まずは、記事タイトルと無関係っぽい写真より。携帯型の蚊取り器具です。
蚊に刺されやすく、腫れやすいほうなので、このような蚊対策はいろいろとやってまして、特に星空観望には必携の道具でもあります。日本では、マラリアや日本脳炎など、吸血昆虫による疫病被害はさほど深刻でもないので、主に私のように個々の不快感を低減するような器具や制度が蚊対策の主流かと思います。ただ、どこの家庭も、例えコンクリートジャングルと云われる都会でも、網戸の無いサッシは珍しく、夏は蚊の被害に備えています。
記事タイトルは、中公新書の書名で、伊藤嘉昭という日本における社会生物学の嚆矢の一人が、沖縄の久米島において、果樹に害を及ぼすウリミバエの根絶を企図しそれに成功した、不妊虫放飼法についてのオハナシです。
要は、殺虫剤や、生息環境の改変、天敵の強化などに頼るわけでなく、その生物そのものを不妊化したものを、大量に養殖、放飼して、自然環境に於いてペアリングさせ、次世代が産まれないように統計的に数の論理で圧倒していく方法です。単純化して説明すると、ある虫の一繁殖個体から、100頭の子が産まれるとしてその半数の50がオスであるとします。その50のオスの個体に対して、それに倍する100頭の不妊(生殖能力の欠損した)のオスを放すと、その環境で、残り50頭のメスがペアリングして繁殖するオスの内2/3は不妊虫であり、次世代は、1/3しか期待できないわけです。それを繰り返す事によって、最終的にはある世代でその系統を途絶えさせてしまうのが不妊虫放飼法という害虫駆除法です。
この方法には条件があって、
・不妊虫を大量に生産養殖でき、その不妊虫による一次、二次被害がないこと
・根絶の対象の生態系にあらたな同種個体が大量に移入してくる恐れが少ないこと
・放飼による増加、駆除後の減少が生態系に悪影響を及ぼさないこと
等が挙げられます。
ウリミバエの場合、メスによって産み付けられた卵から孵った幼虫が果実、野菜に被害を与えるので、人工孵化、養殖させた成虫からオスを選び(あるいはオスだけを生産し)、放射線を照射して、無精子オスを量産、放飼することで、成果を上げました。その後沖縄本島などにも拡大し、ウリミバエはほぼ根絶されたようです。もともと、日本にはいなかった外来昆虫ですから、生態系への影響も少なく、さらには、同じ久米島で、サツマイモなどに害を及ぼす、アリモドキゾウムシの不妊虫放飼法などによる根絶宣言が今年の4月に成されています。
最初にこの本を読んでから、もう30年以上が経ちますが、是非とも、日本列島という閉鎖環境で大規模に蚊の根絶を目指してもらいたい、と常々考えており、それまでは、上のような蚊対策グッズが手放せません。屋外で長時間定点観測をする時などは、ヤブ蚊よけスプレーを散布しておく場合もありますし、いま期待してるのは、この新しい蚊よけパッチです。
ただやはり、元から絶つのが最良でしょうから、いつまでも蚊対策グッズの会社に儲けさせてばかりでない、駆除根絶を目指して欲しいものです。