
3月18日以降、イスラエルは、「ハマスが人質解放に応じない」として、パレスチナ人への大量殺戮を再開した。それによって、ガザ保健当局は、24日までに700人が殺害されたと報告した。人質の家族は、むしろ人質奪還が不可能になるだけだけだ、とネタニヤフ政権を批判していることからも分かるように、「人質」はガザ攻撃の口実に過ぎない。
朝日新聞の報道スタンス
「そしてもちろん、私たちはどんな状況でもイスラエルを支持します。彼らは私たちの同盟国です。」
イスラエルが停戦を無視して、ガザを空爆し、数百人のパレスチナ人を殺害したブルースが、広報担当者はアメリカ政府の立場をこのように表明した。殺害したパレスチナ人は、民間人で女性や子供が多く含まれる。
朝日新聞はいつから痴呆症になったのか? 「止めるすべ」は、明らかなのである。欧米、特にアメリカがイスラエルへの軍事支援と「全面支持」を止めればいいだけである。これらの支援と支持がなければ、イスラエルは世界中を敵にまわすこの残虐行為を続けることはできないからである。イスラエルは、欧米の軍事支援、財政支援に加え、欧米の「どんな状況でもイスラエルを支持」していることによって、国際法無視のパレスチナ攻撃が可能になっているのである。そもそも、朝日新聞は、欧米によるイスラエルへの軍事支援をしている事実そのものを報道すること自体が、極めて稀である。
報道されない事実は、こうである。アメリカは、イスラエルに毎年38億ドル規模の軍事支援を行っている。日本の防衛省によると、イスラエルの年間軍事予算は70億ドル程度なので、アメリアの軍事支援は、その半分強に相当する。
アメリカ政府のイスラエル擁護の姿勢は、民主党のバイデンも共和党のトランプも基本的には同じであり、トランプの方がよりイスラエル擁護が強いだけである。バイデンもトランプも同様に、ICC国際刑事裁判所から逮捕状が出ているイスラエルのネタニヤフ首相と会談を行っている事実がそれを示している。
この事実を考えれば、アメリカが支援する「ガザの虐殺」であるのは明らかであり、その支援さえ止めれば、虐殺をやめさせることができるのである。だから、アメリカの左派を代表するバーニー・サンダースを始め、民主党内「進歩派」が、イスラエルへの軍事支援をやめさせる運動を繰り返し、多くの欧米の大学では、虐殺に欧米政府の加担を非難し、パレスチナ擁護の抗議活動が頻繁に行われているのである。そして、イスラエル政府を批判する行為行動は、「反ユダヤ主義」の烙印を押され、活動家は逮捕、拘禁、国外退去を余儀なくされる。朝日新聞は、こういうイスラエルと欧米、特にアメリカの関係を報道することはほとんどなく、ただ単に「これだけの苦しみ」を負わされているパレスチナ人は「ああ、可哀そう」と嘆くだけなのである。
もう一つの国際法違反のロシアに対しては、朝日新聞は、ロシアに大使、徹底した非難を繰り返している。3月21日の社説では、「ロシア停戦拒否 米欧は圧力を緩めるな」と書いている。
これらのことは、何を意味しているのかというと、欧米政府の二重基準を擁護していると言っていい。多くの欧米政府は、ロシアの軍事侵攻を非難し、敵視しているが、イスラエルに武力で反抗するハマスなどをテロリストと決めつけ、パレスチナ人を攻撃するイスラエル政府を非難することはない。奇妙なことに、朝日新聞は、この馬鹿げた二重基準に立つ欧米政府に倣っているのである。
欧米の二重基準は、ヨーロッパの場合は、歴史的にユダヤ人に対する抑圧が贖罪意識を生み、イスラエル政府を批判することが「反ユダヤ主義」と見做されることにある。それは、アメリカの次に軍事支援を行っているドイツがその典型であり、ユダヤ人へのホロコーストの贖罪から離れられない。アメリカでは、ユダヤ資本が強大な経済力を持ち、ユダヤ人団体ロビイストがアメリカ政府への強力な影響力を持っている。それらのことから、イスラエル政府の蛮行に批判ができないでいるのである。付け加えれば、その根底に、白人国家のイスラエルと非白人のパレスチナ人への根強い人種差別主義が潜んでいると言ってよい。勿論、欧米でもその二重基準は一律ではなく、ヨーロッパでパレスチナ国家を承認している国は、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、チェコ、スロヴァキア、ブルガリア 、スウェーデン、キプロス、マルタ 、ノルウェー、スペイン、アイルランドであり、これらの国では、イスラエル政府への批判もタブーではなくなっている。付言すれば、当然のように、アメリカ政府に追随する日本政府はパレスチナ国家を承認していない。
朝日新聞が例外なのではない
欧米政府を批判しない朝日新聞の例を挙げたが、この報道スタンスは、朝日新聞に限ったことではなく新聞もテレビも、ほとんどの日本のマスメディアに共通している。それは、日本政府の立場と一致している。
在京新聞では、概ね、自公政権の立場の近さは、産経、読売、日経、朝日、毎日、東京の順であり、政権に遠いほど政府批判は多くなり、東京がこの中では最も多い政府批判記事を掲載している。しかし、「虐殺を続けるイスラエルを支援する欧米」を報道しないのは、すべての新聞に共通している。
さらに、驚くべきことに、この報道スタンスは、日本共産党の赤旗でも見られる。日本共産党は、当然のようにイスラエルの蛮行を激しく非難するが、それを欧米と結びつけてアメリカの軍事支援を批判することは稀で、赤旗にもこの軍事支援そのものの記事掲載も極めて少ない。
なぜ、このようなことになるのかと言えば、恐らくは、日本はアメリカの同盟国である西側の一員であり、その共通理念としての、バイデンの言う「自由民主主義」対「権威主義」の闘いは、日本もその立場に立つべくだ、という暗黙の意識があるからだろう。しかし、この「自由民主主義」は、実際には西側の新自由主義的現行システムを賛美し、無批判に受け入れるべきだという「お説教」に過ぎない。そしてそれは、無意識に自分たちの都合のいいように事実を捻じ曲げても、それに気づくことはなく、世界をバイデン流「自由民主主義」のサングラスを通して見る、という暗黙のルールに従わせるものにほかならない。