テキスト主体

懐中電灯と双眼鏡と写真機を
テキスト主体で語ろうとする
(当然、その他についても、語ったりする)

続編 内輪バナシ-色の検査について

2013-08-02 22:22:55 | 脱線して底抜け
建築や官公庁向けの色指定には、マンセル値という、マンセル色空間のなかでの座標値が使われる事が多いのですが、マンセル値はおおざっぱな格子状の座標規格なので、色検査の現場で使われる事は少ないのです。

で、私が馴染んでいて、一般的にもよく使われる表色法に、CIE L*a*b*(シーラブ)と云われるLabダイヤグラムがあります。
Lは白さ黒さ、aは赤さ緑っぽさ、bは黄色さ青さを示す値で、ヒトの色覚が非線形に推移するのに合致するよう係数が定められており、工業用製品の測色計による色検査では、ほとんどの場合、製品と同等素材で着色された標準色見本を測色したL*a*b*座標値と、検査対象の座標値の色空間内での座標差異をΔL*Δa*Δb*で表し、座標間の隔たり(色の差)を
ΔE*(=)で表します。

ΔE*が1.0以上で、一般的に差異が判るとされ、高精度な色彩設計を要求する製品では、0,5以内の検査規格値が設定されることもあります。ぶっちゃけ、普段目にする工業用製品、マスプロダクツ製品は上記の0.5~1.0内で管理されている場合が多いようです。
現在の測色計は、非常に高精度でかつ安定性も高く、きちんとトレーサビリティのとられた(←間違った言い方ですが・・)機器では、その計測値によって色彩をフィードバックコントロールできるくらいの実績があります。CCM(コンピューターカラーマッチング)と云われる塗料、染料の自動色合わせ機構の根幹となっています。


物体の色はその表面にあたる光の反射によってヒトの目に届くので、光の質や表面の状態、角度等によってことなることもありますので、クルマのボディーカラーでソリッドカラー(メタリックやパールでない単色)の明るい色でも、同一のドアパネルのなかでも部位によって色差が異なる場合もあり、またメタリック、パール等の反射材の透過光が影響するカラーや、黒などの色そのものより表面の雑反射光に影響されやすい色では、測色計とヒトの視覚では無視できない差異が生じます。

実際にとある自動車メーカーに納入されているメタリックカラーの納入前色検査には、前回に紹介した数百万の測色計とは桁違いの評価検査システムが使われています。
実際の製造ラインのうち、塗装ラインを全く同一の機器と条件で、ラボ内に再現し、実際の製品(パーツ)を塗装して、専用の評価室(暗幕で覆われ、専用の検査光源が設置されている)内で、ヒトの目で5段階の目視評価をすると言うものです。
もちろん車種によって5段階評価の要求水準は違い、同じメタリックグレー系でも、高級車では4~5、大衆車、営業車では2~4などとなっているようです。

私が、この色検査の分野で、もっとも精確な検査機器はなにか、どの測色計が良いのかと意見を求められたとき、いつも答えは変わりません。
実際に千人、人員を用意して、目で比較して、検査することですよ、と。百人では実際の選任過程で偏りが生じる恐れがあり、不適格ですよ、と。
つまりは充分に訓練され経験を積んだ目視検査人員がもっとも有効であり、測色計はその補完に過ぎないということなのです。
もっとも高価な機器、設備を使って、最上級の品質を目指している色管理の場で、ヒトの目を主体にした管理が厳然と行われている事実は、上記の私の主張を補綴しているものだとも考えています。