。この後、参院で審議され、今国会で可決、成立する見通しです。
この法案が可決されれば、新たに277もの犯罪が準備段階で処罰対象となります。これは、処罰対象を「行為」に限るとする現行憲法の大原則を揺るがし、ある意味で各自の「内面」にまで踏み込んで処罰することになりかねません。
そのため、「犯罪組織の一員だとみなされれば、実際に犯罪に着手していない段階で電話やメール等まで捜査される可能性がある。言論の自由を脅かす」として、共謀罪を戦前の「治安維持法」になぞらえる人もいます。
これは、犯罪とは無縁の組織を弾圧し、言論、思想、出版、結社の自由など、あらゆる自由を奪ったとして悪名高い法律です。
しかし、「治安維持法」には当初、思想、言論の自由を弾圧する意図はなく、立法者はむしろそうした自由を残そうとしていました。それがなぜ、悪法の代名詞のようにいわれるようになってしまったのでしょうか。
◎「治安維持法」の目的はソ連の共産主義流入の阻止
「治安維持法」の制定が検討されたきっかけは、1917年にロシアで起こった共産主義革命でした。
国体の変革(皇室の否認)や私有財産制度の否認を掲げる組織をつくらせないようにして、暴力的な共産主義運動の広がりを防ごうとしたのです。
当時は、ドイツをはじめとする欧米諸国も、ソ連の共産主義思想の流入を防ぐため、暴力的な反国家的組織の取締法を制定していました。社会情勢をかんがみた時、「治安維持法」を制定した意図は理解できます。
当時の国会では、「言論や学問、出版の自由に対しては広く認めるように」「反国家的な組織は取り締まるが、共産主義を主張する自由は残すべき」などといった議論も行われていました。
1925年に成立した後は、司法省(現在の法務省)からも、法律の適用には慎重を期し、狭く適用するよう指示が出されています。
しかし「治安維持法」は次第に拡大解釈され、改正され、人々の言論の自由を奪っていきました。
◎捜査対象が一気に拡大
「治安維持法」が成立した1925年は、すべての成年男子による普通選挙を認める「普通選挙法」が成立した年でもあります。
先述したように、「治安維持法」には共産主義の広がりを防ぐ意図がありました。当時の政府は、選挙を通じて共産党が伸張することを恐れ、男子普通選挙を認める交換条件として、この「治安維持法」を成立させたとも言われています。
1928年に最初の普通選挙が実施されると、共産党は機関紙「赤旗」を創刊し、党員を立候補させます。これを機に、全国で共産党への一斉捜索が行われます。1600人が検挙されますが、その圧倒的多数は共産党員ではありませんでした。
当時は、組織の一員でなければ罪に問えないことになっていましたので、ほとんどの人は釈放されました。また、党員たちが捜査の手を逃れるため、共産党を応援する外郭団体に逃げ込むケースもありました。
これでは共産主義の広がりを抑えられないと焦った政府は、治安維持法に「共産党を支え、その目的遂行のために為したと見なされるあらゆる行為を処罰する」という趣旨の規定を入れます。これが拡大解釈への布石となります。
これ以降、共産党に入っていなくても、直接の指導下になくとも、党を支えるために何らかの活動をした者は処罰対象になりました。しかも、共産主義を広めるビラをまいたり、資金提供をしたりなど、党の目的に合致する活動をしたと判断されれば罪に問われました。
◎国体変革を疑われた宗教団体を弾圧
このように、共産党は何度も捜査の対象となって大打撃を受けましたが、「治安維持法」は共産党以外にも捜査対象の範囲を広げます。
皇室を否定する共産党を念頭に置いた「国体の変革を目的として結成された組織」という要件が広く解釈され、政府の方針に批判的な政治運動を行う団体の取り締まりにも用いられました。
それが、大本教に対する弾圧です。これを端緒として、数多くの宗教団体が「治安維持法違反」に問われます。
宗教の教えは、往々にしてこの世の常識とぶつかり、政権に批判的な主張を行うこともあります。大本教をはじめ、他の宗教団体も、国体の変革を図ろうとする意図や暴力的な行為などはありませんでしたが、国家をひっくり返そうとする組織と見なされ、弾圧を受けたのです。
安易な拡大解釈により、思想、信条、言論の自由が侵害されていったのです。
◎「治安維持法」と「公職選挙法」の共通点
もう一つ、「治安維持法」と同時期に成立した法律があります。それが、現在の「公職選挙法」の原型となった「普通選挙法」です。
それまで、選挙運動は自由に行われていましたが、「普通選挙法」により、戸別訪問の禁止や、配布できるビラが制限されるなど、選挙の規制が一気に強化されました。
前述したように、当時、共産党は国体を破壊する危険な政党と認識されており、「治安維持法」と「普通選挙法」は、共産党の伸張を抑制するという共通の意図がありました。
ただ、この「普通選挙法」や現在の「公職選挙法」は、共産党に限らず、既得権益を脅かす新興勢力を取り締まり、その活動を萎縮させる道具となっていきました。
何が合法で何が違法か分かりにくく、往々にして恣意的な適用がなされたからです。
政権に批判的、もしくは非協力的な勢力を取り締まるという点において、「治安維持法」と「公職選挙法」は共通点が見られます。
◎拡大解釈には慎重に
共謀罪についても、「テロを行う犯罪組織を取り締まる」という目的は理解できます。
しかし、安易な適用を許せば、「イスラムテロを防ぐため、モスクに出入りする人を監視しよう」「国家転覆を目的としたテロを防ぐため、反政府的な思想傾向を持った団体を取り締まろう」などという偏見に基づいた捜査が行われることも考えられます。
テロ防止という名目があれば何をやってもいい、捜査対象を広げてもよいという考えが正当化されるなら、国民の自由はどんどん狭まっていきます。
多くの人が幸福に暮らすには、多様な考え方を認める自由が保障されていなければなりません。
もちろん、犯罪行為は厳格に取り締まる必要がありますが、法律を拡大解釈して、言論の自由や思想・信条の自由、集会・結社の自由を侵害するような政府の動きに対しては、反対の声を上げていく必要があるでしょう。(小川佳世子)
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